あらすじ_19_04


指揮官3人集まっての初めての食事会。木星到着後すぐにと理沙は考えていたが、運用体制が落ち着くまでに少々時間がかかり実現しなかった。
船の管理職食堂は最近整備が完了したばかりで、豪華客船のレストランのような場所で3人はフルコースの料理を注文する。
現役、退役の差はあるものの、3人とも軍人なので任命された部署での苦労話から始まるのが普通だったが、直子の場合は経緯が特殊なので
大佐はあまり深くは掘り下げたくないようだった。しかし理沙はあえて自分が死にそうになった話から切り出した。シャトル事故で生死をさまよった時と、
タイタン基地からの帰途、木星を出発直後の高速艇の事故の事。軍法会議の件については士官の中では有名な出来事なので大佐は苦い表情になったが、
直子は、士官学校の卒業式での理沙の演説については、その場にいたかのように詳細まで知っていた。とはいえ軍の研究室で治療中の身だったが。
不慮の事故で30年以上培養液の中で保存されて、サイボーグとなって蘇った直子だが、長期間の暗闇の中での生活は想像を絶するものがあった。
しばしの間、理沙と直子の間には沈黙の時があったが、やがて2人は穏やかな表情で話を続けた。臨死体験を経験した者同士の気持ちの共有感からか。



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