では、008-15の以下小説化された本文の、あらすじ作成(400字程度)をお願いします。
●008-15:「私たちは駒にすぎない」(1)
船長は、すぐには話し始めなかった。
会議室には、わずかな機械音だけが残り、誰もが次の言葉を待っている。
沈黙は長くはなかったが、十分に重かった。やがて、誰かが口を開きかけたその瞬間、船長は静かに言った。
「みんなの意見は、それぞれ理にかなっていると思います」
その言葉には、場を収めようとする意図も、結論を急ぐ気配もなかった。
船長は一人ひとりの顔を見ながら、それぞれの発言に対して丁寧にコメントを返していく。
アンジェラの強硬な意見に対しても、イライザのどこか諦めを含んだ消極的な意見に対しても、否定はしない。
ただ、その背景にある考えや感情を受け止めるように言葉を選び、静かに整理していく。
その口調は終始落ち着いていて、誰かの肩を持つような偏りもなかった。
全員分の意見にコメントし終えたあと、船長はわずかに間を置いた。
視線を一度落とし、再び上げる。
「そのうえで、私が述べたい要点は二つあります」
そう前置きしてから、続ける。
「まず一つ目は、ミッションの目的を忘れてはいけないということです」
その言葉の直後、理沙は自分に向けられた視線の強さを感じた。
ほんの一瞬だったが、はっきりと分かる視線だった。
理沙は表情を変えず、そのまま受け止める。
船長は少しだけ間を置き、次の言葉を選ぶ。
「そしてもう一つ。私たちは命令に従うべき立場にあり、どんな状況でもベストを尽くすべきだということです」
言葉は簡潔だったが、その二つの要点の間には、簡単には埋まらない距離があるように感じられた。
船長自身もそれを理解しているのか、ほんのわずかに言葉を選ぶ間があった。
そのあと、船長は話題を変えるようにして、「長征」の乗組員のことに触れた。
「おそらく、彼らも私たちと同じような心境なのだと思います」
会議室の空気がわずかに揺れる。
「『楊貴妃』計画の失敗のリベンジとして『長征』は作られ、万全の準備のもとで木星へ向かうはずだった。それが、突然の土星行きの命令――」
船長はそこで一度言葉を切り、肩をすくめるようにして付け加える。
「まぁ、私の推測でしかないが」
その一言に、デイビッドが小さく苦笑する。
声には出さないが、場の緊張をほんのわずかに和らげるような反応だった。
船長は続けて、ブレントの作成した土星への航海プランに話を移した。
「やってみる価値はあると思います」
その言葉は、短く、しかし明確だった。船長はブレントの方に視線を向ける。
「丁寧に作られているし、この船の能力を最大限に引き出している」
ブレントは特に表情を変えなかったが、そのまま静かにうなずく。
「そもそもこの船も、『ディスカバリー』計画の失敗のリベンジのために作られたものです」
船長の声は淡々としていたが、その言葉にはわずかな重みがあった。
「木星行きのプランを途中で変更して、土星行きを成功させることができれば、この船がミッション変更に柔軟に対応できる、仕様通りの高性能な船であることの証明にもなる」
理沙は、その言葉を聞きながら、ふとアンジェラの方に目を向けた。
先ほどまで強い拒否感を滲ませていた彼女の表情から、少しずつ力が抜けていくのが分かる。
完全に納得したわけではない。それでも、姿勢を正し、考えを整理しようとしている様子が見て取れた。
船長の話はそこで終わった。
短い沈黙。
「船長。ありがとうございます」
レイラが静かに言う。
形式的な言葉に聞こえるが、その声音には場を次へ進める意志が含まれていた。
彼女はそのまま無言で一人ひとりの表情を確認していく。
既に気持ちを切り替えて前を向いている者もいれば、まだどこか納得しきれていない表情を残している者もいる。
その差ははっきりしていたが、誰もそれを口にはしない。
理沙はレイラの動きを見ながら、次に何が来るのかを待つ。
やがてレイラは、船長に視線を戻し、確認するように言った。
「長官の命令を受け入れるということですね?」
その問いに、船長は余計な言葉を添えず、静かにうなずいた。
それだけで、方向は決まった。
しかしレイラはそこで終わらなかった。わずかに間を置いてから、全員を見渡す。
「ただ一つ、問題点があります」
誰もがその先を予想している。レイラはあえてそれを言葉にする。
「ブレントのプランによれば、土星への出発予定日を既に2日も過ぎています」
その事実は、誰もが分かっていた。
それでも、こうして改めて突きつけられると、会議室の空気がわずかに重くなる。
誰も、すぐには言葉を発しなかった。
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