あらすじ_15_19


裁判所へ向かう途中でも、理沙は弁護人と反論のためのストーリー作りの議論を続けていた。最大のハードルになると予想されたのは
果たして人間でないものに対する罪を立証し、自身の無罪を証明できるかということだった。理沙は何度も得体の知れないその相手と対峙したが
他の人間は誰も立ち向かったことがなかったからだった。単なる機械の延長と言えばそれまでだが、統合された知性の集合体のような存在であり、
全世界から流れ込む膨大なデータを受け取り、分類処理し、最適な解を求めて必要であれば現実世界に介入して調整を行っていた。
最初の事件とされる火星のエリシウム基地の事故も、いつのまにかうやむやにされて、後世に残る判例となる深い分析も行われずに
システム障害として片付けられてしまった。その後も同様の小さな事故は多数あったものの、システム改善計画の一環で事務的に処理されていた。
そのような状況に一石を投じたのがメンタル女の続けた研究であり、軍が興味を示してタイタン基地の中枢システムにある仕掛けを組み込んだ。
メンタル女と一時期共同して理沙も研究に参画していた。そのため証拠を示せるのは今では理沙しかいなかった。



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