あらすじ_20_09
シートに横たわっているパイロットは、見た目には眠っているように見える。実際にはその分身が大気探査船に乗ってリアルタイムで操縦しているのだが、
飛行時間も50時間を超えて飛行距離は10万キロに達していた。操作の状況は極めて順調。止めなければどこまでも飛んでいけそうな感じだったが
体の状態を示すモニター表示には、疲労の兆候が現れ始めていた。隣の会議室で休憩していた実施主任がコントロール室に呼ばれた。
行政官のストレスだらけの仕事から解放されて2週間。実施主任は大気探査船とカリストの水精製プラントの仕事を兼務していたが
現場の仕事が楽しいと毎日を生き生きと過ごしていた。コーヒー片手に鼻歌を歌いながら部屋に入ってきたが、モニター表示を見ると表情は険しくなった。
神経の反応レベルは高いままだったが、脳波の状態に異常が見られる。眠っているのと変わりなく、反射反応のみで操作をしているような状態だった。
覚醒用の信号を送ったものの、反応がない。分身とコンタクトしてパイロットの体との同期モードを解除。リモート操作で帰還に向けた操作を始めた。
実施主任はパイロットの蘇生作業を指示、医師は駆けつけるとパイロットに呼びかける。心拍数が下がり強心剤が打ち込まれた。