あらすじ_07_08


事あるごとに理沙は、支援輸送中佐と会話することにしている。軍とその背後の産業界の動向についての情報を共有するためだった。
理沙たちが現在取り組んでいる次世代システムについては、巨大データを取り扱うシステム業界、社会インフラ企業、
世界の主導権を狙っている各国政府の関心の的だった。制御できなくなりつつある人工知能から人間の手に主導権をいかにして取り戻すか、
太陽系内に足場を伸ばそうとしている航空宇宙業界は、巨大輸送システムとセットにした利権を狙っているし、
これらの要因が複雑に絡み合い、多数のプレーヤーが頂上を狙っている状態だった。その中心に理沙たちがいる。
仕組みを作りあげた者が根本を握ってすべてを支配する。軍を代表して頑張って欲しいというのが中佐の理沙に対するいつもの口癖だった。
研究所内の限られた人間のみ出入りを許された場所に、人体から取り出された中枢神経で作られた次世代制御システムのプロトタイプがある。
液体に漬けられた中枢神経組織が生々しい。かつては誰かの体の一部だったものだが、液体の中で今でも生き続けているのが信じられない。



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