あらすじ_23_08

衛星ガニメデから運び上げられた氷のパネルが、宇宙船に到着した。ひとつひとつ正確に成形された氷のパネルが宇宙船先端から
規則正しく取り付けられてゆく。恒星間空間の航海の際に、高速で衝突する荷電粒子から船体構造を保護する事を目的に予定されていた作業だが、
今回、外部からの攻撃を想定して取り付けられることになった。強烈なレーザー光を反射するとともに熱量を受け止め、破損しても修復が容易なのが
氷のパネルのメリットである。10日ほど前には、レーザー発振システムの部品テストを目的に氷のパネルにレーザー照射が行なわれたが、
設計通りの性能を発揮することを確認し、理沙は正式に作業にゴーサインを出した。1か月後には船体の全長の3割が氷のパネルに包まれる予定である。
地球でも、政府高官たちがその作業を見守っていた。戦いを想定して行動していることを彼らは既に見抜いていた。
地球外の居住地に対する2週間の回答期限が過ぎ、後戻りできない道をお互いに進み始めていた。とはいえ、大統領の正式な指令なくして
正式には動くことはできない。大統領は太陽/地球L3での揚陸艦建造の状況を常に気にかけていた。完成すればあとは煮るなり焼くなり自由にできるはず。



あらすじ(23)表紙へ