では、008-20の以下小説化された本文の、あらすじ作成(400字程度)をお願いします。
●008-20:土星の環と「Next Frontier」(2)
土星大気ブレーキは、特に大きな問題もなく終了した。
木星での大気ブレーキほどの猛烈な負荷ではなかったものの、「エンデヴァー」の船体は再び炎に包まれ、
後部の巨大なブレーキシールドは土星上層大気との摩擦に耐え続けた。
船体構造のきしむ音も、木星の時と比べれば穏やかで、減速Gも比較的ゆるやかだった。
「すべて異常なし」
わずかな間をおいて、メリッサがそう宣言する。
続いて、非常警戒モード解除のアナウンス。
赤く染まっていた船内照明がゆっくりと通常モードへ戻り、張り詰めていた空気が、少しずつほどけていく。
つい先ほどまで船全体を包んでいた緊張が、静かに遠ざかっていくのがわかった。
理沙はシートベルトを外し、軽く肩を回す。
「これから制御室に行ってきます」
振り返りながらそう言うと、船長が短く頷いた。メリッサもまた、小さく笑みを返す。
コクピットを出る直前、理沙はもう一度だけ2人の方を見た。
船長とメリッサは、ようやくひと仕事終えたという表情をしていた。
少なくとも、理沙にはそう見えた。
コクピットを出ると、中央通路は静かだった。
減速中に響いていた機械音もすでに収まり、聞こえるのは環境制御システムの低い駆動音だけである。
理沙はゆっくりと居住区画の方へ歩き始めた。
通路の途中にある展望窓の前で足を止める。
放射線と高熱対策のため保護シールドが閉じられているが、今はすでに大気ブレーキも終わっている。
壁際のスイッチに手を触れながら、理沙は通信を入れた。
「保護シールドを開けます」
数秒後、耳の中のイヤホンから船長の声が返ってくる。
「OK、開けてくれ」
ロック解除音。
続いて、重い機械音を立てながらシールドがゆっくりと左右へ開き始める。
わずかに開いた隙間から、外の光が差し込む。
さらに開く。
徐々に、窓の外の光景が姿を現していく。
その瞬間、理沙は思わず息をのんだ。
長い光の帯。
いや、帯というより、巨大な光のアーチだった。
それが窓の外いっぱいに広がっている。
「エンデヴァー」は、土星の赤道上空、雲海のさらに上を飛行している。その遥か上空を、土星の環が圧倒的な存在感で横切っていた。
差し渡し数十万キロメートル。
頭では理解している数字のはずなのに、実際に目の前へ現れると、感覚が追いつかない。
巨大すぎる。
遠近感が狂う。
空に浮かぶ自然物というより、何か人工的な超巨大構造物を見上げているようだった。
視界いっぱいに広がるその光景を、理沙は理解ではなく感覚だけで受け止めていた。
そして、自然と、あの曲のフレーズが脳裏によみがえる。
<羽ばたいて 高く高く>
<心の果てを越えてゆけるよ>
<あふれる願いが 空を染める>
<もう止まらない この鼓動は>
<世界を抱きしめるために生まれた>
<光になれ 今ここから>
マリア・エレーナは、この光景をイメージしてあの曲を書いたのだろうか。
そんな事を、ふと思う。
『Next Frontier』は時々船内でも流れていた。しかし、今この瞬間に改めて聴きたくなった。
理沙はイヤホンを操作し、曲を再生する。
静かなイントロ。
歌声。
そのまま窓の外を見つめながら、理沙は想像した。
もし今、自分が真空中へ放り出されたなら。
身体は宇宙空間に静かに漂い、眼下には土星の雲海。頭上には、視界を埋め尽くす巨大な環。
音はない。
温度もない。
重力感覚もない。
ただ、無限に近い静寂だけが広がっている。
理沙は、無意識に環の方へ手を伸ばしたくなった。
もちろん、届くはずもない。
それでも、触れてみたくなる。
「理沙」
突然、イヤホンから控えめな声が聞こえた。
メリッサだった。
「ご鑑賞中に、すまないわね」
理沙は小さく息を吐き、音楽を止める。
そして、展望窓の横に設置された壁面カメラへ視線を向け、軽く姿勢を正した。
「そろそろ仕事に戻ってください」
その口調はいつものように穏やかだった。
理沙は小さく笑う。
「了解」
そしてカメラに向かって軽く敬礼すると、再び中央通路を歩き始めた。
静かな余韻を胸の奥へ残したまま、制御室へと向かう。
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