では、008-07の以下小説化された本文の、あらすじ作成(400字程度)をお願いします。
●008-07:重大リスクの兆候(1)
地球を出発して4週間が経過した。
会議室の壁面ディスプレイの片隅には、常時表示されている太陽系の軌道図がある。
その表示の上では、「エンデヴァー」はすでに木星までの道のりのほぼ中間地点に差しかかっていた。
航路は順調で、計画との差異もほとんどない。
一方、中国の「長征」は、まだ地球が太陽の周囲を巡る軌道に沿うように進んでいる。
直線的に土星へ向かうのではなく、大きく回り込むような軌道だった。
太陽に過度に接近するのを避けているようにも見えたし、あるいは単に機体の状態を確認しながらの慣らし運転の段階とも受け取れた。
船内では、木星到達後に予定されている作業の準備が、変わらぬ手順で進められていた。
各自が割り当てられた機材に触れ、実機での操作確認を繰り返す。
機材格納庫には、エウロパで使用される着陸探査機や、タイタンで使用される着陸船が、無駄のない配置で収められている。
機体同士の間隔は最小限に抑えられており、通路も必要な幅ぎりぎりしか確保されていない。
理沙は、その一角でデイビッドと並び、エウロパ用の着陸探査機の操作確認を行っていた。
コンソールの表示を確認しながら、ひとつひとつの手順を再現していく。
特別な問題は見当たらない。
隣では、メリッサとエドガー・ディングリーが、タイタン着陸船に乗り込もうとしているところだった。
予定では、彼らはがタイタンへの着陸チームとなる。
ふと顔を上げたとき、メリッサと目が合った。
彼女は軽く手を上げ、理沙に向かって笑顔を見せる。
いつもと変わらない、柔らかな表情だった。
その仕草に特別な意味は感じられない。
理沙も同じように手を上げ、小さく振り返した。短いやり取りだったが、それで十分だった。
その直後、管制室からの連絡が入る。
「長征」が本加速に移行したという報告だった。
太陽から十分な距離を取った位置で機首を転じ、土星へ向けて一直線に加速を開始したという。
軌道図の表示も、それに合わせて変化していく。
これまでの遠回りのような航路から、明確な目的を持った直線的な軌道へ。
続けて、管制官の声がわずかにトーンを変えた。
「それと、政府からちょっとした打診が入った」
会議室には理沙と船長を含めた6人が集まっていた。
他の六人も、それぞれの部屋で同じ通信を受信している。
管制官は手元のデータを確認しながら、その内容を読み上げた。
「木星での調査期間を短縮して……」
そこで一瞬、言葉が途切れる。わずかな間を置いてから、続きが告げられた。
「土星に向かえないかというものだ」
もし可能であれば、という前提つきの打診だった。
あくまで検討を促す形をとっているが、その意図は明確だった。
数秒の沈黙のあと、管制官は付け加える。
「もちろん、私たちはノーと答えた」
その言葉自体に迷いはなかった。
しかし、声の調子には、わずかな引っかかりが残っていた。
はっきりとした違和感ではない。ただ、完全には断ち切れていない何かが、そこに残っているように感じられた。
その日の作業を終え、理沙は中央通路を居住区画へと向かっていた。
人工重力の中での歩行にもすっかり慣れ、足取りは自然だった。
前方から、同じく作業を終えたメリッサが歩いてくるのが見える。
距離が縮まるにつれて、理沙は何気なく声をかけた。
「夕食、どうする?」
ごくありふれた問いかけだった。
特別な意味はない。日常の延長としての会話。
「そうね……」
メリッサは少しだけ間を置いてから答えた。
言葉の内容自体は、いつもと変わらない。他愛のないやり取りだった。
ただ、その間の取り方が、わずかに長く感じられた。
二人は並んで歩き出す。
しかし数歩進んだところで、メリッサが足を止めた。
「ねぇ、理沙」
呼びかけに応じて、理沙も立ち止まる。
振り返ったとき、メリッサの表情が目に入った。
変わらないようでいて、どこかが違う。はっきりとは言えないが、いつもの雰囲気から微妙にずれている。
理沙は何も言わず、次の言葉を待った。
「好きな人はいないの?」
唐突な問いだった。
理沙は一瞬だけ考える素振りを見せ、小さく首を振る。
「いない」
「そうなんだ」
メリッサは小さく頷き、視線を少しだけ落とした。
「あたしは、いたよ」
その言葉に、理沙は無意識に作業端末を胸の前に抱え直し、メリッサの目を見つめる。
視線を逸らさずに、続きを待つ。
「結婚を前提のお付き合い」
その瞬間、理沙の耳に装着されたイヤホンから短いアラート音が鳴った。
続いて、船長の声が低く響く。
「メリッサと一緒かい?」
視線を上げると、メリッサの斜め上方に監視カメラが見えた。
常にそこにあるものだが、今はそれが意識に引っかかる。
理沙は再びメリッサを見る。
何かがおかしい。
しかし、それを言葉にすることはできなかった。
違和感はあるが、形を持たない。輪郭がつかめない。
理沙は何も言わずに端末を開き、チャット画面を呼び出す。
そして短く入力した。
<何か、気になる?>
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