あらすじ_01_22


駅へ向かう途中に電話が鳴った。直子からの電話だった。1年ほどの協議のうえで両親の離婚が成立し、2人の姉妹関係もなくなったとのこと。
他に話すことはなく、直子からの電話を切った後、なんともいえない喪失感を感じた理沙は、歩く方向を変えて海の見える公園を目指した。
そして時間の経つのも忘れてしばらくぼんやりしていたが、ふと、海の見えるラウンジに人だかりがあるのに気づいた。
人々の見ている東京湾の中心のあたりを見ると、いつも見慣れた工事中の人工島が今日はひときわ輝いている。
と思ったところ、その光の中心からまばゆいばかりの光の筋が一本立ち上ってゆく。極超音速旅客機の最初のフライトである。
人だかりは深夜の時間帯にもかかわらずさらに増えて、皆から歓声があがった。
光の筋はやがて空の雲の中に隠れて見えなくなって、人だかりも徐々に散開していったが、理沙はしばらくの間空を眺めていた。
一歩足を踏み出して、希望と不安が混沌とした心境ではあるものの、とにかく前に進むしかないと理沙は割り切ることにした。



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