技術的課題

このブレーンが組織されて半年になりますが、その間にこのプロジェクト遂行のために解決しなくてはならない
数々の問題点が明らかになってきました。
プロジェクトの正式な開始までには、これらの解決のための具体的な方策をとらなくてはいけないと考えています。
なぜなら、開始されてから考えるようでは、それは大きなエネルギーの無駄でしかないからです。

私たちに十分な情報がない、というわけではありません。
4年間の木星、土星、小惑星の探査によって、十分なデータが集積され、数々の新しい技術開発も行われてきました。
まず、私たちの課題事項をここに列挙します。
現地までのアクセス手段 数億キロに及ぶ距離を結び、大量の物資を安定して輸送するための手段
プラットフォーム設置 現地の作業拠点となるプラットフォームの設置および建造方法
資源・資材の確保 建設に必要な資材調達、プラットフォーム維持のための資源調達
プラント設置方法 核融合燃料採取プラント設置方法、ケミカル一次製品採取プラントの設置方法
工程管理 数億キロ離れた本部と現場間での工程管理手法の開発
その他 現地スタッフの管理手法
これらのほとんどについて、私の乗り組んだエンデヴァーにおいて実験的に取り組みが行われました。
私はちなみに、惑星の組成分析を担当していました。
調査により、木星の大気組成については、それまでの40年近い調査をトータルした以上の情報を得ました。
現地での直接調査は、探査ロボットよりはるかに柔軟な調査を遂行することができ、
トラブルに対しての対処においては、自動システムはまだ人間の判断力よりはるかに劣っている部分がある事を実感しました。



そこで、これは先ほど述べたすべての課題事項にも当てはまりますが、
現地にスタッフを置き、現地主導で作業を進めるのが、私は最適であると考えます。
できるだけ危険を回避し、コストを軽減するために自動システムを極力導入するのもひとつの手段ではありますが、
現地に司令塔となるプラットフォームを設置して、そこを拠点として作業を進めることが、
結局のところ、プロジェクトの早期実現につながるのではないかと考えていますが、どうでしょうか。

私の非常に初歩的な見積もりでは、スタッフを数千人派遣するとして、プラットフォームの総重量は約10万トン。
その根拠は、1人あたりの生活空間と、必要なインフラ設備、そして食料や水などの必要量から試算しています。

プラットフォームの設置方法についてですが、
現地で建造するか、又は現地まで部品を輸送して組み立てだけ現地で行うか、方策はいろいろとありますが、
私としては、地球か月の周回軌道ですべて建造して、完成したところで現地へ輸送するのが最適と考えています。
作業をまとめて行うことができる上、すべて準備万端の状態で現地で作業にとりかかれるからです。



これが私が考える、今回のプロジェクトについての方法論です。

これから1年間、私たちは問題点に対しての具体的な方策をまとめるわけですが、
プロジェクトの正式な開始までに、政府や企業とスケジュール調整を行い、必要とされる技術スタッフをそろえ、
プロジェクト開始後は、プロジェクトの中心グループとなってゆくこと、
これが私たちの目標です。


それでは、今日の会合をはじめましょう。


                                                     − スタッフ会合2回目にて 大嶋理沙 (2048) −



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