あらすじ_19_08


理沙と行政官は作業プラットフォームEに向かった。組み立て中の木星大気探査船を視察するためだった。「エンデヴァー」の頃から木星本体については
降下探査機や気球での調査は進められていてデータの蓄積はあるのだが、木星へ降下し、再び軌道へ戻ることのできる交通手段はまだなかった。
木星大気中に、大気中の有機物から炭素化合物を精製するプラントを作ることが可能なのはわかっていたが、軌道上への輸送手段の確立が必要だった。
強力な核融合ラムジェットを搭載した探査船を見ながら、理沙は担当の技術者と語り合った。話せば話すほど現場の熱意が感じられる。
最初のテストは2か月後。パイロットは衛星軌道上からリモートで操作するが、機体にはパイロットの分身(アバター)が乗り込みリアルタイム操作を行う。
技術の流用元について技術者は言葉を濁したが、理沙はタイタン基地での事故の反省から作られた、生体/システム間インターフェイスではないかと察した。
自分で乗り込んでみたいと理沙は思ったが、行政官からは止められた。作業プラットフォームCへの帰り道、理沙と行政官の会話はさらに盛り上がる。
船に戻ると直子と大佐はシフト引継ぎの打ち合わせ中だった。楽しそうな理沙を2人は少々冷ややかな目で見つめる。



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