閉鎖世界シミュレーション

< 実施計画内容 >

恒星間を航行できる性能をもった、実用的な宇宙船の建造。


< 宇宙船の基本仕様 >

400年間〜500年間の航海に対応できるものとする。
5000人を収容し、目的地到着後は、小さな閉鎖社会としての機能を果たすことができるものとする。
基本的には、自給自足体制が可能。



理沙は、自分がプロジェクトにかかわっていたころの資料を改めて開いた。
今や宇宙船のプロトタイプは完成し、木星へ向けてのテスト航海に出発しようとしているところだった。
32人のスタッフが、システムの性能確認を行う予定である。



< 制御システムは未完成なので、推進システムや環境管理などのハードウェアの動作確認が、今回のテスト項目である >


制御システムに関しては、タイタンの居住ステーションでまだ動作確認が行われているところだった。
本来であれば、今回の宇宙船の建造に間に合わせる予定であったが、想定外の問題発生により、
完全な安全性が確認されるまでは、システムの搭載は見送られることになった。
その問題により、理沙は責任を追求され、軍を辞めることになったわけだが・・・・・・・。



< 32人のスタッフが宇宙船のオペレーションを行い、そのスタッフが160人を指導し、宇宙船の正式スタッフへと育てるのである >


運用に必要なスタッフは、160人と見積もられていた。
2交代制でとりあえずは運用するので、80人の2グループ。しかしいずれは3グループ、240人体制にすることにしていた。
80人は、16のセクションに振り分けられ、各セクションは5人体制で運用を行う。



< しかし、スタッフの仕事は最終的には自動化システムに移行し、スタッフ達は自動化システムに対してその運用ノウハウを
  引継ぎする予定である >



それは、恒星間での長期航海を考えての事であった。
住民全員は、必要に応じて長期間人工冬眠するというオプションも検討されていた。
当然人間に頼ったシステム運用では問題があり、完全に人間と同じような判断のできる自動化システムは、不可欠だった。



< 木星到着後、生活環境の整備に約2年を費やす。コロニィの中のような快適な生活空間を構築し、居住者たちが実際に生活し、
  小さな社会環境を実現し、社会体系を確立することが、準備期間の最終目標である >



想定している準備期間は・・・・・・・約30年。
しかし、400年の耐用年数を想定している宇宙船にとっては、そんなことはたいしたことではない。
体系が出来上がってきたら、次の宇宙船を建造し、目標としては75隻の同様の宇宙船を作る予定だった。
とんでもない目標とはいえ、すでに小惑星には製造システムが出来上がっているので、あとは設計図に従って建造するだけである。
むしろ、この十分な時間のなかで問題点をすべて出して、改善をはかるのが重要と考えられていた。



小惑星(0032413)より、宇宙船が木星に向けて出発したとのメールを理沙は受け取った。
彼女も160人のスタッフたちと一緒に、木星に向かっているところだった。
到着は、両者ともに同時になる予定である。
そして、到着してまもなく、理沙は新型宇宙船を間近で見ることになり、32人のスタッフとも対面するのである。

とはいえ、今さら不思議に思うのだが、その32人について理沙は何も知らなかった。
その名前はもちろんの事、軍人か民間人かも知らないのである。

そして何よりも、「計画実施責任者」とだけ記されているメールの差出人には、早く会いたいと彼女はいつも思っていた。

                                                                  −管理職手記(2068)−



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