あらすじ_23_16

孫娘は久しぶりで理沙からのメールを受け取った。地球政府と木星の間の関係が険悪化してからは理沙からの便りはまったくなく、
わざわざ危険を冒してまで個人あてのメールを出すのは、よっぽどの事だろうと思った。メールの冒頭は身の回りの事と自分と家族に対する心配事で
半年前から入院している祖父の事に対しての心配の言葉もあった。景気は落ち込む一方で、世界的な感染症の問題も収束の気配すらなく
その世間の情勢を知りながらも自分の主張を押し通そうとする木星の人々の行動は、世間からの反発を呼び起こし、世論は異様に盛り上がっていた。
近所で理沙のことを昔から知っている人たちからは、不満の声も聞こえてきて、孫娘は肩身が狭い思いをすることも時々あった。
しかし、そんな孫娘の心境を理解しつつも、理沙はまわりに振り回されずに自分の信じるところを貫く意志を淡々と語り、
最悪の事態の覚悟についても述べた。公式な報道では知らされる事のない裏側の部分にまで触れ、理沙は自分に何を求めているのかと思ったが、
孫娘はメールを読み終えてしばらく考え、理沙の重責と孤独な立場について理解しようとした。そして最悪の事態にならないことを願い祈った。



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