あらすじ_03_10


1週間の訓練期間を経て、理沙は金融取引システムの集中監視室で仕事をすることになる。仕事の内容はシステムの安定稼働を支える
裏方の仕事である点では、以前の仕事と変わるところはない。理沙はこの仕事もそれほど長くはないと思っていた。
理沙が関心を持っているのは、この世の中を裏から操る仕組みがどのような動作原理で動いているのかということだった。
しかし、その根幹の部分にかかわっている人間と、理沙のような集中監視室で仕事をする人間との間には、明確な壁があった。
全体の仕組みを理解して、自分たちの思いの通りにシステムを動かし、世の中を裏から支配する人間を頂点とするならば、
理沙はシステムの下で単なる指示通りに動くだけの奴隷。政治家、一般労働者、一般庶民と、階層を重ねるほど裾が広がる巨大ピラミッドの世界。
自由で便利だと思っている生活は、実は不自由で不安定な生活でしかなく、非常に脆いものであった。
ピラミッドの頂点ではどのような事が起きているのか、理解している人間はどれだけいるのだろう、と理沙は集中監視室の大画面を見ながら思う。



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