あらすじ_19_15
事業団本部からの現場に対しての方針は、可能な部分はすべて自動化して、人間の判断要素を極力除外することだった。
木星開発の初期段階で、理沙が事業団本部とはこの点で揉めた経緯があり、理沙は判断決定の中心には常に人間が存在すべきで
自動化の推進の行きつく先は、現場作業員の思考能力と技術力の低下を招き、望ましくないと考えていた。しかし本格運用が軌道に乗った今では
安定的な運用が第一とされるべき目標であり、ミスにつながる要素の極力排除が必要だった。現場の技術力の低下は別な方法で対処すればよい。
3か月間の予定で、定常運用にかかわる人員は半分に削減し、余剰人員はサービス/開発部門や、地球上の業務に転属することが求められた。
地球では木星の現場のような高給の保証された現場はなく、実質的にはコストカットとリストラのようなもの。行政官も技術開発部隊に転属となった。
新型宇宙船の運用部隊は対象から除外され、業務上の影響はなかったが、作業プラットフォームの人員削減は横目に見るに忍びなかった。
直子が先日言っていた言葉が、理沙には気にかかっていた。すべてが彼女の考えている方向に進んでいるように思えてならない。