あらすじ_25_04

店のドアを開けると、店内は客が少なかった。無言のままカウンター席に座り、注文を聞きに来た店員にメニューに書かれた品を注文する。
理沙から店員のことを聞いていたがあえて事前の連絡は入れなかった。ふと見上げて店内を見渡し、店の隅に理沙の写真が置かれていることを
直子は見逃さなかった。理沙と直子が並んで自撮りしている写真もあった。注文の品を持ってきた店員に、2人並んだ写真のことを尋ね、
さらには自分が理沙の妹だという事を伝えると、店員はしばらく言葉が出なかった。直子の手を取り、嬉しいのか悲しいのか区別のつかない涙を流す。
店内の馴染みの客も、理沙の妹が店に現れたことで一斉に直子の周りに集まってきた。静かな店内が一気に騒々しくなった。
3年近く前に理沙が亡くなってからの話には触れる事はなかったが、地球との対立の渦中にいた直子に対しては温かいねぎらいの言葉が。
冷たく退屈な諮問会議の日々は辛く苦しかったが、やはり理沙の店に来て良かったと思った。ドアが開き一人の男性が店に入ってきた。
白髪が明らかに年齢を物語っているが、理沙から言われた通りだと直子はすぐにその男の事がわかった。恋叶わなかった人生の伴侶。



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