あらすじ_19_10
週に一回、非番の時間帯に理沙と直子は居住区を1周一緒に散歩するのがルーチーンになっていた。環境が徐々に整備されてゆくのを見るのが楽しみで、
その日も2人は中央通りを歩く。構造物むき出しの天井がまだ違和感があるが、翌月には天井スクリーンが取り付けられる予定だった。
理沙と直子は、2日前にシフト引継ぎの場で若干口論になっていた。政府の方針に対する理沙と行政官の対応について直子は指摘し、
立場を超えた理沙の行動については、処分ものだと言ったが、理沙は行政官のアドバイザーとして当然の事をしただけと話が全くかみ合わない。
非番の時間帯は、仕事の事は持ち出さないことを2人は暗黙のルールにしていたが、直子はなぜ現場にそれほどまでに肩入れするのか、
気持ちの底にあるものについて尋ねた。理沙はいやな顔をせずに現場が好きだからとただ一言。完全自動化された現場は好きではなくて、
システムは進化しても、中心には人間がコントロールできる余地が必要だというのが理沙の考えだった。
しかし直子は、システムと人間は互いに補う立場であるべきで、人間の判断はあやふやで信頼性を高めるための自動化は必要だと考えていた。