あらすじ_12_08


エネルギー省担当者への定例報告の場で、理沙はいつものようにプロジェクトの進捗を報告した後、最大の懸念事項について話を切り出した。
木星の資源開発計画はまもなく正念場を迎えるところで、今回は成功する見込みが高かった。問題はこの先の事で、
プロジェクトに参画した企業の投資に対して、どのような形でリターンを回収するかということだった。担当者からの問いかけに対して理沙は
エネルギー資源の消費という観点で、各企業が消費者から費用の形で回収して、国は介入しないというのがあるべき姿と答えた。
しかし、今回のプロジェクトに対して国から投入した費用は莫大なので、債権の大量発行では限界がある。
かつて理沙は、自分が上申したレポートの中で、木星の資源開発事業は、人類共通のプロジェクトとして扱うべきと書いたことがあった。
完遂が目前となった今、参画企業の間では次のチャンスを狙った利権争いが水面下で蠢いており、理沙のもとにもそれとなく触手は伸びていた。
生産された資源についても、参加各国に公平に分配されているとは言い難い。すべて計画通りにはいかないのだ。



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