あらすじ_23_06

理沙が会議室で大統領令を聞いていた頃、地球の理沙の店ではいつものように常連客が集まりとりとめもない会話が始まっていた。
しかし、店員は客の間に漂う空気の微妙な変化を感じ取っていた。不況といまだ収束しない感染症の恐怖、そして地球国家と太陽系居住地との間の不和。
日々の生活にも無縁ではなく、世の中の喧騒を忘れるためのこの店も、客の間の暗い話題が支配するようになってきた。
つまらないごく些細な事をきっかけとした言い争いも起きるようになっていた。この不和の原因の元となる根源はいったい何なのか。
客の誰かの罵声で店内は静まり返った。ちょうど音楽の切り替わりのところだったのでなおさらだった。皆が一斉に振り返り、
口論となっている2人の事を見る。気持ちの高ぶりから起きた口論はそこで終わったが、カウンター席の中で店員2人は顔を見合わせた。
言いたいことはわかっていた。誰かに八つ当たりしたい気持ちもよくわかる。しかし、誰かのせいにしたところで問題は解決しない。
店員は、遥か離れたところにいる理沙の事を思った。故意に不和と混乱をもたらしているのではなく、将来のためを思い行動しているはずだと。



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