あらすじ_02_05


オーディションに向けての練習は、思ったようにうまくはいかず、メンバー各自の自由時間はなかなか合わず、
理沙も仕事が忙しくて練習スタジオに着いた時には疲れ果てていた。声も十分に通らない。
若社長に資金協力の件をいったん待ってもらった時の彼の表情が思い出される。あの表情は残念というよりも怒りに近いようにも見えた。
そんな気持ちを振り切るつもりで歌っていると、今度はただ単にがなり立てているだけのようになってしまって、
これでは単に焦っているだけとしか思えない。ギターリーダーもそんな理沙を見て演奏を中断してしまう程だった。
キャバクラ店で歌っていた時のあの調子が出ない。店のノルマもなく、自由な気持ちで歌えるはずなのに、今の方があの頃よりも下手になっている。
ギターリーダーと一緒に、東京湾を一望できるレストランで食事をしながら、理沙はうまく歌えない悩みを彼に話す。
遠くでは明るい噴射の炎を長く伸ばしたシャトルが着陸しようとしていた。定期運航を開始した極超音速旅客機である。



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