あらすじ_23_18

理沙は自室のデスクでカメラの前に向かった。笑みを浮かべていつもと変わらぬ落ち着いた表情だったが、なかなか発言を始めなかった。
スタッフが今か今かと慌て始めた時、理沙はようやく話し始めた。しっかりと前を向き、澄んだ瞳は画面の向こう側の100億人以上の人々を見つめる。
その1時間後、木星からの中継画面がようやく地球に届き、孫娘は画面越しに自分を見つめているかのような理沙の発言を待つ。
やがて理沙は発言を始めた。地球の感染症拡大による影響と、木星側の検疫とセキュリティ体制見直しを目的に、物流システムの一時停止を決定し、
木星/地球間、および木星と他の太陽系内の惑星間の物流を一時停止することを決定した。再開時期は現在のところ未定であり、
追って発表する。なお今回の措置は先日の地球政府の法改正とは無関係で、あくまでも木星側の保安上の課題改善を目的としたものである。
理沙の発言はそこまでだった。そのあとは解説者から今回の措置についての具体的な説明が30分ほど続いた。
孫娘は、理沙が地球政府の法改正のことに発言中で触れたことについては、明らかな意図があるのだろうと推測した。



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