あらすじ_25_16

長い混沌とした時からようやく抜け出し、人類は回復への道を歩み始めていた。大統領は数年前まではがれきの山だった道路を眺め、
美しく蘇った市街地を示し、支持者たちの前で回復のスピードをさらに早めるよう鼓舞する演説をした。言ってしまったあとで時々記憶に蘇る、
木星での一触即発の事態を思い出した。その時自分が指揮官として先頭に立っていたことをどれほどの人々が意識しているのだろうか。
回復とは形ばかりで、根本的には何も解決していなかった。長い暗いトンネルを抜け出した先に、荒涼とした砂漠が広がっているようなものだ。
整理整頓された街並みは目につくところだけで、少し道を外れると、迷路のように入り組んでいるが異様に活気のある廃墟があった。
旅客機やヘビーリフターが毎日ひっきりなしに飛び交う宇宙港のそばの海は、腐敗臭がただよい廃棄物や廃船が山になっていた。
国際会議場で開催される会議に向かう途中、大統領は1年間の調査期間中の事を回想した。後ろ盾もできたので早速始める事に決めた。
各国の政府要人、太陽系居住地の行政官たちを前にして、大統領は用意したプレゼンテーションを始めた。立体ディスプレイに地球が投影される。



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