あらすじ_19_18


1年近い作業により、宇宙船の全設備が完成した。広々とした発着ポートは木星周回軌道上の宇宙港並みの運用能力があり、
水/食料生産プラント、閉鎖リサイクルシステムを備え宇宙船自身が独立した基地の機能を備えていた。しかし一番の見どころは居住区。
構造物むき出しの場所は、スペースコロニーにも劣らない居住空間に変わっていた。天井には木星標準時刻に合わせて空模様が変化する天井スクリーン、
閉塞感を全く感じない広々とした空間には、地球上の田園都市であれば普通に見られる住宅と緑あふれる光景。理沙と直子は開所式に向かう。
開所式はささやかなものだったが、行政区の管理職メンバー、作業員の代表は列になって居住区を歩き、公園でパーティーをした。
地球のスペースコロニー同様、まだ居住者は決まっていなかったが、現場作業者の一部が住む許可が下り、商店街にはテナントが入ることも決まった。
理沙と直子は食事をしながら夕刻になってきた空を眺めた。直子の方から昔2人で眺めた横浜の夕刻の風景の話が出たのが意外だったが、
理沙は全く別な事を考えていた。いずれ人が定住し、この場所を故郷にする人は果たしているのだろうか。



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