あらすじ_08_02


中国はかつての経済的な勢いを失っていた。巨大な人口が経済の牽引力となっていたのが、今では足かせになっている。
経済の失速は中央集権体制への不満のマグマとなり、周辺地域では民族紛争と格差への反発として争いが絶えなかった。
軍事力の増強はかえって自らの足元を不安定にするだけとなり、中央政府は民衆のガス抜きとしての次なるフロンティアを大々的に掲げた。
国威発揚としての太陽系開発を目的に、木星、土星調査船を作り上げた。技術の重要部分はロシアの助けを借りることになったが。
地球との時間差が徐々に伸びてゆく中、本部からの定時連絡には、毎日必ずといっていいほど中国の騒乱のニュースが含まれていた。
中国の調査船の出発はいったいいつになるのか。軍も地球周回軌道上の監視衛星でリアルタイムに動向を監視しているが、
支援輸送中佐からは新たな情報は特になく、理沙は本部から離れた場所で一人もどかしい気分だった。
乗組員の間では、中国の調査船はトラブルで出発できないのではとの冗談も上がっていたが、理沙は笑い飛ばす気にはなれなかった。



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