あらすじ_02_06


ついにオーディション当日。やるべきことはやったという気分で理沙は会場で自分たちの順番を待った。
正直なところ、夢を追いかけるつもりでキャバクラ店を辞めたものの、実際には歌唱力は実が伴っていない状態で、
なにか心の中に甘えがあることを理沙自身よくわかっていて、それが歌に心がこもっていない原因だということもわかっていた。
そのことをメンバー皆には言わなかった。今さらこんな事を言ってはバンド自体が空中分解してしまうだろう。
待合室で自分たちの順番を待つ間、理沙は目の前に座っている女性に目が留まった。彼女はバックバンドもなく一人だった。
見た目はロシア系であるが、日本語しか喋れない。服装も地味な普段着で、自作の曲だけを持って間に合わせで会場にやってきたという感じ。
しかし、理沙にはしっかりと自分を見つめる彼女の瞳に、深いところで輝くものがあるのを感じ取った。
理沙たちの順番がやってきた。ステージに向かうところで振り返ると、彼女はその輝く瞳で理沙の事をしっかりと見つめていた。



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