あらすじ_19_02
当直非番の理沙と直子は、居住区の作業状況を見物することにした。船体の前部4分の1を占める居住区画は疑似重力を発生させるために
ゆるやかなカーブを描く直径300メートルの円筒状の構造物だった。まだ構造物むき出しの状態だったが作業ロボットが路面のパネルを次々にはめ込み
街並みらしいものが徐々に組みあがってゆくのを見る事ができた。最終的には5000人を収容可能な街になる予定である。
商店街になる予定の区画を2人は歩き、まだ決定していない2番艦以降の建造予定、さらにその先にある恒星間航海の計画について語り合った。
居住区をほぼ1周したところで立ち止まり、2人は道端に腰かけた。空の風景が映し出されていない天井を眺めながら理沙は話を切り出した。
最後に会った日から約40年間。再会はしたもののお互いが当時と同じ姿でいること、軍と事業団という対立した立場でいるのが信じられないこと。
直子は、これも誰かが仕組んだ宿命のようなものなのかもしれない、と反応したが、それだけでは済まされないものだということはお互いに認識していた。
会った最初の日、移動シャフトの中で直子が言った通り、お互いを語るにはかなりの時間がかかりそうだと理沙は思った。