あらすじ_14_15


中枢システムには自我意識はないと理沙は思っていた。自分の意識に直接語り掛けてくるこの言葉も、大量のデータを分析した結果でしかなく、
全体最適化のための調整を機械的に行っているだけだった。メンタル女の命が危ないと思った理沙は再び彼女に注意を向ける。
タイタン基地のすべての住民の体に埋め込まれた、神経組織の中を走り回る意識信号を取り出すインターフェイスチップ。
普段は中枢システムへの情報伝達手段として機能し、思ったり行動したりするときの信号が中枢システムへと流れているのだが、
チップは中枢システムからの信号を送り込むための道具となることも可能だった。強烈なショック信号を送り込み、一瞬にして生命力を停止させる。
メンタル女はその可能性について知っていた。漠然とした不安と恐れの正体。手は下されメンタル女は全体最適化の犠牲となった。
表面的な傷跡を残さずに彼女はこと切れた。目は開いたまま、机に向かって突っ伏して、ちょうど最後の一文を書き終えたところで亡くなった。
ちょうど同じ時刻、メンタル女と同様に他の7名も同様に犠牲となった。基地の中に漂う漫然とした不穏な空気を感じ取った人々である。



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