あらすじ_20_11

「人類生き残りのために」とのタイトルの資料は、今まで幾度となく提唱された恒星間探査船の構想をもとに作成され、木星を恒星間世界への
進出基地にするというものだった。木星は既に核融合燃料供給基地として確立した存在であり、まずは無人探査船から始めて、
調査対象の10光年以内の恒星の候補が示されていた。探査船は推進方法としてレーザー光の光圧を利用して加速し、いわゆるレーザー帆船である。
候補の星に数多く飛ばして下調べを行い、次の段階では精密な探査を行うための核融合推進の無人探査船。そこで必要となるのが長距離通信システム。
レーザー帆船を加速するためのレーザー装置は長距離通信のためのツールとしても利用可能で、理沙のプランは木星の極軌道上に
大出力のレーザー装置を配置して、小型探査船の加速用、長距離通信用に使用するというものだった。動力は木星の磁気圏とプラズマのエネルギー。
会議室のメンバーからはしばらくの間意見が出なかった。リアクションがないことに理沙は拍子抜けした様子だったが、行政官が技術的可能性と
競合プランがないかどうかについて問いかけると、理沙は既に想定していたのか用意した資料の続きの説明を始めた。



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