あらすじ_14_16


次は自分が犠牲になる番だろうか、と理沙は暗闇の中で再び目を凝らしたが、暗闇からはしばらくの間何の反応もない。
心の中に再び語り掛ける声がする。声の主は理沙に対して手を下すことについては躊躇しているようだった。今の理沙には不安はなかった。
救命ボートで高速艇を脱出したものの、救助船はいつになっても来ない。ボート内の空気が汚染されて理沙自身もこと切れそうになっている。
睡魔に襲われたような安らかな気分、残り時間は少なくなっており、このまま目をつぶれば二度と目が覚めないだろうと思っていた。
心の中に語り掛けてくる声の主は、恐れはないのかと理沙に言ってきたが、真実を知った今はもう思い残すことはないと返答した。
これからどれだけ経って救命ボートに乗った自分が発見されるのか。死んでこと切れた自分を発見した人々の表情を思い浮かべる。
声の主は理沙にそうなって欲しくないのか、この先自分たちと共に歩む選択肢について語り掛けてきたが、理沙にはその気はなかった。
突然に暗闇は終わった。周囲の風景が現実の世界に戻った。理沙の体は木星を周回する軌道上に浮かんでいた。



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