あらすじ_03_11


システムの原型となる、人間の考える力を拡大する機械の原型が作られてから100年近く経っている。
計算機と呼ばれたその機械は、やがて人間の脳と似た名前で呼ばれるようになるが、当時は自分で考えることができないものと眉唾もの扱いされていた。
しかし、高速化と巨大化、そして地球全体につながる手足を獲得して、人間の生活のすぐそばに常に存在する機械となった。
どこにでも存在するが、実はどこにも存在しない。昔の思想家が神というものの定義として思いついた概念は、
ついに実現するかと思われた。しかし動作原理は、情報を外部から受け取り、計算し、分類し、形を変えて出力する。それだけだ。
理沙は昔の技術者が書いた教育用の資料を見つけると、夢中になって読み始めた。夜寝る時間も忘れるほどだった。
利用者でいる限りは自分たちの生活は不安定なまま、必要がなくなれば解雇されて、システムはさらに高度化する。
その目指すところが神であるかどうかは理沙にはわからない。しかし、支配される立場にはなりたくないと思った。



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