原子力ラムジェット機の飛行プラン
原子力ラムジェット機は、「エンデヴァー」2度目の木星への航海で木星大気中でのテストが行われ、
木星上層大気中から大気のサンプルを採取することに成功しました。
その実績を踏まえ、木星上層大気中からヘリウム3を採取する具体的なプランが始動し、ヘリウム3採取用の試作機が作られ、
木星でのテストが行われました。
木星のヘリウム3は、月の表面に存在するヘリウム3と同様に、太陽からの高エネルギー粒子の働きにより生成され、
木星では上層大気中に存在すると考えられています。
月では、月の表面の土壌を熱処理して抽出するという方法が考えられていますが、木星の場合は文字通り雲を掴む話で、
巨大な大気取り入れ口を持った作業船で木星上層大気から抽出するなどという案もありますが、
私の案では、比較的小さな作業船で上層大気を採取して、精製プラントで分離/精製する案を考えてみました。
ひとつひとつの作業船が採取できるのは微々たる量でも、作業船を大量投入して数で勝負する事にします。
(物語の中では、2000機の原子力ラムジェット機を稼働させる事を想定しています)
ここでは、上層大気採取を行う原子力ラムジェット機の飛行プランについて書きます。
原子力ラムジェット機は、自律飛行により木星低軌道を周回する大気精製プラントと木星上層大気の間を飛行します。
飛行プランは以下の5つの段階を繰り返します。下記1〜4の期間で1週間ほどのスケジュールになります。
1.精製プラントから木星大気への降下
精製プラントを出発し、機体は木星上層大気へと降下する。
2.木星上層大気中での大気採取
上層大気へと突入すると、翼前縁部分のスリットから大気の採取を開始。
大気の圧力で機体は非常な高温と、高ストレス状態にさらされるが、そのような危険な状況で大気を採取し、
機体内部の圧力タンクに大気を蓄積する。
大気中の飛行コースを以下の図に示す。参考までにテスト用初期型、生産用の量産型の機体の飛行コースを比較し示す。
3.採取完了後の周回軌道への上昇
所定の距離の飛行を完了すると、翼前縁スリットを閉じて作業を完了し、精製プラントの軌道まで上昇を開始する。
4.精製プラントへの到着と次フライトへの準備
精製プラントへ到着すると、採取したヘリウム3/水素の混合気体を精製プラントへ渡し、
機体の点検/整備実施後、上昇時に使用する水素ガスを精製プラントから受け取り、次のフライトへと臨む。
5.定期点検
フライト10回〜20回の頻度で、精製プラント内の整備工場で機体の総点検を行う。
特に傷みの激しい翼部分は耐熱材をすべて交換し、原子力ラムジェットも50回程度のフライトで燃料交換を行う。