あらすじ_01_06


店での売上順位は、2位まで昇りつめたものの、その後は3位から5位の間をうろうろしながら伸び悩んでいた。
キャストそれぞれのノウハウと駆け引きの世界なので、表情はみな楽しく笑っていても、腹の底ではいったい何を考えているんだか。
その日はテンションの高い若社長とその取り巻きのお相手をしていたが、皆酔いが回っていて相手するのも至難の技。
しかも、誰かに無理やり歌わせようと若社長は曲を入れ、理沙が指名されてしまった。
偶然なのか、彼が意図してなのか、歌わされたのは「Vanishing(*1)」。大好きな曲の一つではあるのだが、まさかこんなところで歌うことになるとは。
ライバルの同僚たちの冷ややかな視線も感じながらも、若社長をしっかりと見つめながら歌う。そして理沙は歌い切った。
一瞬しんと静まり返った店の中。そして若社長の拍手に皆は拍手喝采。彼の目にはうっすらと涙が。
理沙の気持ちの中で何かがふっと切れた。彼女自身も今まで気がつかなかった新たなキャラクターが出来上がった瞬間だった。

*1 「Vanishing」作詞:Carey Mariah / 作曲:Carey Mariah、Margulies Benjamin 



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