あらすじ_08_05
木星まであと数日の距離に迫っていた。「エンデヴァー」は180度方向転換して減速のための噴射を開始した。
すべて核融合推進システムの力に頼るのではなく、燃料の節約のために大気ブレーキも併用することになっている。ブレーキの展開が始まった。
木星到着後の作業リストの見直しが船長の指示の元で行われた。期間は2か月に短縮され、未消化分は次回の探査計画に回される事になった。
その間も理沙は、中国の調査船の情報を軍を経由して収集していた。軌道データについては本部から時々刻々と伝えられてきている。
中国の調査船出発後の世論の反応も早かった。平和裏に行われた火星探査と比較し、今回は敵対関係の2大国の争いとなっていたからだ。
このような時こそ、冷静に対応すべきというのが船長の考えだった。政治と軍事の狭間で振り回されるのはうんざりだと事あるごと不平を漏らす。
そして、理沙は船内では船長を除けば10対1の関係。船内では他の10人から明らかに浮いていた。
同じような経験は今までにも慣れている。ただし、狭い宇宙船の中では仕事に集中する以外、逃げ場がほとんどないので困っていた。