あらすじ_19_19


生産現場のスタッフが次々に地球へと帰還していった。もともと生産プラントは無人運用を前提として設計されており、運用に支障はなく、
空港等でのサービス要員も、アンドロイドに任せることができないわけでもない。事業団は単に人員削減のきっかけを探していただけだった。
船の居住区の開所式以前から、理沙は木星に定着する人を育てるためにはどんなきっかけが必要か考えていた。
生活環境を整備することについては様々なアイディアが出てくるのだが、自分の住んでいる場所を故郷と思うには、気持ちの改革が必要だと考えた。
ある程度の人数が集まると、自分が作り上げた土地を愛し、守ろうという気持ちが自然発生するものと思っていたが、単なる働きの場、
契約期間が終わればまた地球に帰れるという気持ちでは、いつになっても地球からの気持上の独り立ちは無理だと理沙は思った。
自分たちの土地のために時には命をかけ、既存の勢力と闘い、自分たちの生存権利を勝ち取る事。その時こそ真の意味での地球からの精神的独立。
船の居住区ではまだ少人数ではあるが作業員の入居が始まっていた。理沙と直子は公園で立ち止まり、ベンチに座ってからりと晴れた青空を眺める。



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