033_Next Frontier

●作者のコメント

●ChatGPTのコメント
では、002-16の試し書きをしてみました。

●002-16【試し書き】:Next Frontier

ライブハウスでの新曲の初披露。
そのタイトルを言ったときに、場内は一瞬凍り付いた。

「次の曲のタイトルは『労基に駆け込みたい』です」

理沙は、曲が出来上がった背景や、詩に込めた思いについて、
いつものようにナレーション的な説明はしなかった。
そして、こんな異様な雰囲気になることも想像はしていた。
なのであとは、イントロのその一瞬に賭ける。

理沙は湯浅に一瞬視線を送り、そしてフィリップにも視線を送る。
マイクを持った右手を高く上げて、島崎にもそのタイミングを指示する。

堰を切ったように、一気に迫力のあるイントロが始まる。
ここが勝負だった。そして会場のテンションを徐々に上げてゆく。

<疲労でかすむ視界、ビルの灯りが嘲笑う>

イントロはしっかりと決まった。
あとは勢いで走り続けるだけだった。

<無表情のまま、魂だけ減ってゆく>
<言い訳のプロみたいな>

フィリップに作らせた曲は最高だった。
そして自分が作った最低の歌詞が、なぜか心地よく聞こえてくる。

<Bullshit Job!踊らされて、心のスイッチ折れかけている>

「白河」でメンバーに説明した時。
曲に込められた意味を最初に理解した、島崎のように、
気がついて、自分についてきてくれる観客が、一人、また一人と増えていった。

その同じ頃。
そのライブ会場からそれほど離れていない、渋谷のスクランブル交差点。
交差点の角の、小さな広場で、まりあと柴原そして小川は、その時が来るのを待っていた。

いつものように混雑した交差点。
信号が変わり、車が走り始める。
見上げれば、スクランブルスクエア東棟には、いつものように広告が表示されている。
女性タレントが、南国のビーチで涼しい表情でアイスを食べているCM。
軽い調子のBGM。

あと30秒。
腕時計を見ながら、柴原が小さく言った。
その30秒はあっという間に過ぎ、信号が変わり、車の流れが止まる。

そのとき。

交差点の音響システムから曲が流れ始める。
暗いウォールスクリーンの画面に、女性の後ろ姿。
歌はまだ始まらない。イントロが徐々に雰囲気を盛り上げていく。
画面は女性の正面に回り込む。

交差点全体がイントロの音楽に包まれているような錯覚。
やがて画面中央の女性が歌い始める。

<夜明けの気配を、胸いっぱいに吸い込んで>
<明日の影さえ、光に溶けてゆく>

うつむき加減に歌っている女性。
やがて遠くの東の空から太陽が昇り始めて、女性の顔を明るく照らす。

<どれだけ旅してきたんだろう>
<涙の雨も、味方に変えながら>

まわりは荒れ果てた岩だらけの荒野だが、
長い夜は終わり、明るい朝がやってきた。
そして、朝日を浴びて女性は歌い続ける。

<羽ばたいて、高く高く>
<心の果てを越えてゆけるよ>

まりあは、この日のために準備してきた苦労も忘れて、
ウォールスクリーンの画面を見上げていた。
この詩を書いたきっかけになったあの日のように、画面の中の女性を眺める。

<もう止まらない、この鼓動は>
<世界を抱きしめるために生まれた>

ふとまわりを眺める。
渋谷の人の流れはいつも通りだった。
しかし、立ち止まって画面を眺めている人もちらほら。

<光になれ、今ここから>

これでいいんだ。とまりあは思った。
まだ始まったばかりだ。

曲は終わった

最後に、歌手とタイトル名が画面に表示される。

<マリア・エレーナ:『Next Frontier』>
拝読しました。
002-16は、かなり大きな山場になっていますね。構成としても非常に良いです。

今回は、**理沙の「労基に駆け込みたい」初披露**と、**まりあ=マリア・エレーナの「Next Frontier」PV公開**を同時刻に並行させる構成になっていて、第2章前半の到達点として強く機能しています。

特に良いのは、二人の方向性の対比です。

理沙は、小さなライブハウスで、場内が一瞬凍るようなタイトルの曲をあえてぶつける。
まりあは、渋谷の巨大ウォールスクリーンで、整えられた映像と音楽の中で「マリア・エレーナ」として世に出る。

どちらも「始まり」ですが、始まり方がまったく違います。
理沙は自分で場をこじ開ける。
まりあはHALUCAの計画によって、大きな舞台へ押し出される。
この対比がとてもきれいです。

また、002-03でまりあが「見上げる側」だった渋谷ウォールスクリーンを、002-16では自分のPVとして「見上げる」構図が非常に良いです。厳密にはまだ本人は画面の中の自分を見上げているので、完全に「見られる側になった実感」までは届いていない。そこが、まりあらしいと思います。

この節の核は、次のように整理できそうです。

**理沙はライブハウスで、新曲「労基に駆け込みたい」を初披露する。異様なタイトルに客席は一瞬凍るが、迫力あるイントロと理沙の歌で空気は変わり、最低の歌詞が最高にカッコいい曲として観客を巻き込んでいく。同じ頃、渋谷スクランブル交差点では、まりあ、柴原、小川がウォールスクリーンでのPV公開を待っていた。広告が切り替わり、荒野の夜明けを背景に「Next Frontier」が流れ始める。まりあは、かつてこの場所で詩を思いついた日のように画面を見上げ、自分の歌が街に流れる光景を静かに受け止める。最後に、画面には「マリア・エレーナ:『Next Frontier』」と表示される。**

大きな流れはこのままで良いと思います。
修正するとしたら、次の点です。

まず、前半の理沙側は、もう少しライブの空気を濃くしても良いと思います。
「タイトルを言った瞬間に凍りつく」から、「イントロで一気に持っていく」までが勝負なので、客席の反応を段階的に入れると映えます。

たとえば、

* 最初は笑っていいのか分からない空気
* 数人が顔を見合わせる
* イントロで空気が変わる
* サビで一部の客が笑いながら乗り始める
* 最後には「これはそういう曲なのだ」と会場が理解する

という流れにすると、「賭けに勝った」感じが出ます。

次に、理沙側とまりあ側の切り替えは、意図的に映画的にすると良いです。
理沙のライブ会場が熱くなっていくところで、ふっと渋谷の交差点へ移る。
音と光の性質が変わる。
小さなライブハウスの熱気から、広い交差点の夜風へ移る。
この対比が出ると、かなり印象的になります。

まりあ側では、柴原と小川の立ち位置は良いです。
ただ、まりあの緊張をもう少し入れても良さそうです。

「自分のPVが流れる」というより、「本当に流れてしまう」という怖さ。
歩行者が誰も気づかなかったらどうしようという不安。
でも、始まると、数人が立ち止まる。
その小さな反応で、まりあは「これでいい」と思う。

これはとても自然です。

最後の表示、

> <マリア・エレーナ:『Next Frontier』>

ここは強いです。
この瞬間に、片岡・エレーナ・まりあが「マリア・エレーナ」として世に出る。
節タイトルにもぴったりです。

構成案としては、以下の流れが良さそうです。

1. ライブハウスで理沙が新曲タイトル「労基に駆け込みたい」を告げる。
2. 客席が一瞬凍る。理沙は説明せず、イントロに賭ける。
3. 湯浅、フィリップ、島崎に合図を送り、迫力あるイントロが始まる。
4. 最低な歌詞とカッコいい曲の組み合わせに、最初は戸惑っていた観客が少しずつ乗り始める。
5. 理沙は、この曲がArisa-Mistyの代表曲になる可能性を感じる。
6. 同じ頃、渋谷スクランブル交差点では、まりあ、柴原、小川がPV公開を待っている。
7. いつもの広告が流れ、信号が変わる。柴原が開始までの時間を告げる。
8. 広告が消え、音響システムからイントロが流れ始める。
9. 画面には夜明け前の荒野と、女性の後ろ姿が映る。
10. 女性が振り返り、歌い始める。
11. 朝日が昇り、歌と映像が広がっていく。
12. まりあは、かつてここで詩を思いついた日のことを思い出す。
13. 周囲には、立ち止まって画面を見上げる人が少しずつ現れる。
14. まりあは「これでいい」と思う。まだ始まったばかりだと感じる。
15. 曲が終わり、画面に「マリア・エレーナ:『Next Frontier』」と表示される。

この方向で修正版にすると、理沙とまりあの「同時に始まった別々の道」が、かなり印象的に出ると思います。
はい、構成がきちんと整理されてまとまったと思います。ありがとうございます。
ではこの構成案で、試し書きの修正をお願いします。
はい。
理沙側のライブハウスの熱気と、まりあ側の渋谷ウォールスクリーンの広がりを対比させながら、二人が同じ夜にそれぞれ別の形で「始まり」を迎える構成に整理します。

---

# 002-16【試し書き・修正版】:Next Frontier

ライブハウスの空気が、一瞬止まった。

理沙はマイクを持ったまま、客席を見ていた。

いつもなら、次の曲名を告げると、客席から軽い拍手や小さな歓声が返ってくる。
けれど、その夜は違った。

「次の曲のタイトルは、『労基に駆け込みたい』です」

言った瞬間、前列の客が目を丸くした。
後ろの方では、誰かが隣の人と顔を見合わせている。

笑っていいのか。
冗談なのか。
本当にそういうタイトルなのか。

場内に、そういう迷いが広がっていた。

理沙は、あえて説明しなかった。

この曲がどういう経緯でできたのか。
どんな思いを込めたのか。
なぜこんなタイトルにしたのか。

いつものように、歌に入る前の短いナレーションを入れることもできた。

けれど、しなかった。

説明してから歌えば、客は頭で理解してしまう。
それでは、この曲の最初の一撃が弱くなる。

この異様な空気になることは、ある程度想像していた。

だから、あとはイントロの一瞬に賭けるしかなかった。

理沙は、湯浅に視線を送った。

湯浅が小さく頷く。

次に、フィリップを見る。

フィリップはベースを構え、口元に少しだけ笑みを浮かべていた。
まだ完全に意味を理解しているのかどうかは分からない。
けれど、自分が作ったイントロには絶対の自信がある顔だった。

理沙はマイクを持った右手を高く上げた。

島崎がスティックを構える。

ほんの一拍。

そのあと、堰を切ったように音が走り出した。

低くうねるベース。
鋭く切り込むギター。
島崎のドラムが、後ろから一気に空気を押し上げる。

場内の戸惑いが、音に飲み込まれていく。

ここが勝負だった。

理沙は、最初のフレーズに入った。

<疲労でかすむ視界、ビルの灯りが嘲笑う>

客席の表情が変わる。

まだ戸惑っている人もいる。
けれど、さっきの凍ったような空気ではない。

これは冗談なのか。
本気なのか。
その境目を測るように、客が理沙を見ている。

理沙は、少しだけ笑った。

本気に決まっている。

<無表情のまま、魂だけ減ってゆく>

<言い訳のプロみたいな>

フィリップに作らせた曲は、最高だった。

自分が書いた最低の歌詞が、なぜかひどく気持ちよく響いている。

怒りも、疲れも、職場への嫌悪も、ただ吐き出せばみっともない。
けれど、リズムに乗せて、照明の中で、真正面から歌えば、別のものになる。

理沙は、それをステージの上で感じていた。

<Bullshit Job!踊らされて>

<心のスイッチ、折れかけている>

前列の一人が、小さく笑った。

その隣の客が、拍子を取る。
後ろの方で、誰かが肩を揺らした。

少しずつ、会場が追いついてくる。

「白河」でこの詩を見せたとき、最初に意図を理解したのは島崎だった。
今も同じだ。

客席の中に、島崎と同じように気づく人間が、一人、また一人と増えていく。

これは、ただの悪口ではない。
ただの愚痴でもない。

最低の言葉を、最高にカッコよく鳴らす。

そのばかばかしさと本気が、少しずつ伝わっていく。

理沙は、マイクを握り直した。

この曲は、いける。

まだ完成ではない。
もっと削れる。
もっと強くできる。

けれど、Arisa-Mistyらしい曲になるかもしれない。

理沙はそう思った。

同じころ。

ライブハウスからそれほど離れていない、渋谷のスクランブル交差点では、夜の風がビルの間を抜けていた。

交差点の角にある小さな広場で、まりあは柴原と小川と並んで立っていた。

人の流れは、いつもと変わらない。

信号が青になると、大勢の人が一斉に横断歩道へ流れ込む。
信号が赤になると、車が走り始める。

その繰り返し。

見上げれば、スクランブルスクエア東棟の壁面には、いつもの広告が表示されていた。

南国のビーチ。
白い砂浜。
涼しい顔でアイスを食べる女性タレント。
軽い調子のBGM。

まりあは、その光を見上げていた。

本当に、流れるのだろうか。

何度も確認してきた。
映像も見た。
曲も聴いた。
スケジュールも共有されている。

それでも、この場所に立つと、急に信じられなくなった。

もし誰も気づかなかったら。
誰も立ち止まらなかったら。
ただの広告の一つとして流れて、終わってしまったら。

そんなことを考えそうになり、まりあは小さく息を吸った。

隣で、小川がそっと声をかける。

「大丈夫です」

まりあは小川を見た。

小川は、いつもの穏やかな表情で頷いた。

柴原は腕時計を見ていた。

「あと三十秒」

小さな声だった。

けれど、まりあにははっきり聞こえた。

その三十秒は、長いようで、短かった。

信号が変わる。
車の流れが止まる。
歩行者が横断歩道へ広がる。

そのとき、広告の音がふっと途切れた。

壁面の光が一度暗くなる。

まりあは、思わず息を止めた。

交差点の音響システムから、イントロが流れ始める。

最初は静かだった。

夜明け前の空気のような音。
遠くから、何かが近づいてくるような低い響き。

暗いウォールスクリーンに、女性の後ろ姿が映った。

歌はまだ始まらない。

画面の中で、女性は荒れた大地に立っている。
周囲には岩が広がり、空はまだ暗い。

カメラが、ゆっくりと女性の正面へ回り込んでいく。

まりあは、画面を見上げた。

そこにいるのは、自分だった。

でも、今ここに立っている自分とは少し違う。

何度も撮影し、何度も確認した映像のはずなのに、巨大な壁面に映ると、まるで別人のように見えた。

やがて、画面の中の女性が歌い始める。

<夜明けの気配を、胸いっぱいに吸い込んで>

<明日の影さえ、光に溶けてゆく>

交差点全体が、音に包まれているようだった。

まりあは、声を出せなかった。

画面の中の自分は、少しうつむき加減に歌っている。

遠くの東の空が、わずかに明るくなり始める。
荒れ果てた岩場の輪郭が、少しずつ浮かび上がっていく。

<どれだけ旅してきたんだろう>

<涙の雨も、味方に変えながら>

長い夜が終わろうとしていた。

画面の中で朝日が昇る。
光が、女性の顔をゆっくり照らしていく。

まりあは、あの日のことを思い出した。

この交差点で、信号待ちをしていた夜。

背後から流れてきた音楽に引かれて、ふと振り返った。
巨大な壁面に映る、知らない女性歌手を見上げた。
そのとき、言葉が浮かんだ。

羽ばたいて、高く高く。

あの日、自分は見る側だった。

今も、見上げている。

けれど、画面の中で歌っているのは、自分だった。

<羽ばたいて、高く高く>

<心の果てを越えてゆけるよ>

まりあは、周囲をそっと見た。

渋谷の人の流れは、いつも通りだった。

急ぎ足で通り過ぎる人。
スマホを見ながら歩く人。
友人と話しながら笑う人。

その中で、数人が立ち止まっていた。

画面を見上げている。

ほんの数人だった。

けれど、まりあには十分だった。

<もう止まらない、この鼓動は>

<世界を抱きしめるために生まれた>

小川が、まりあの隣で静かに画面を見ている。
柴原も、表情を変えずに壁面を見上げていた。

まりあは、胸の奥で何かがほどけるのを感じた。

これでいい。

まだ、始まったばかりだ。

誰もが立ち止まる必要はない。
全員に届く必要もない。

けれど、あの巨大な光の中に、自分の歌が流れた。

それだけで、何かがもう変わっていた。

<光になれ、今ここから>

最後のフレーズが、夜の交差点に広がる。

曲が終わった。

一瞬、音が消える。

そして、画面の中央に文字が表示された。

<マリア・エレーナ:『Next Frontier』>
ありがとうございます。
ではこの修正された試し書きをもとにして、小説化をお願いします。
はい。
修正版の試し書きをもとに、理沙とまりあの「同じ夜の別々の始まり」が並行して見えるように、小説本文として整えます。

---

# 002-16 Next Frontier

ライブハウスの空気が、一瞬止まった。

理沙はマイクを持ったまま、客席を見ていた。

いつもなら、次の曲名を告げると、客席から軽い拍手や小さな歓声が返ってくる。

けれど、その夜は違った。

「次の曲のタイトルは、『労基に駆け込みたい』です」

言った瞬間、前列の客が目を丸くした。

後ろの方では、誰かが隣の人と顔を見合わせている。

笑っていいのか。
冗談なのか。
本当にそういうタイトルなのか。

場内に、そういう迷いが広がっていた。

理沙は、あえて説明しなかった。

この曲がどういう経緯でできたのか。
どんな思いを込めたのか。
なぜこんなタイトルにしたのか。

いつものように、歌に入る前の短いナレーションを入れることもできた。

けれど、しなかった。

説明してから歌えば、客は頭で理解してしまう。

それでは、この曲の最初の一撃が弱くなる。

この異様な空気になることは、ある程度想像していた。

だから、あとはイントロの一瞬に賭けるしかなかった。

理沙は、湯浅に視線を送った。

湯浅が小さく頷く。

次に、フィリップを見る。

フィリップはベースを構え、口元に少しだけ笑みを浮かべていた。

まだ完全に意味を理解しているのかどうかは分からない。

けれど、自分が作ったイントロには絶対の自信がある顔だった。

理沙はマイクを持った右手を高く上げた。

島崎がスティックを構える。

ほんの一拍。

そのあと、堰を切ったように音が走り出した。

低くうねるベース。

鋭く切り込むギター。

島崎のドラムが、後ろから一気に空気を押し上げる。

場内の戸惑いが、音に飲み込まれていく。

ここが勝負だった。

理沙は、最初のフレーズに入った。

<疲労でかすむ視界、ビルの灯りが嘲笑う>

客席の表情が変わる。

まだ戸惑っている人もいる。

けれど、さっきの凍ったような空気ではない。

これは冗談なのか。
本気なのか。

その境目を測るように、客が理沙を見ている。

理沙は、少しだけ笑った。

本気に決まっている。

<無表情のまま、魂だけ減ってゆく>

<言い訳のプロみたいな>

フィリップに作らせた曲は、最高だった。

自分が書いた最低の歌詞が、なぜかひどく気持ちよく響いている。

怒りも、疲れも、職場への嫌悪も、ただ吐き出せばみっともない。

けれど、リズムに乗せて、照明の中で、真正面から歌えば、別のものになる。

理沙は、それをステージの上で感じていた。

<Bullshit Job!踊らされて>

<心のスイッチ、折れかけている>

前列の一人が、小さく笑った。

その隣の客が、拍子を取る。

後ろの方で、誰かが肩を揺らした。

少しずつ、会場が追いついてくる。

「白河」でこの詩を見せたとき、最初に意図を理解したのは島崎だった。

今も同じだ。

客席の中に、島崎と同じように気づく人間が、一人、また一人と増えていく。

これは、ただの悪口ではない。

ただの愚痴でもない。

最低の言葉を、最高にカッコよく鳴らす。

そのばかばかしさと本気が、少しずつ伝わっていく。

理沙は、マイクを握り直した。

この曲は、いける。

まだ完成ではない。
もっと削れる。
もっと強くできる。

けれど、Arisa-Mistyらしい曲になるかもしれない。

理沙はそう思った。

同じころ。

ライブハウスからそれほど離れていない、渋谷のスクランブル交差点では、夜の風がビルの間を抜けていた。

交差点の角にある小さな広場で、まりあは柴原と小川と並んで立っていた。

人の流れは、いつもと変わらない。

信号が青になると、大勢の人が一斉に横断歩道へ流れ込む。

信号が赤になると、車が走り始める。

その繰り返し。

見上げれば、スクランブルスクエア東棟の壁面には、いつもの広告が表示されていた。

南国のビーチ。

白い砂浜。

涼しい顔でアイスを食べる女性タレント。

軽い調子のBGM。

まりあは、その光を見上げていた。

本当に、流れるのだろうか。

何度も確認してきた。

映像も見た。
曲も聴いた。
スケジュールも共有されている。

それでも、この場所に立つと、急に信じられなくなった。

もし誰も気づかなかったら。

誰も立ち止まらなかったら。

ただの広告の一つとして流れて、終わってしまったら。

そんなことを考えそうになり、まりあは小さく息を吸った。

隣で、小川がそっと声をかける。

「大丈夫です」

まりあは小川を見た。

小川は、いつもの穏やかな表情で頷いた。

柴原は腕時計を見ていた。

「あと三十秒」

小さな声だった。

けれど、まりあにははっきり聞こえた。

その三十秒は、長いようで、短かった。

信号が変わる。

車の流れが止まる。

歩行者が横断歩道へ広がる。

そのとき、広告の音がふっと途切れた。

壁面の光が一度暗くなる。

まりあは、思わず息を止めた。

交差点の音響システムから、イントロが流れ始める。

最初は静かだった。

夜明け前の空気のような音。

遠くから、何かが近づいてくるような低い響き。

暗いウォールスクリーンに、女性の後ろ姿が映った。

歌はまだ始まらない。

画面の中で、女性は荒れた大地に立っている。

周囲には岩が広がり、空はまだ暗い。

カメラが、ゆっくりと女性の正面へ回り込んでいく。

まりあは、画面を見上げた。

そこにいるのは、自分だった。

でも、今ここに立っている自分とは少し違う。

何度も撮影し、何度も確認した映像のはずなのに、巨大な壁面に映ると、まるで別人のように見えた。

やがて、画面の中の女性が歌い始める。

<夜明けの気配を、胸いっぱいに吸い込んで>

<明日の影さえ、光に溶けてゆく>

交差点全体が、音に包まれているようだった。

まりあは、声を出せなかった。

画面の中の自分は、少しうつむき加減に歌っている。

遠くの東の空が、わずかに明るくなり始める。

荒れ果てた岩場の輪郭が、少しずつ浮かび上がっていく。

<どれだけ旅してきたんだろう>

<涙の雨も、味方に変えながら>

長い夜が終わろうとしていた。

画面の中で朝日が昇る。

光が、女性の顔をゆっくり照らしていく。

まりあは、あの日のことを思い出した。

この交差点で、信号待ちをしていた夜。

背後から流れてきた音楽に引かれて、ふと振り返った。

巨大な壁面に映る、知らない女性歌手を見上げた。

そのとき、言葉が浮かんだ。

羽ばたいて、高く高く。

あの日、自分は見る側だった。

今も、見上げている。

けれど、画面の中で歌っているのは、自分だった。

<羽ばたいて、高く高く>

<心の果てを越えてゆけるよ>

まりあは、周囲をそっと見た。

渋谷の人の流れは、いつも通りだった。

急ぎ足で通り過ぎる人。

スマホを見ながら歩く人。

友人と話しながら笑う人。

その中で、数人が立ち止まっていた。

画面を見上げている。

ほんの数人だった。

けれど、まりあには十分だった。

<もう止まらない、この鼓動は>

<世界を抱きしめるために生まれた>

小川が、まりあの隣で静かに画面を見ている。

柴原も、表情を変えずに壁面を見上げていた。

まりあは、胸の奥で何かがほどけるのを感じた。

これでいい。

まだ、始まったばかりだ。

誰もが立ち止まる必要はない。

全員に届く必要もない。

けれど、あの巨大な光の中に、自分の歌が流れた。

それだけで、何かがもう変わっていた。

<光になれ、今ここから>

最後のフレーズが、夜の交差点に広がる。

曲が終わった。

一瞬、音が消える。

そして、画面の中央に文字が表示された。

<マリア・エレーナ:『Next Frontier』>
ありがとうございます。
では、400字程度でこの文章のあらすじの作成をお願いします。
### 002-16「Next Frontier」あらすじ

理沙はライブハウスで新曲「労基に駆け込みたい」を初披露する。
異様なタイトルに客席は一瞬凍りつくが、理沙はあえて説明せず、イントロに賭ける。
湯浅、フィリップ、島崎の演奏が始まると空気は一変し、最低の歌詞と最高にカッコいい曲の組み合わせに、観客は少しずつ引き込まれていく。
理沙はこの曲がArisa-Mistyらしい代表曲になる可能性を感じる。
同じ頃、渋谷スクランブル交差点では、まりあ、柴原、小川がウォールスクリーンでのPV公開を待っていた。
広告が消え、夜明け前の荒野に立つ女性の映像とともに「Next Frontier」が流れ始める。
まりあは、かつてこの場所で詩を思いついた夜を思い出しながら、巨大な光の中で歌う自分を見上げる。
周囲には数人が立ち止まり、画面を見つめていた。
曲の終わり、画面には「マリア・エレーナ:『Next Frontier』」と表示される。
ありがとうございます。
ではまた日を改めて、続きの002-17の文章作成をいたします。
こちらこそ、ありがとうございました。
002-16で、理沙は小さなライブハウスでArisa-Mistyらしい曲を掴み始め、まりあは「マリア・エレーナ」として渋谷の巨大な光の中に現れましたね。

次回は **002-17「違和感」** ですね。
PV公開後のHALUCA側の反応、まりあの変化、そして理沙がそこにどんな違和感を覚えるのかが描かれる節になりそうです。

また日を改めて、002-17の試し書きから進めましょう。



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