031_労基に駆け込みたい

●作者のコメント

●ChatGPTのコメント
では、002-14の試し書きをしてみました。

●002-14【試し書き】:労基に駆け込みたい

皆の反応をひととおり確かめてから、理沙は続けた。

「このまま歌うだけじゃ、単なる恨み節にしかならない」

意味深な笑顔を見せて、理沙は言った。

「でもこの最低な詩に、最高にカッコいい曲をつけたらどうなるか」

湯浅もフィリップも、まだわかっていないという様子だった。
しかし、しばらくして最初に気づいたのは島崎だった。
そして小さく頷く。

「なるほどね」

理沙は島崎と意気投合した様子。2人はハイタッチした。
フィリップの方を見て、理沙は、

「この最低な詩のために、あなたがお得意の最高にカッコいい曲を作ってみてよ」

理沙は立ちあがり、まだ出来上がっていない曲を思い浮かべながら、
その詩を歌うマネをして見せた。

「あたしが、最高にカッコよく歌ってみせる」

理沙の歌うマネを見て、ようやく湯浅も何かに気がついたようだった。
もしライブで成功すれば、Arisa-MIstyらしい代表曲になりそうだ。
結局のところ、フィリップだけがまだ気づかないまま、そのあと4人は朝まで飲んだ。

朝まで飲んだせいで、理沙は翌日の日中を二日酔いの状態でベッドの上で過ごすことになった。
夕方になってようやくベッドから出て、蒸し暑い外の空気を浴びる。

同じ頃、「HALUCA」の事務所では、片岡まりあとの契約手続きが進められていた。
まりあは小川から渡された契約書を、事前にしっかりと目を通した上で、応諾した。
そして柴原と会ったちょうど1週間後の土曜の午後に、再び「HALUCA」の事務所に向かう。

「改めて、これからどうぞよろしくお願いします」

応接テーブルをはさんでまりあと向かい合っている、柴原と小川も頭を下げた。

「いえ、こちらこそ、よろしくお願いします」

さて、これからいったいどうなるか。
まりあはその後、今後のスケジュールについて柴原から説明を受けた。

本格的なデビューを目指した準備の具体化。
画面に表示されたタスク項目の並びは、まりあがいつも仕事で見ているなじみのあるものだった。
ただし、個々の項目の内容はまったく異なるが。

方向性の決定。
プロモーションの計画立案。
必要なリソースの確保。
曲の選定と制作。
トレーニング。
サンプル曲のテスト。
市場の反応調査。
次の計画への反映。

いったんはここまでだった。
最初の計画のゴールは、4か月後の10月。

「まずはこの場所で、PV(プロモーションビデオ)を流します」

画面に表示されたその場所を見て、まりあは息を飲んだ。
拝読しました。
002-14は、かなり良いですね。ここで **理沙側の道** と **まりあ側の道** が、はっきり並行して動き始めています。

前半では、理沙が「最低な詩」をどう扱うつもりなのかが見えます。
単なる恨み節として歌うのではなく、あえて最低な言葉に最高にカッコいい曲をつける。これにより、愚痴や怒りをそのまま吐き出すのではなく、ライブで映える反骨的な曲へ変えようとしている。これは002-13の「他人がやらない事」の答えにもなっています。

特に良いのは、最初に理解するのが島崎である点です。
フィリップではなく島崎が先に気づくことで、島崎の「ぼんやりしているようで妙なところで鋭い」性格が出ます。理沙と島崎がハイタッチする場面も、二人の相性の良さが自然に出ています。

一方で後半は、HALUCA側でまりあの契約が進む場面。
理沙が自由な反骨ソングを作ろうとしているのと対照的に、まりあは柴原の計画に沿って、プロモーション、リソース確保、曲の選定、トレーニング、市場調査という整った道へ入っていく。ここで二人の道が分かれていく構図が非常に明確です。

この節の核は、次のように整理できそうです。

**理沙は、最低な労働愚痴の詩に、最高にカッコいい曲をつけることで、単なる恨み節ではないArisa-Mistyらしい代表曲にしようと考える。最初にその意図を理解した島崎と理沙は意気投合し、フィリップには作曲を頼む。一方、HALUCAではまりあとの契約が正式に進み、柴原は本格デビューへ向けた計画を説明する。タスク管理のように整理された準備項目にまりあは戸惑いながらも、最初の目標が渋谷ウォールスクリーンでのPV公開だと知り、息を飲む。**

構成はこのままで良いと思います。
修正するとしたら、次の点です。

まず、前半の「最高にカッコいい曲」の狙いは、もう少し段階的に見せるとよさそうです。理沙がいきなり説明しすぎるのではなく、三人が「意味が分からない」「でも、何かあるらしい」と感じ、島崎だけが先に気づく流れを少し引っ張ると、理沙の狙いが映えます。

たとえば、

> 「だって、こんな歌詞を真顔でバラードにしたら終わりでしょ」
> 「でも、これを全力でカッコよくやったら?」

のように、少しだけ理沙に遊び心を出しても良さそうです。

次に、フィリップが最後まで分からない点は面白いですが、彼は作曲担当なので、完全に置いていかれるよりも、「意味は分かっていないが、カッコいい曲を作れと言われて火がつく」くらいがよさそうです。フィリップらしく、

> 「よく分からないけど、最高にカッコいい曲なら作れる」

という反応にすると、後の制作につながります。

後半のまりあ側は、タスク項目の並びが非常に良いです。
まりあがシステム系の仕事をしているので、仕事で見るプロジェクト計画に似ているが、中身はまったく違うという対比が効いています。ここはぜひ残したいです。

最後の、

> 「まずはこの場所で、PVを流します」
> 画面に表示されたその場所を見て、まりあは息を飲んだ。

これはとても良い引きです。
002-16「Next Frontier」につながる渋谷ウォールスクリーンを予告する終わり方になります。

修正版の構成は、以下が良さそうです。

1. 理沙が「このまま歌うだけでは恨み節」と切り出す。
2. 「最低な詩に最高にカッコいい曲をつける」という狙いを示す。
3. 湯浅とフィリップは戸惑うが、島崎が先に気づく。
4. 理沙と島崎が意気投合し、フィリップに作曲を頼む。
5. 理沙が、まだ存在しない曲を歌うように立ち上がる。
6. 湯浅もようやく意図に気づき、代表曲になる可能性を感じる。
7. フィリップは意味を完全には理解しないが、作曲担当として火がつく。
8. 四人は朝まで飲み、理沙は翌日二日酔いになる。
9. 同じ頃、HALUCAではまりあとの契約手続きが進む。
10. まりあは契約書に目を通したうえで応諾し、再び事務所を訪れる。
11. 柴原がデビュー準備の計画を説明する。
12. まりあは、仕事で見るタスク表に似ているが中身の違う計画に戸惑う。
13. 最初のゴールが4か月後の10月だと示される。
14. 柴原がPV公開場所を提示し、まりあは画面の場所を見て息を飲む。

この方向で修正版にすると、理沙側の「自由で荒い創作」と、まりあ側の「整えられたデビュー計画」がきれいに対比されると思います。
はい、構成がきちんと一筋につながっていて、非常によいと思います。
最後に登場する、PV公開場所については具体的に示さずに、暗示する程度にしてください。
ではこの修正案で、試し書きの修正をお願いします。
はい。
PV公開場所は具体名を出さず、まりあが「どこなのか」を察して息を飲む程度に抑えます。
前半は理沙側の荒い創作、後半はまりあ側の整えられたデビュー準備として、対比が出る形にしています。

---

# 002-14【試し書き・修正版】:労基に駆け込みたい

「ホントに、最低な詩でしょ?」

理沙は、少し楽しそうにそう言った。

壁面ディスプレイには、まだ例の詩が表示されている。

<疲労でかすむ視界、ビルの灯かりが嘲笑う>

<無表情のまま、魂だけが減ってゆく>

<上司の嘘、耳が腐るわ>

<Bullshit Job!Bullshit Job!>

湯浅はグラスを持ったまま、しばらく画面を眺めていた。
フィリップは腕を組み、どう反応すればいいのか分からない顔をしている。
島崎は、少しだけ目を細めていた。

「このまま歌うだけじゃ、単なる恨み節にしかならない」

理沙は言った。

「それは分かる」

湯浅が短く答える。

「というか、今のままだと恨み節にもなってない。ほぼ悪口」

「そこまで言う?」

「言う」

フィリップが画面を指さした。

「これ、ライブで歌ったら、客が引くと思うよ」

「普通に歌ったらね」

理沙はそう言って、意味ありげに笑った。

湯浅もフィリップも、まだ分かっていないようだった。

理沙はグラスを置き、壁面ディスプレイに映る文字を見上げた。

「でも、この最低な詩に、最高にカッコいい曲をつけたらどうなると思う?」

誰もすぐには答えなかった。

店内の空調の音だけが、静かに続いている。

フィリップは眉を寄せた。

「最高にカッコいい曲?」

「そう」

「この詩に?」

「この詩に」

「なんで?」

「なんでって」

理沙は、少し肩をすくめた。

「普通はやらないから」

その言葉に、最初に反応したのは島崎だった。

彼は壁面ディスプレイの文字を見たまま、ゆっくり頷いた。

「なるほどね」

理沙は島崎の方を見た。

「分かった?」

「たぶん」

「さすが」

理沙は片手を上げた。

島崎は少し面倒くさそうな顔をしながらも、手を上げる。
二人は軽くハイタッチした。

フィリップが納得のいかない顔をする。

「何? 何が分かったの?」

島崎はグラスを手に取りながら言った。

「この歌詞だけ見たら、ただの愚痴でしょ」

「うん」

「でも、曲がやたらカッコよかったら、愚痴じゃなくなるかもしれない」

フィリップはまだ首をかしげている。

理沙は彼の方を向いた。

「だから、フィリップ」

「何?」

「この最低な詩のために、あなたがお得意の最高にカッコいい曲を作ってみてよ」

フィリップは、一瞬だけ黙った。

それから、少しだけ目の色が変わった。

「最高にカッコいい曲なら、作れる」

「でしょ」

「意味はまだ、完全には分かってないけど」

「分かってなくてもいい」

「いいの?」

「たぶん、作ってるうちに分かる」

理沙はそう言って、立ち上がった。

カウンターの端から少し離れ、まだ存在していない曲を頭の中で鳴らすように、壁面ディスプレイの文字を見つめる。

そして、マイクもないのに、歌う真似をした。

<疲労でかすむ視界、ビルの灯かりが嘲笑う>

声には出さない。

けれど、姿勢と表情だけで、ステージ上の自分を作る。

肩でリズムを取り、少しだけ笑う。
客席を挑発するように目を細める。
最低な言葉を、まるで最高に上等な歌詞のように扱う。

湯浅の表情が、そこで少し変わった。

「ああ」

小さく、そう言った。

理沙は歌う真似をやめ、湯浅を見る。

「分かった?」

「ちょっとだけ」

「遅い」

「悪かったな」

湯浅は壁面ディスプレイを見直した。

「ライブでうまくはまったら、かなり強いかもしれん」

「でしょ」

「でも、難しいぞ」

「分かってる」

「下手したら、ほんまにただの悪口ソングになる」

「だから、最高にカッコよくするの」

理沙は、もう一度フィリップを見た。

「曲、頼んだ」

フィリップはグラスを置き、胸を張った。

「Okay. 最高にカッコいいやつね」

「お願い」

「ただし、タイトルは変えたい」

「なんで?」

「Bullshit Jobは直球すぎる」

島崎がぼそっと言った。

「労基に駆け込みたい、とか」

理沙は一瞬黙り、それから吹き出した。

「何それ」

「今の歌詞、全部そういう顔してる」

湯浅も笑った。

「意外とええかもしれん」

フィリップは納得していない顔だったが、スマホに何かをメモし始めた。

「とりあえず仮タイトルね」

「仮でいいよ」

理沙は席に戻った。

その後、四人は朝まで飲んだ。

曲の話をしていたはずが、途中から関係のない話になり、また曲に戻り、フィリップが妙なベースラインを口で鳴らし、島崎がテーブルを指で叩き、湯浅がそれを止め、理沙がまた笑った。

気づけば、外はうっすら明るくなっていた。

翌日。

理沙は日中のほとんどを、二日酔いの状態でベッドの上で過ごした。

頭が重い。
喉が渇く。
部屋の空気が妙に暑い。

昼過ぎに一度起き上がろうとして、すぐに諦めた。

夕方になって、ようやくベッドから出る。
カーテンを開けると、外はまだ蒸し暑そうだった。

ベランダの窓を少し開ける。

湿った空気が、部屋の中に流れ込んできた。

理沙はぼんやりと、昨日の夜のことを思い出した。

最低な詩。
最高にカッコいい曲。
島崎の変な仮タイトル。
フィリップの真剣な顔。

少しだけ、楽しかった。

同じころ。

HALUCAの事務所では、片岡まりあとの契約手続きが進められていた。

まりあは、小川から事前に送られてきた契約書に、何度も目を通していた。

分からない言葉は調べた。
不安な箇所には印をつけた。
必要なら質問するつもりで、メモも作った。

それでも、最終的には応諾することに決めた。

柴原と初めて会ってから、ちょうど一週間後の土曜日の午後。

まりあは再び、HALUCAの事務所を訪れた。

応接テーブルを挟んで、柴原と小川が向かい合っている。

「改めて、これからどうぞよろしくお願いします」

まりあは、両手を膝の上に置き、深く頭を下げた。

柴原も、小川も同じように頭を下げる。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

小川が穏やかに言った。

柴原は契約書類を確認し、必要な手続きを一つずつ進めていった。

署名。
確認。
説明。
控えの受け取り。

音楽事務所との契約という言葉からまりあが想像していたものより、実際の手続きはずっと事務的だった。

少しだけ、仕事に似ていた。

すべてが終わると、柴原はノートパソコンを開き、応接テーブルの中央に画面を向けた。

「では、ここから先の話をしましょう」

まりあは姿勢を正した。

画面には、今後の予定らしき一覧が表示されていた。

本格的なデビューを目指した準備の具体化。

方向性の決定。
プロモーションの計画立案。
必要なリソースの確保。
曲の選定と制作。
トレーニング。
サンプル曲のテスト。
市場の反応調査。
次の計画への反映。

並んでいる項目は、まりあが普段の仕事で見慣れているものに似ていた。

プロジェクトの計画。
タスクの洗い出し。
スケジュールの整理。
成果物とレビュー。

けれど、そこに書かれている中身は、まったく違っていた。

自分自身の声。
自分の見せ方。
自分が歌う曲。
自分が、誰かに見つけられるための計画。

まりあは、画面を見ながら、少し不思議な気持ちになった。

仕事では、いつもシステムの向こう側にいる。
誰かが使うものを、見えない場所で支えている。

今は、その計画表の中央に、自分の名前があった。

「最初のゴールは、四か月後の十月です」

柴原が言った。

「そこまでに、片岡さんの方向性を固め、サンプル曲を仕上げ、反応を見るところまで進めたいと思っています」

まりあは小さく頷いた。

「はい」

「そして、最初の反応を見る場として、ひとつ考えている場所があります」

柴原は画面を切り替えた。

まりあは、そこに表示された画像を見た。

夜の街。
広い交差点。
見上げるほど大きな光。

それだけで、まりあはその場所がどこなのか分かった。

胸の奥が、小さく震えた。

あの夜、自分が立っていた場所。
あのとき、遠くの歌を見上げていた場所。

柴原は静かに言った。

「まずはここで、PVを流します」

まりあは、思わず息を飲んだ。
ありがとうございます。
ではこの修正版の試し書きをもとに、小説化をお願いします。
はい。
修正版の試し書きをもとに、理沙側の「荒く自由な創作」と、まりあ側の「整えられたデビュー計画」が対になるように、小説本文として整えます。

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# 002-14 労基に駆け込みたい

「ホントに、最低な詩でしょ?」

理沙は、少し楽しそうにそう言った。

壁面ディスプレイには、まだ例の詩が表示されている。

<疲労でかすむ視界、ビルの灯かりが嘲笑う>

<無表情のまま、魂だけが減ってゆく>

<上司の嘘、耳が腐るわ>

<Bullshit Job!Bullshit Job!>

湯浅はグラスを持ったまま、しばらく画面を眺めていた。
フィリップは腕を組み、どう反応すればいいのか分からない顔をしている。
島崎は、少しだけ目を細めていた。

「このまま歌うだけじゃ、単なる恨み節にしかならない」

理沙は言った。

「それは分かる」

湯浅が短く答える。

「というか、今のままだと恨み節にもなってない。ほぼ悪口」

「そこまで言う?」

「言う」

フィリップが画面を指さした。

「これ、ライブで歌ったら、客が引くと思うよ」

「普通に歌ったらね」

理沙はそう言って、意味ありげに笑った。

湯浅もフィリップも、まだ分かっていないようだった。

理沙はグラスを置き、壁面ディスプレイに映る文字を見上げた。

「でも、この最低な詩に、最高にカッコいい曲をつけたらどうなると思う?」

誰もすぐには答えなかった。

店内の空調の音だけが、静かに続いている。

フィリップは眉を寄せた。

「最高にカッコいい曲?」

「そう」

「この詩に?」

「この詩に」

「なんで?」

「なんでって」

理沙は、少し肩をすくめた。

「普通はやらないから」

その言葉に、最初に反応したのは島崎だった。

彼は壁面ディスプレイの文字を見たまま、ゆっくり頷いた。

「なるほどね」

理沙は島崎の方を見た。

「分かった?」

「たぶん」

「さすが」

理沙は片手を上げた。

島崎は少し面倒くさそうな顔をしながらも、手を上げる。
二人は軽くハイタッチした。

フィリップが納得のいかない顔をする。

「何? 何が分かったの?」

島崎はグラスを手に取りながら言った。

「この歌詞だけ見たら、ただの愚痴でしょ」

「うん」

「でも、曲がやたらカッコよかったら、愚痴じゃなくなるかもしれない」

フィリップはまだ首をかしげている。

理沙は彼の方を向いた。

「だから、フィリップ」

「何?」

「この最低な詩のために、あなたがお得意の最高にカッコいい曲を作ってみてよ」

フィリップは、一瞬だけ黙った。

それから、少しだけ目の色が変わった。

「最高にカッコいい曲なら、作れる」

「でしょ」

「意味はまだ、完全には分かってないけど」

「分かってなくてもいい」

「いいの?」

「たぶん、作ってるうちに分かる」

理沙はそう言って、立ち上がった。

カウンターの端から少し離れ、まだ存在していない曲を頭の中で鳴らすように、壁面ディスプレイの文字を見つめる。

そして、マイクもないのに、歌う真似をした。

<疲労でかすむ視界、ビルの灯かりが嘲笑う>

声には出さない。

けれど、姿勢と表情だけで、ステージ上の自分を作る。

肩でリズムを取り、少しだけ笑う。
客席を挑発するように目を細める。
最低な言葉を、まるで最高に上等な歌詞のように扱う。

湯浅の表情が、そこで少し変わった。

「ああ」

小さく、そう言った。

理沙は歌う真似をやめ、湯浅を見る。

「分かった?」

「ちょっとだけ」

「遅い」

「悪かったな」

湯浅は壁面ディスプレイを見直した。

「ライブでうまくはまったら、かなり強いかもしれん」

「でしょ」

「でも、難しいぞ」

「分かってる」

「下手したら、ほんまにただの悪口ソングになる」

「だから、最高にカッコよくするの」

理沙は、もう一度フィリップを見た。

「曲、頼んだ」

フィリップはグラスを置き、胸を張った。

「Okay. 最高にカッコいいやつね」

「お願い」

「ただし、タイトルは変えたい」

「なんで?」

「Bullshit Jobは直球すぎる」

島崎がぼそっと言った。

「労基に駆け込みたい、とか」

理沙は一瞬黙り、それから吹き出した。

「何それ」

「今の歌詞、全部そういう顔してる」

湯浅も笑った。

「意外とええかもしれん」

フィリップは納得していない顔だったが、スマホに何かをメモし始めた。

「とりあえず仮タイトルね」

「仮でいいよ」

理沙は席に戻った。

その後、四人は朝まで飲んだ。

曲の話をしていたはずが、途中から関係のない話になり、また曲に戻り、フィリップが妙なベースラインを口で鳴らし、島崎がテーブルを指で叩き、湯浅がそれを止め、理沙がまた笑った。

気づけば、外はうっすら明るくなっていた。

翌日。

理沙は日中のほとんどを、二日酔いの状態でベッドの上で過ごした。

頭が重い。
喉が渇く。
部屋の空気が妙に暑い。

昼過ぎに一度起き上がろうとして、すぐに諦めた。

夕方になって、ようやくベッドから出る。
カーテンを開けると、外はまだ蒸し暑そうだった。

ベランダの窓を少し開ける。

湿った空気が、部屋の中に流れ込んできた。

理沙はぼんやりと、昨日の夜のことを思い出した。

最低な詩。
最高にカッコいい曲。
島崎の変な仮タイトル。
フィリップの真剣な顔。

少しだけ、楽しかった。

同じころ。

HALUCAの事務所では、片岡まりあとの契約手続きが進められていた。

まりあは、小川から事前に送られてきた契約書に、何度も目を通していた。

分からない言葉は調べた。
不安な箇所には印をつけた。
必要なら質問するつもりで、メモも作った。

それでも、最終的には応諾することに決めた。

柴原と初めて会ってから、ちょうど一週間後の土曜日の午後。

まりあは再び、HALUCAの事務所を訪れた。

応接テーブルを挟んで、柴原と小川が向かい合っている。

「改めて、これからどうぞよろしくお願いします」

まりあは、両手を膝の上に置き、深く頭を下げた。

柴原も、小川も同じように頭を下げる。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

小川が穏やかに言った。

柴原は契約書類を確認し、必要な手続きを一つずつ進めていった。

署名。
確認。
説明。
控えの受け取り。

音楽事務所との契約という言葉からまりあが想像していたものより、実際の手続きはずっと事務的だった。

少しだけ、仕事に似ていた。

すべてが終わると、柴原はノートパソコンを開き、応接テーブルの中央に画面を向けた。

「では、ここから先の話をしましょう」

まりあは姿勢を正した。

画面には、今後の予定らしき一覧が表示されていた。

本格的なデビューを目指した準備の具体化。

方向性の決定。
プロモーションの計画立案。
必要なリソースの確保。
曲の選定と制作。
トレーニング。
サンプル曲のテスト。
市場の反応調査。
次の計画への反映。

並んでいる項目は、まりあが普段の仕事で見慣れているものに似ていた。

プロジェクトの計画。
タスクの洗い出し。
スケジュールの整理。
成果物とレビュー。

けれど、そこに書かれている中身は、まったく違っていた。

自分自身の声。
自分の見せ方。
自分が歌う曲。
自分が、誰かに見つけられるための計画。

まりあは、画面を見ながら、少し不思議な気持ちになった。

仕事では、いつもシステムの向こう側にいる。
誰かが使うものを、見えない場所で支えている。

今は、その計画表の中央に、自分の名前があった。

「最初のゴールは、四か月後の十月です」

柴原が言った。

「そこまでに、片岡さんの方向性を固め、サンプル曲を仕上げ、反応を見るところまで進めたいと思っています」

まりあは小さく頷いた。

「はい」

「そして、最初の反応を見る場として、ひとつ考えている場所があります」

柴原は画面を切り替えた。

まりあは、そこに表示された画像を見た。

夜の街。
広い交差点。
見上げるほど大きな光。

それだけで、まりあはその場所がどこなのか分かった。

胸の奥が、小さく震えた。

あの夜、自分が立っていた場所。
あのとき、遠くの歌を見上げていた場所。

柴原は静かに言った。

「まずはここで、PVを流します」

まりあは、思わず息を飲んだ。
ありがとうございます。
では、400字程度でこの文章のあらすじの作成をお願いします。
### 002-14「労基に駆け込みたい」あらすじ

理沙は、職場への怒りや疲労をむき出しにした「最低な詩」をそのまま歌えば単なる恨み節になると認めたうえで、
それに最高にカッコいい曲をつければ、誰もやらない強い歌になると語る。
最初にその意図を理解した島崎と理沙は意気投合し、フィリップも意味は分からないながら作曲に乗り気になる。
仮タイトルは島崎の一言から「労基に駆け込みたい」となり、四人は朝まで飲みながら曲の話で盛り上がる。
一方、同じ頃HALUCAでは、まりあとの契約手続きが進む。
まりあは正式に契約を結び、柴原から本格デビューに向けた計画を説明される。
そこには方向性の決定、曲の制作、トレーニング、市場調査などの項目が並び、彼女自身が計画の中心に置かれていた。
最後に柴原は、最初のPVを流す場所を示す。
夜の街と巨大な光の画像を見て、まりあはその場所を悟り、息を飲む。
ありがとうございます。
ではまた日を改めて、引き続きの002-15の文章を作成します。
こちらこそ、ありがとうございました。
002-14で、理沙側は「労基に駆け込みたい」という荒削りな代表曲の芽が生まれ、まりあ側はHALUCAとの契約を経て、デビュー計画の入口に立ちましたね。

次回は **002-15「前例がない事をやってみる」** ですね。
柴原がまりあの方向性をどう考え、どんな方法で「マリア・エレーナ」を形にしていくのかが見えてくる節になりそうです。

また日を改めて、002-15の試し書きから進めましょう。



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