あらすじ_12_10


作業プラットフォームAの指令室で、理沙はテスト開始を告げた。いつもと変わらない儀式のようなものだ。
しかし、前日に理沙は本部の長官と追加テストの件で口論していた。すでに予定通りのストレステストは完了し問題ないことは確認済みなのだが、
理沙は限界性能の確認のために、5割増しの過酷な状態でのストレステストの必要性を説いた。技術者から可能な事の裏は取れているが、
万が一失敗した時の世間からのバッシングを長官は懸念していた。しかし理沙は、失敗しても限界性能の確認において意義があると押し切った。
上層大気に突入するラムジェット機。炎の尾が長く伸びて流星のようにも見えるが、過酷な状況の中でも翼は持ちこたえていた。
強力なラムジェットの力で木星の巨大な重力にも捕らわれずに力強く進み、翼の前縁から取り込んだ大気を内部タンクに確実に捕獲していく。
機体は砕け散ることもなく、予定通りの収穫量を達成したあとは、生産プラントに向けて力強く上昇していった。
生産プラントCに到着したラムジェット機は、少々焦げているようにも見えたが内部に届く傷はない。頼もしい限りだった。



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