あらすじ_16_04


次の出頭日までの間、理沙は弁護人とほぼ毎日のように会っていた。2人が考えた通りに原告は反論してくるので全ては想定の範囲内であるが、
あまりにも裁判に時間がかかっているように思えた。さっさと判決を出してもらいたいと投げやりな気持ちにもなるほどで、
理沙が今までの判例を調べてみた結果でも、争点の大きさに比べて裁判に時間がかかっていた。原告側には引き延ばしのためのストーリーがあって、
被告側が疲れ果てるのを狙っているのではないかと弁護士は疑った。そこで次の出頭の際には理沙の記憶データ分析を問題提起し、
原告の反応を様子見することにした。次の出頭日の連絡が来ると2人は提出するための資料をまとめ始めた。
裁判が再開し、通算で3回目の討論が始まった。弁護人はさっそく証拠として理沙の記憶データと原告が提出したデータとの照合を提案した。
人間の記憶と現実データとの照合はまだ技術的に確立されておらず、さっそく原告は信頼性に問題があると提案を拒否した。
しかし弁護人は技術的な裏付けを淡々と提出した。出頭日までの数日間、理沙が旧知のつながりでコンタクトした技術者からの情報が元になっていた。



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