あらすじ_14_17


巨大な木星を右手の方向に見ながら、理沙は周回軌道上を漂っている。違和感があるのは窓から木星を見ているのではなく、
理沙の周囲全体が宇宙空間だという事。右手の方向と言いつつも、両手両足が見えるわけでもなかった。意識だけはあるのだが実体間がない。
もし体だけ宇宙空間に放り出されたら生存も不可能なはず。ということはわかっていても、周りの風景は単なる夢の中とも言い難かった。
視点を変えると、低軌道上を周回している生産プラントや原子力ラムジェット、高い軌道上の作業プラットフォームも見る事ができた。
体から離れて意識だけで生きているのか、理沙と呼ばれていた実体はすでに死んでいるのか、判断に苦しんだ。
ここは中枢システムが巧妙に作り上げた、意識世界の中だけの人口現実なのか。暗闇の中で語り掛けてくる実体は自分に何を望んでいるのか。
傍観して自分がこれから何をしようとしているのか試しているのか。そこで理沙は自分がやりたい事をやってみようと考えた。
自分の体が残されている救命ボートが見えた。自分の体を外から眺めるのは不思議な気持ちだった。元の世界に戻りたいと思い理沙は行動に出た。



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