あらすじ_20_07

大気探査船は作業プラットフォームEから切り離され、木星へ向けて降下を始めた。ちょうど当直が終わった理沙が船の会議室に行くと
大佐がスクリーンに映し出されるテストの状況を観察していた。原子力ラムジェットの飛行高度よりさらに低く、機体の限界に挑戦するフライトは
船内のあちこちに設置されているモニター画面でも表示され、皆が立ち止まって画面を眺めていた。やがて機体は上層大気に突入し炎に包まれた。
観測用のプローブからの映像も何度か見たことはあるが、ただ降下するだけのプローブに対して、今回は長時間飛行して風景を中継し、
雲と嵐の世界をくぐりぬけ、再び上昇して周回軌道まで戻る非常に見ごたえのあるフライトになるはずだった。
炎は徐々に薄れてきて、視界が開けてきた。核融合ラムジェットを作動させると雲が両側に崖のようになっている場所を気持ちよく飛行する。
赤道地帯の比較的気流がおだやかな所を飛んでいるのだが、風景は地球での積乱雲の上を飛んでいるようにも見えた。
しかし、雲の大きさは地球の積乱雲の10倍以上あり、雲の谷間は数十キロも深く地獄の底に続くように口を開いていた。



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