あらすじ_10_06


政治家への道を歩み始めた「エンデヴァー」元船長。理沙は時々連絡はとり合っていたものの、直接会うのは3年ぶりだった。
企業の有力者と会い、自分の政策を訴えながら地道に基盤を固め、翌年の上院議員選挙に出馬しようと準備中だったが、
知名度はあっても、他の候補者と比べると政策アピールの点では劣っているように見られていた。30年先の繁栄のことを訴えても、
目の前の衣食住と、当面の雇用のことしか頭にない一般大衆の心には響かない。太陽系開発などどこの世界の話かと全くの他人事だった。
理沙は、元船長と一緒に食事をしながら、一般大衆の関心事と、遠からず確実にやってくるであろう成長の限界について意見を交わした。
自然エネルギーは耳に甘く優しく、聞こえのいいものではあったが、エネルギー密度が低くトータルコストで見れば非効率で、
半世紀前の自然エネルギー革命時には継続的な成長の源ともてはやされたが、今では莫大な廃棄物を抱えて完全なお荷物状態。
だから核融合エネルギーなのかと言われれば、決定的な理由とモチベーションにまだ欠けていて、2人の共通かつ最大の悩みとなっていた。



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