あらすじ_05_12
座席に座り、アナウンス後すぐにエンジン音は高まり、やがて機体は滑走路を飛び立ちさらに加速していった。
高度15000メートルまで一気に上昇し、そこでブースターに点火するとさらに加速が強くなり、数分後には宇宙空間に飛び出していた。
飛行機での無重力訓練とは異なり、座席にしっかりと座ったままで無重力を体験する。しかし無重力の持続時間は今回の方が長い。
機体は夜の暗闇の中に入り、瞬くことのない星々や遠くから昇る月を眺める。宇宙飛行士だけが見てきた光景をなにげなく体験する。
弾道飛行とはいえ衛星軌道速度に少し足りないくらいなので、徐々に高度が下がっても、グライダーのように上層大気を滑りながら再上昇する。
二度、三度と上層大気をスキップしたのち、大気圏に再突入する。あともう少し無重力を体験したかったがあっけない終わり方だった。
とはいえ、これは序の口のようなもので、これからまだまだ何度も同様の体験することになるのだ。
理沙は窓の外の炎のように燃える翼を見ながら思った。再突入が終わるとやがて出発地のテキサスの空港が見えてきた。