あらすじ_23_13
ほんの一瞬の非現実の出来事を通して、理沙は自分と直子が特異な存在であることを実感した。同時に自分の特別な能力をいったいどうすべきか
行政官としての責任とは別に理沙個人の問題として考えさせられることになった。理沙と直子は、当面は直面している問題への対処に集中し
事が終わったらゆっくり話し合うことにした。有事に備えての準備が着々と進む中、再び自分たちの外堀を埋めるような知らせが届いた。
火星居住地の行政官が突然に解任され、国の直轄管理になったという知らせに対し、理沙は特に慌てることなく静かに注視しようと
管理職の集まった場で全員を落ち着かせるつもりで言ったが、じわじわと迫ってくる国家の圧力に、現場では不安の声があがり、
理沙のやり方に対しては強引で行き過ぎだという意見も、徐々に大きくなってきていた。賛否両論が大きな騒動に発展しようとしていた。
毎日の定時報告の会議が終わり、居住区中央通りで口論をしている作業員の集まりを横目に眺め、自分の部屋に戻ると、
理沙宛の直通メールが届いていた。合衆国大統領の署名付きの堂々としたもので理沙は身構えたが、さっそく開いてメッセージを読み始めた。