あらすじ_16_17


証拠を提出したところで何になる、混乱を招くだけだとその存在は理沙に反論した。公のためと言いながらも実際の行動では私利私欲に傾き、
全体の利益になるような決定を下す事のできない支配者たち。対して自分たちは世界全体を見渡しつつ、極めてロジカルに結論を下すことができる。
もしここで自分の存在を否定するならば、世の中は大混乱に陥り、先史時代の未開の状態に逆戻りすることになるだろうと。
理沙はその通りであることを頭ではわかっていても、、あるべき姿を追求し、全体最適化を求めた究極の世の中が
人間にとっては最悪な世の中だということを自分自身の体験から学んでいた。理沙は欠陥を指摘したことで危うく殺されかけたところだった。
眼下の太陽系全体が、自分自身に一気に迫ってきた。木星に向かって理沙は降下を続けて再び高速艇が目の前に浮かんでいた。
もう一人の自分が、船長と会話をしていた。高速艇の船内では異常を告げるアラームが鳴っており、理沙は救命ボートに向かって動き始めた。
真実がまもなく示されようとしていた。その存在がまもなく事態に介入し、記録されている事実と別な並行世界が現れ、置き換わろうとしていた。



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