あらすじ_08_11
女性観測員が賛成にまわってからも、反対意見は根強かった。本部や軍の意見に振り回されることなく淡々と探査をすればよい。
その意見に対して女性観測員は、勝つ姿を見せることによってのみ夢を見せることができる。ここぞという時に負けてどうすると喧嘩腰になる。
いつのまにか船長も理沙も、女性観測員と着陸船パイロットとの口論を観察するだけの立場になってしまっていた。
全員の気持ちは女性観測員の側にしだいに傾いていった。次の決では賛成の挙手は10人に増えていた。
残りは着陸船パイロットだけだった。追い詰められている彼は、最後の抵抗のつもりかみんなは騙されているときつい口調で言った。
理沙は彼のその姿がなぜか可笑しく思えた。そうね騙されているわねと理沙は笑った。緊張している場に理沙の笑い声が異様に響く。
しょせんは皆社畜のようなもの。個人の想いなんてのは巨大な権力の前では何の意味もない。ならば割り切って最高の社畜になろうじゃないか。
女性観測員も笑った。船長も笑っている。理沙の笑いにつられて会議室の空気は一気に盛り上がった。