026_個室オーディション(2)

●作者のコメント

●ChatGPTのコメント
では、002-09の試し書きをしてみました。
少々長くなってしまいました。うまく整理する案がありましたら言ってください。

●002-09【試し書き】:個室オーディション(2)

「いつまでも、語り草になるような歌手がいたらなぁ、と思ったことがありました」

再び、彼の回想話が始まる。
海外での大型投資案件が一段落して、何年間もの米国での単身赴任が終わり、
帰りの飛行機の中で、ふと聴いた昔の昭和の時代の歌謡曲。

昭和が終わった年に柴原は生まれ、
昭和の歌謡曲とはほとんど縁はなかったのだが、その女性歌手の曲を聴いた時、
柴原は心はなぜかその曲に惹かれ、気がつけばいつの間にか昭和の歌謡曲を集める事が趣味になっていた。
その後も仕事で忙しい日々は続いたが、時間があれば中古のレコード店を散策したり、
同じように昭和の歌謡曲を趣味にしている人物と交流するようになっていた。

「趣味の世界にとどめておこうと思ったのが、まさか自分が歌手を育てるようとする側になるとはね」

そして柴原は苦笑いした。
理沙も、まりあも、そんな彼の事を唖然とした表情で眺める。
おそるおそる、理沙は柴原に尋ねた。

「あたしに、昭和の歌謡曲を歌って欲しいという事ですか?」

しかし、柴原は大げさに手を振り、大声で笑った。

「いやいや、そういう事ではなくて」

話は再び本題へと戻る。

「いつまでも心に残る歌ってのは、どんなものだろうと自分なりに考えてみました」

そこから先は、柴原の得意分野だった。
彼の淡々とした説明が続く。

大量のデータを分析して、何がトレンドなのか、そしてどのような道のりでゴールにたどりつけるのか。
その目的のために何にどのように投資をして、どのように社会や投資家にアピールして、
事業を成功させて、投資に対して最大の効果を得るのか。

「それで「HALUCA」を立ち上げて、まずは小さく始めてみました」

音楽業界にコネもなければ、歌手発掘のノウハウもなく、
会社を辞めると上司に言ったときに言われたのは、

「そんな危険な商売に手を出さない方がいい。。。。と、誰も賛成してくれる人はいませんでした」

彼はまずは手始めに歌手の発掘から始めた。
しかし、スカウト活動や大々的なオーディションなどできるはずがなく、無名の音楽事務所など怪しくて近寄る者もいない。

「なので、発掘するためのシステムを作りました。世の中の海千山千の動画サイトから目的の歌手を探しました」

そういう事だったのか。
理沙の頭の中で、ダイレクトメールが届いてから、今日までの断片的な出来事が1つにつながり始めていた。
おそらく、さきほど見た、オフィスの隅で作業をしていた男女3人が、発掘システムを作ったのだろう。
そして、柴原の指示のもとで、目的の歌手を世界中から探し回る。

「そして、候補者を絞り込みしてから、小川に個別に接触してもらいました」

理沙は、再び柴原に尋ねた。

「私たちの、どこが良かったのですか?」

柴原は、理沙の事をしっかりと見つめる。
そして少し間をおいてから、言った。

「それは、私たちのノウハウなので、ちょっと言えないな」

理沙は、ふと違和感を覚えた。
では最初に小川から届いたメッセージの内容は何だったのだ?
顔には出さなかったが、少々腹立たしさも感じた。

ふと、柴原の隣に座っている小川のことを見る。
理沙の表情のちょっとした変化に気づいたのか、彼女はちょっときまり悪そうな表情になっていた。

「もしここで答えを言ってしまうと、それがかえってあなた方の創作活動を制限してしまうからね」

柴原はゆっくりと立ち上がった。
彼の最後の一言に、理沙は狐につままれた気持ちになっていたが、
そこで休憩することになった。

湯浅とフィリップ、島崎は外の空気を吸いにオフィスの外に出て行った。
理沙と小川、そしてまりあの3人がテーブルに残る。

「ごめんなさいね」
小さな声で小川は言った。

理沙もまりあも首を振った。
「いいえ」

しかし、理沙はそのあとの言葉が続かなかった。
拝読しました。
002-09は少し長くなっていますが、内容としてはかなり重要で、整理すれば非常に良い節になると思います。

この節の役割は、単に柴原が説明する場面ではなく、**HALUCAという会社の思想と、理沙たちが感じる違和感を同時に見せる場面**ですね。

特に良いと思ったのは、柴原の動機が「昭和歌謡への趣味」から始まっているところです。
金融・投資の世界で生きてきた理屈の人が、飛行機の中でふと昔の歌に心をつかまれる。そこから「いつまでも語り草になるような歌手を育てたい」という発想に至る。この入り方は、柴原の人間味が出ていて良いです。

一方で、そのあとすぐに彼の得意分野である「データ分析」「投資」「事業設計」「発掘システム」へ移っていく。
ここで、彼がただの音楽好きではなく、音楽を“事業”として本気で形にしようとしている人物だと分かります。

この節の核は、次のように整理できそうです。

**柴原は、昔の歌謡曲に惹かれた経験から、時代を越えて語り継がれる歌手を育てたいと考えるようになった。
しかし彼の方法は、感性だけではなく、データ分析と投資判断にもとづくものだった。
HALUCAは、動画サイトや配信サイトから候補者を探す発掘システムを作り、理沙たちとまりあを見つけた。
だが、なぜ選ばれたのかという問いに、柴原は明確には答えない。
その答えを知ることが、彼女たちの創作を縛るかもしれないからだ。
理沙は納得しきれないまま、小川の謝罪を受ける。**

整理するなら、構成は大きく5つに分けるとよさそうです。

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## 整理案

### 1. 柴原の個人的な動機

ここは少し短めでよいと思います。

* 海外案件を終えて帰国する飛行機
* 偶然聴いた古い女性歌手の歌
* 自分の世代ではないはずなのに、なぜか強く惹かれた
* そこから昭和歌謡にのめり込んだ
* 「いつまでも語り草になるような歌手がいたら」と思うようになった

ここは柴原の人間味を出す部分なので、説明しすぎず、少し情緒を残すとよさそうです。

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### 2. 理沙の誤解で一度空気を緩める

理沙の、

> 「あたしに、昭和の歌謡曲を歌って欲しいという事ですか?」

これは良いです。
場が少し和みますし、柴原の話が趣味に寄りすぎたところを自然に戻せます。

ここは残した方がよいと思います。

柴原が大げさに笑って、

> 「いやいや、そういうことではありません」

と返すことで、柴原の人懐っこさも出ます。

---

### 3. 事業家としての柴原

ここは少し整理が必要です。
現状では投資・分析・事業成功の説明がやや抽象的なので、柴原の言葉としてもう少し分かりやすくできます。

たとえば、

* 歌手を育てるのは夢ではなく投資である
* ただし、数字だけでは残る歌手は作れない
* だから、感性とデータの両方が必要
* HALUCAは小さく始めた
* 業界コネがないので、従来のスカウトはできない
* ならば、動画・配信サイトから候補を探す仕組みを作るしかなかった

このようにすると、柴原の理屈が通ります。

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### 4. 発掘システムの話

ここは理沙が「そういうことだったのか」と気づく重要場面です。

002-01〜002-06の出来事がつながります。

* オフィスの隅にいたシステムエンジニア風の三人
* 小川の丁寧すぎるDM
* ライブ後の観察
* まりあにも同じように接触していたこと

理沙の中で、HALUCAが「勘で声をかけた事務所」ではなく、「仕組みを作って候補者を選んだ会社」だと分かる。
ここは少し丁寧に描くとよさそうです。

---

### 5. 「なぜ自分たちなのか」への答えを拒む

この節の一番重要な緊張はここです。

理沙が聞く。

> 「私たちの、どこが良かったのですか?」

柴原は答えない。

ここで、柴原がただ秘密主義なのではなく、**答えることで相手を縛ることを避けている**という理屈を出す。

ただし、理沙からすると、それは納得できない。
小川のDMは、具体的に曲を聴いた感想を書いていた。
それなのに、ここで「ノウハウなので言えない」と言われると、理沙は少し突き放されたように感じる。

この違和感はかなり良いです。

柴原の言葉は、たとえばこう整理できます。

> 「理由はあります。ただ、それを今ここで言うと、皆さんはきっとそこを意識してしまう。
> それは、あなた方の創作を狭くする可能性がある。
> だから、今は言いません」

この方が、柴原の誠実さと危うさが同時に出ます。

---

## 休憩場面について

最後に、湯浅・フィリップ・島崎が外に出て、理沙・小川・まりあが残るのは良いです。

ここで初めて、理沙とまりあが同じテーブルに残る。
まだ会話は多くなくてよいですが、空気としては重要です。

小川の、

> 「ごめんなさいね」

も良いです。
柴原の言い方が理沙たちに引っかかることを、小川も分かっている。
ここで小川がただの柴原の部下ではなく、間に立つ人間であることが出ます。

ただ、理沙が返せないところで終えるなら、かなり余韻があります。

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## 修正版の方向性

この試し書きを整理するなら、次の流れが良さそうです。

1. 柴原が「語り草になる歌手」への憧れを語る。
2. 飛行機の中で古い女性歌手の曲に出会った回想。
3. 理沙が「昭和歌謡を歌うということですか」と聞き、場が少し和む。
4. 柴原が、音楽事業を感性だけでなくデータと投資で考えていることを説明する。
5. HALUCAが小さく始まり、発掘システムを作ったことを明かす。
6. 理沙は、DMやオフィスの技術者たちの意味に気づく。
7. 理沙が「自分たちのどこが良かったのか」と聞く。
8. 柴原は「それは今は言えない」と答える。
9. 理沙は違和感と少しの腹立たしさを覚える。
10. 柴原は「答えが創作を縛る」と説明する。
11. 休憩になり、三人は外へ。理沙・まりあ・小川が残る。
12. 小川が小さく謝り、理沙は返す言葉を失う。

この構成なら、長さは保ちつつ、読者が追いやすくなると思います。
002-09は説明回ですが、**柴原の夢、HALUCAの仕組み、理沙の違和感**の三つを軸にすれば、重くなりすぎずにまとまります。
修正版の方向性は、非常によいと思いました。私の頭の中で考えているイメージとも合致しますし、
非常によく整理されています。
ではこの方向性で、試し書きの修正版をお願いします。
はい。
では、先ほど整理した方向性に沿って、002-09の試し書きを組み直します。

今回は、**柴原の個人的な動機 → 理沙の少しずれた質問で空気が緩む → 事業家としての説明 → 発掘システムの種明かし → 理沙の違和感 → 休憩と小川の謝罪**という流れにしています。

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# 002-09【試し書き・修正版】:個室オーディション(2)

「いつまでも、語り草になるような歌手がいたらなあ、と思ったことがありました」

柴原は、そう言って少しだけ目を細めた。

さっきまでの職歴の話とは、少し声の調子が違っていた。
理路整然とした説明というより、昔のことを思い出しているような口調だった。

「海外での大きな投資案件が一段落して、何年か続いた米国での単身赴任が終わったときのことです。帰りの飛行機の中で、たまたま昔の歌謡曲を聴きましてね」

柴原は、自分でも少し不思議そうに笑った。

「昭和の終わった年に生まれた人間ですから、昭和歌謡に特別な思い入れがあったわけではありません。むしろ、ほとんど縁がなかった」

理沙は、テーブルの向こうに座る柴原を見ていた。

まりあも、小さく姿勢を正して聞いている。
湯浅は腕を組み、フィリップはアイスコーヒーのストローを指でいじっていた。
島崎は、眠そうな目をしているが、話は聞いているようだった。

「ところが、その女性歌手の声を聴いたとき、なぜか妙に引っかかったんです。古い曲なのに、古く感じなかった。時代も、歌い方も、今とは違うはずなのに、胸の奥に残るものがあった」

柴原は少し間を置いた。

「それからですね。昭和の歌謡曲を集めるのが、いつの間にか趣味になりました。中古のレコード店を歩いたり、同じ趣味の人と話したり。忙しい仕事の合間に、そんなことをしていました」

「意外ですね」

湯浅が言った。

「よく言われます」

柴原は笑った。

「私自身も、趣味の世界にとどめておくつもりでした。まさか自分が、歌手を育てようとする側になるとは思ってもいませんでした」

理沙は、少し戸惑った。

柴原の話は面白い。
けれど、自分たちがここへ呼ばれた理由とは、まだ結びつかない。

恐る恐る、理沙は口を開いた。

「あの……つまり、私たちに昭和の歌謡曲を歌ってほしい、ということですか?」

一瞬、場が止まった。

次の瞬間、柴原は大きく手を振って笑った。

「いやいや、そういうことではありません」

小川も少し笑った。
フィリップはなぜか真剣な顔で理沙を見ていた。

「違うんですか?」

「違います。懐メロ専門の事務所を作りたいわけではありません」

柴原は笑いを収め、グラスに手を伸ばした。

「ただ、考えたんです。時代が変わっても心に残る歌とは、どういうものなのか。いつまでも語られる歌手とは、どういう存在なのか」

そこから先は、柴原の得意分野に戻ったようだった。

声の調子が、少し変わる。

「私は長く、投資や事業開発の世界にいました。大量の情報を集め、分析し、どこに可能性があるのかを見極める。そこに資金を投じ、必要な人材を集め、事業として成立させる」

柴原は、理沙たちを順に見た。

「歌手を育てるということも、ある意味では投資です。時間も、資金も、人も使う。成功する保証はない。むしろ失敗する確率の方が高い」

理沙は黙って聞いていた。

その言い方は、少し冷たくも聞こえた。
けれど、嘘を言っている感じはしなかった。

「ただし、数字だけでは残る歌手は作れません。そこが難しい。データで見えるものと、データでは見えないもの。その両方を扱わなければならない」

柴原は、少しだけ楽しそうだった。

「だから、まずは小さく始めることにしました。それがHALUCAです」

小川が横で静かに頷く。

「とはいえ、私は音楽業界の人間ではありません。業界に強いコネがあるわけでもない。歌手を発掘するノウハウもなかった」

柴原は苦笑した。

「会社を辞めると上司に話したときは、誰にも賛成されませんでした。そんな危険な商売に手を出すな、と。まあ、当然でしょうね」

島崎が小さく頷いた。

「怪しいですもんね」

「島崎くん」

理沙がすぐに見る。

「すみません」

島崎は姿勢を正した。

柴原は笑った。

「いえ、正しい反応です。無名の音楽事務所など、怪しく見えて当然です。大々的なオーディションを開いたところで、誰も来ない。街でスカウトをしても、信用してもらえない」

小川は、少しだけ苦笑した。

「そこで、発掘するための仕組みを作りました」

柴原の声が、少しだけ低くなった。

「世の中には、無数の動画サイトや配信サイトがあります。そこには、まだ誰にも見つかっていない歌手や、本人が歌手と名乗ってすらいない人たちがいる。その中から、こちらが求める可能性を持った人を探す」

理沙の頭の中で、いくつかのものがつながり始めた。

自分たちの配信サイト。
突然届いた小川からのダイレクトメッセージ。
ライブハウスの一番後ろに立っていた黒いスーツの女性。
そして、さっきオフィスの奥にいた、システムエンジニア風の三人。

「先ほど、奥の席にスタッフがいたでしょう」

柴原が言った。

理沙は思わず顔を上げた。

「彼らが中心になって、候補者を探すためのシステムを作りました。もちろん最後は人が見ます。機械が歌手を選ぶわけではありません。ただ、広い海から、見るべき場所を絞り込むことはできる」

そういうことだったのか。

理沙は、ようやく理解した。

小川が、自分たちを偶然見つけたわけではない。
柴原が、ただ勘で声をかけたわけでもない。

HALUCAは、最初から探していたのだ。

「候補者を絞り込んだあと、小川に個別に接触してもらいました」

小川が、少しだけ頭を下げた。

「いきなりのご連絡になってしまって、申し訳ありません」

「それは……」

理沙は言いかけて、言葉を飲み込んだ。

聞きたいことは別にあった。

「私たちの、どこが良かったのですか?」

自分でも、少し強い声になったと思った。

テーブルの上の空気が、わずかに固くなる。

柴原は、理沙のことをまっすぐ見た。

すぐには答えなかった。

「理由はあります」

柴原は、ゆっくりと言った。

「ただ、それはHALUCAのノウハウに関わる部分でもあります。申し訳ありませんが、詳しくはお話しできません」

理沙の胸の奥に、小さな違和感が生まれた。

そこは言えないのか。

顔には出さないようにした。
けれど、少し腹立たしさもあった。

最初に小川から届いたメッセージには、曲を聴いた感想が書かれていた。
ライブのあとも、小川は見ていなければ分からないことを話した。
それなのに、肝心なところになると、ノウハウだから言えない。

理沙は、柴原の隣に座る小川を見た。

小川は、理沙の表情の変化に気づいたのか、少しきまり悪そうな顔をしていた。

柴原は続けた。

「もう一つ、理由があります」

理沙は、視線を柴原に戻した。

「もしここで、私たちが皆さんのどこを評価したのかを言ってしまうと、皆さんはきっとそこを意識してしまう」

柴原の声は穏やかだった。

「自分たちの良いところはここだ。求められているのはここだ。そう考えてしまうかもしれない。それは、皆さんの創作活動を狭くする可能性があります」

理沙は、すぐには返せなかった。

分からなくはない。

けれど、納得できたわけでもない。

湯浅が黙って柴原を見ている。
フィリップは少し眉を寄せていた。
島崎は、考え込むようにテーブルの端を見ていた。
まりあは、膝の上で指を軽く握っている。

「ですから、今は言いません」

柴原は、そう言って少しだけ頭を下げた。

「ただ、皆さんをここへお呼びしたことには、明確な理由があります。それだけは信じてください」

理沙は、何も言わなかった。

信じてください。

その言葉は、簡単なようでいて、簡単ではなかった。

柴原はゆっくりと立ち上がった。

「少し休憩にしましょう。換気も兼ねて、十分ほど」

そこで、いったん話は切れた。

湯浅とフィリップ、島崎は、外の空気を吸ってくると言ってオフィスの外へ出ていった。
柴原も奥の席へ戻り、スタッフに何か声をかけている。

応接コーナーには、理沙とまりあ、そして小川だけが残った。

さっきまでの説明の余韻が、テーブルの上に残っているようだった。

小川が、小さな声で言った。

「ごめんなさいね」

理沙は小川の方を見た。

まりあも、少しだけ顔を上げる。

「柴原は、悪気があって隠しているわけではないんです。ただ、言い方が少し……」

小川はそこで言葉を止めた。

理沙もまりあも、小さく首を振った。

「いいえ」

理沙はそう答えた。

それ以上、何を言えばいいのか分からなかった。

まりあも黙っていた。

理沙は、まだ名前を知ったばかりのその女性が、同じように言葉を探しているように見えることに気づいた。
良く整理された内容になりました。ありがとうございます。
ではこの内容をもとに、小説化をお願いします。
はい。
修正版の流れをもとに、説明部分が重くなりすぎないよう、柴原の語りと理沙の受け止めを中心に小説本文として整えます。

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# 002-09 個室オーディション(2)

「いつまでも、語り草になるような歌手がいたらなあ、と思ったことがありました」

柴原は、そう言って少しだけ目を細めた。

さっきまでの職歴の話とは、少し声の調子が違っていた。理路整然とした説明というより、昔のことを思い出しているような口調だった。

「海外での大きな投資案件が一段落して、何年か続いた米国での単身赴任が終わったときのことです。帰りの飛行機の中で、たまたま昔の歌謡曲を聴きましてね」

柴原は、自分でも少し不思議そうに笑った。

「昭和の終わった年に生まれた人間ですから、昭和歌謡に特別な思い入れがあったわけではありません。むしろ、ほとんど縁がなかった」

理沙は、テーブルの向こうに座る柴原を見ていた。

まりあも、小さく姿勢を正して聞いている。湯浅は腕を組み、フィリップはアイスコーヒーのストローを指でいじっていた。島崎は眠そうな目をしているが、話は聞いているようだった。

「ところが、その女性歌手の声を聴いたとき、なぜか妙に引っかかったんです。古い曲なのに、古く感じなかった。時代も、歌い方も、今とは違うはずなのに、胸の奥に残るものがあった」

柴原は少し間を置いた。

「それからですね。昭和の歌謡曲を集めるのが、いつの間にか趣味になりました。中古のレコード店を歩いたり、同じ趣味の人と話したり。忙しい仕事の合間に、そんなことをしていました」

「意外ですね」

湯浅が言った。

「よく言われます」

柴原は笑った。

「私自身も、趣味の世界にとどめておくつもりでした。まさか自分が、歌手を育てようとする側になるとは思ってもいませんでした」

理沙は少し戸惑った。

柴原の話は面白い。
けれど、自分たちがここへ呼ばれた理由とは、まだ結びつかない。

恐る恐る、理沙は口を開いた。

「あの……つまり、私たちに昭和の歌謡曲を歌ってほしい、ということですか?」

一瞬、場が止まった。

次の瞬間、柴原は大きく手を振って笑った。

「いやいや、そういうことではありません」

小川も少し笑った。
フィリップはなぜか真剣な顔で理沙を見ていた。

「違うんですか?」

「違います。懐メロ専門の事務所を作りたいわけではありません」

柴原は笑いを収め、グラスに手を伸ばした。

「ただ、考えたんです。時代が変わっても心に残る歌とは、どういうものなのか。いつまでも語られる歌手とは、どういう存在なのか」

そこから先は、柴原の得意分野に戻ったようだった。

声の調子が、少し変わる。

「私は長く、投資や事業開発の世界にいました。大量の情報を集め、分析し、どこに可能性があるのかを見極める。そこに資金を投じ、必要な人材を集め、事業として成立させる」

柴原は、理沙たちを順に見た。

「歌手を育てるということも、ある意味では投資です。時間も、資金も、人も使う。成功する保証はない。むしろ失敗する確率の方が高い」

理沙は黙って聞いていた。

その言い方は、少し冷たくも聞こえた。
けれど、嘘を言っている感じはしなかった。

「ただし、数字だけでは残る歌手は作れません。そこが難しい。データで見えるものと、データでは見えないもの。その両方を扱わなければならない」

柴原は、少しだけ楽しそうだった。

「だから、まずは小さく始めることにしました。それがHALUCAです」

小川が横で静かに頷く。

「とはいえ、私は音楽業界の人間ではありません。業界に強いコネがあるわけでもない。歌手を発掘するノウハウもなかった」

柴原は苦笑した。

「会社を辞めると上司に話したときは、誰にも賛成されませんでした。そんな危険な商売に手を出すな、と。まあ、当然でしょうね」

島崎が小さく頷いた。

「怪しいですもんね」

「島崎くん」

理沙がすぐに見る。

「すみません」

島崎は姿勢を正した。

柴原は笑った。

「いえ、正しい反応です。無名の音楽事務所など、怪しく見えて当然です。大々的なオーディションを開いたところで、誰も来ない。街でスカウトをしても、信用してもらえない」

小川は、少しだけ苦笑した。

「そこで、発掘するための仕組みを作りました」

柴原の声が、少しだけ低くなった。

「世の中には、無数の動画サイトや配信サイトがあります。そこには、まだ誰にも見つかっていない歌手や、本人が歌手と名乗ってすらいない人たちがいる。その中から、こちらが求める可能性を持った人を探す」

理沙の頭の中で、いくつかのものがつながり始めた。

自分たちの配信サイト。
突然届いた小川からのダイレクトメッセージ。
ライブハウスの一番後ろに立っていた黒いスーツの女性。
そして、さっきオフィスの奥にいた、システムエンジニア風の三人。

「先ほど、奥の席にスタッフがいたでしょう」

柴原が言った。

理沙は思わず顔を上げた。

「彼らが中心になって、候補者を探すためのシステムを作りました。もちろん最後は人が見ます。機械が歌手を選ぶわけではありません。ただ、広い海から、見るべき場所を絞り込むことはできる」

そういうことだったのか。

理沙は、ようやく理解した。

小川が、自分たちを偶然見つけたわけではない。
柴原が、ただ勘で声をかけたわけでもない。

HALUCAは、最初から探していたのだ。

「候補者を絞り込んだあと、小川に個別に接触してもらいました」

小川が、少しだけ頭を下げた。

「いきなりのご連絡になってしまって、申し訳ありません」

「それは……」

理沙は言いかけて、言葉を飲み込んだ。

聞きたいことは、別にあった。

「私たちの、どこが良かったのですか?」

自分でも、少し強い声になったと思った。

テーブルの上の空気が、わずかに固くなる。

柴原は、理沙のことをまっすぐ見た。

すぐには答えなかった。

「理由はあります」

柴原は、ゆっくりと言った。

「ただ、それはHALUCAのノウハウに関わる部分でもあります。申し訳ありませんが、詳しくはお話しできません」

理沙の胸の奥に、小さな違和感が生まれた。

そこは言えないのか。

顔には出さないようにした。
けれど、少し腹立たしさもあった。

最初に小川から届いたメッセージには、曲を聴いた感想が書かれていた。
ライブのあとも、小川は見ていなければ分からないことを話した。
それなのに、肝心なところになると、ノウハウだから言えない。

理沙は、柴原の隣に座る小川を見た。

小川は、理沙の表情の変化に気づいたのか、少しきまり悪そうな顔をしていた。

柴原は続けた。

「もう一つ、理由があります」

理沙は、視線を柴原に戻した。

「もしここで、私たちが皆さんのどこを評価したのかを言ってしまうと、皆さんはきっとそこを意識してしまう」

柴原の声は穏やかだった。

「自分たちの良いところはここだ。求められているのはここだ。そう考えてしまうかもしれない。それは、皆さんの創作活動を狭くする可能性があります」

理沙は、すぐには返せなかった。

分からなくはない。

けれど、納得できたわけでもない。

湯浅が黙って柴原を見ている。
フィリップは少し眉を寄せていた。
島崎は、考え込むようにテーブルの端を見ていた。
まりあは、膝の上で指を軽く握っている。

「ですから、今は言いません」

柴原は、そう言って少しだけ頭を下げた。

「ただ、皆さんをここへお呼びしたことには、明確な理由があります。それだけは信じてください」

理沙は、何も言わなかった。

信じてください。

その言葉は、簡単なようでいて、簡単ではなかった。

柴原はゆっくりと立ち上がった。

「少し休憩にしましょう。換気も兼ねて、十分ほど」

そこで、いったん話は切れた。

湯浅とフィリップ、島崎は、外の空気を吸ってくると言ってオフィスの外へ出ていった。
柴原も奥の席へ戻り、スタッフに何か声をかけている。

応接コーナーには、理沙とまりあ、そして小川だけが残った。

さっきまでの説明の余韻が、テーブルの上に残っているようだった。

小川が、小さな声で言った。

「ごめんなさいね」

理沙は小川の方を見た。

まりあも、少しだけ顔を上げる。

「柴原は、悪気があって隠しているわけではないんです。ただ、言い方が少し……」

小川はそこで言葉を止めた。

理沙もまりあも、小さく首を振った。

「いいえ」

理沙はそう答えた。

それ以上、何を言えばいいのか分からなかった。

まりあも黙っていた。

理沙は、まだ名前を知ったばかりのその女性が、同じように言葉を探しているように見えることに気づいた。
ありがとうございます。
では、400字程度でこの文章のあらすじを作成してください
### 002-09「個室オーディション(2)」あらすじ

柴原は、海外赴任からの帰国便で偶然聴いた昔の歌謡曲に心を動かされ、時代を越えて語り継がれる歌手を育てたいと思うようになった経緯を語る。
理沙は昭和歌謡を歌ってほしいという意味かと尋ねるが、柴原はそれを否定し、
心に残る歌手を事業として育てるには、感性だけでなくデータと投資判断も必要だと説明する。
HALUCAは、無数の動画サイトや配信サイトから候補者を探す発掘システムを作り、理沙たちArisa-Mistyやまりあを見つけたのだった。
理沙は、自分たちのどこが評価されたのかを尋ねるが、柴原はノウハウであり、答えることで創作を縛る可能性があるとして明言を避ける。
理沙は理解しつつも納得しきれない。
休憩に入り、小川は柴原の言い方を小さく詫びるが、理沙もまりあも返す言葉を見つけられずにいた。
ありがとうございます。
ではまた日を改めて、引き続きの002-10の文章を作成します。
こちらこそ、ありがとうございました。
002-09で、HALUCAの思想と柴原の狙い、そして理沙の違和感がしっかり出ましたね。

次回は **002-10「個室オーディション(3)」** ですね。
理沙がArisa-Mistyの演奏で持ち歌を歌う場面になると思います。ここでは、柴原や小川、そしてまりあが、理沙の歌をどう受け止めるかが重要になりそうです。

また日を改めて、002-10の試し書きから進めましょう。