あらすじ_06_18


理沙の体がびくっと動くのを見て、主治医はしっかりとした手ごたえを得た。無菌状態、不括性溶液に全身を浸された状態で手術は進行する。
最初の手術開始から2ヶ月以上の時間がかかっていて、今回は5回目の手術だった。全身の骨格は強化生体プラスチックに置き換えられ、
脳と内臓は温存されたが、全身は伸縮性合成樹脂の筋肉で支えられ、伸縮性と自己治癒能力を備えた真皮で全身が覆われている。
理沙の意識はまだ深い眠りの状態にあるが、脳からの信号で人工筋肉が伸縮し小さく痙攣している。近いうちに目覚めるかもしれない。
しかし、その先の回復の保証はまだなかった。手術の事例はまだ少なく、しかも非公式に進められなくてはならないのがもどかしい。
4日後に6回目の手術が行われ、全身が表皮に覆われて見た目は事故前と変わらない姿になった。
液体の中から慎重に出されて植毛が行われると手術は完了した。あとは目覚めの時を待つだけだった。
集中治療室に移されて生命維持装置に囲まれる日々が続く、まぶたが微妙に動くのを見て主治医は気持ちが高ぶった。



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