あらすじ_19_03


大統領が交替してから1年と少々。前年の大統領選挙では交替した大統領がそのまま当選することになり、茶番という噂はあったが、
政策も閣僚もそのまま続投、目新しいものがない政権となった。さらに木星の現場にとって痛手となったのは前年から実施されている現場の人員削減。
設備の増強そのものの必要経費については技術革新により劇的に低下したものの、現場の要員については自動化の効果により人員不要論まで語られ、
大統領自身、前政権の政策に否定的であることにより、事業団、特に木星資源開発セクションには逆風が吹き荒れた。
理沙は週に一度、生産現場のリーダーの会議に出席し、現場の状況確認と課題共有をしているのだが、管理メンバーは理沙が事業団に在籍時と比べて
要員は完全に世代交代している割には、先行きへの希望感が全く見られなかった。かといって理沙の立場で管理職に激を飛ばすわけにもいかない。
明確な目的もなく建造されてしまった巨大宇宙船にも、不要論が語られるのではないかという懸念については、理沙は考えないことにした。
木星に到着して2か月。巨大宇宙船には前大統領の名前が命名されることが議会で決定した。大統領からの皮肉としか思えなかった。



あらすじ(19)表紙へ