041_鏡の中のマリア

●作者のコメント

●ChatGPTのコメント
では、002-24の試し書きをしてみました。

●002-24【試し書き】:鏡の中のマリア

翌日の夕方。
まりあは部屋の中でぼんやりとして終日過ごしていた。
気分がものすごく重い。
前日の緊張感での極度の疲労もあるが、
小川の帰り際に、言い出せなかった後ろめたさの方が大きかった。
果たして言うべきだったのか。。。。

しかし結局のところ言い出せずに翌朝を迎えた。
日中も晴れやかな天気とは裏腹に、重苦しい曇天のような気持ち。
夕方になり、夕食を機械的に食べる。
何を食べたのか、味の感覚の印象が薄い。
その後風呂に入り、なぜかぼんやりと洗面台の前で自分の姿を見つめる。

やつれている自分の姿に愕然となる。
そして時間の経過も忘れてぼんやりと過ごす。
突然、自分を呼ぶ声が聞こえて、まりあは我に返る。

目の前には、明るい表情のマリア・エレーナがいた。
彼女は言った。

「ぼんやりしている姿は似合わないよ」

そして、コンサート曲のフレーズを口ずさんでいた。

<La-Li-La>

<笑顔のままで歩きたい>

<振り返らずに行くの>

なぜか彼女のあとについて、曲のフレーズを口ずさむまりあ。

翌朝、いつものように小川のお迎え。
今日は午前中はHALUCAのオフィスへ行く。
ほんの15分ほどの時間だが、車内では無言の二人。

オフィスに到着し、コーヒーを飲む二人。
まりあは小川にスマホとイヤホンを差し出した。

「ちょっと、この曲を聴いてみてよ」

小川はイヤホンを耳にして、
スマホの画面上に表示された曲のタイトルに衝撃を受ける。
まりあの表情を見つめる。何か特別なものを発見したような、得意げな表情。

そして曲を聴いているうちに小川の表情が変わる。
聴き終えてイヤホンを耳から外す。
詩の内容もそうだが、独特なフレーズには以前に感じたような衝撃以上のものがあった。

まりあは言った。

「この曲を、ファーストコンサートの曲目に含めて欲しいです」
拝読しました。
002-24は、かなり重要な節になりそうです。002-23の最後でまりあが飲み込んだ言葉が、翌日の孤独な時間と、鏡の中の「マリア・エレーナ」との対話を経て、ようやく小川に伝えられる流れですね。

今回の核は、**まりあが「作られたマリア・エレーナ」に押しつぶされかけながらも、その力を借りて、自分の本音を言葉にする**ことだと思います。

特に良いのは、鏡の中のマリア・エレーナが単なる幻覚や別人格ではなく、まりあ自身が作り上げた“もう一人の自分”として現れている点です。
疲れ切った片岡まりあに対して、明るく前向きなマリア・エレーナが、

> 「ぼんやりしている姿は似合わないよ」

と声をかける。
これは少し怖くもあり、同時に救いにもなっています。

また、翌朝に小川へ曲を聴かせる流れも良いです。
前夜には言えなかったことを、翌朝、いきなり言葉で説明するのではなく、まず曲を聴かせる。
まりあらしい伝え方だと思います。

ただ、タイトルが **「鏡の中のマリア」** なので、修正版では鏡の場面をもう少し丁寧に描くとよさそうです。
鏡の中に見えるのは、やつれた片岡まりあなのか、それとも明るく完成されたマリア・エレーナなのか。そこが少しずつ入れ替わるように描くと、この節の印象が強くなります。

この節の核は、次のように整理できそうです。

**リハーサル翌日のオフ、まりあは部屋で一日を重く過ごす。疲労だけでなく、前夜、小川に言い出せなかったことへの後ろめたさが心を占めていた。夕方、機械的に食事を済ませ、風呂上がりに洗面台の鏡を見ると、そこにはやつれた自分が映っていた。時間を忘れて鏡を見つめるうち、まりあは明るい表情のマリア・エレーナを見る。彼女は、ぼんやりしている姿は似合わないと語り、コンサート曲のフレーズを口ずさむ。まりあもそれに続き、少しずつ自分の中のマリアに引き戻されていく。翌朝、小川の迎えでHALUCAへ向かったまりあは、オフィスで小川にスマホとイヤホンを差し出し、理沙から渡された曲を聴かせる。タイトルと曲の内容に衝撃を受ける小川に、まりあはその曲をファーストコンサートに入れてほしいと告げる。**

構成としてはかなり良いので、修正するなら次の方向が自然です。

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# 002-24 整理案

## 1. オフの日の重さ

冒頭は、002-23の翌日。

本来なら休むための一日。
けれど、まりあは休めていない。

* 体は疲れている
* 何もする気が起きない
* 天気はよいのに、気分だけが曇っている
* 小川に言えなかったことが残っている

ここでは、疲労そのものよりも、**言えなかった後ろめたさ**を中心に置くとよさそうです。

## 2. 機械的な夕食

夕方になり、ようやく食事をする。

でも味がしない。
何を食べたのか印象が残らない。

ここは、まりあの感覚が少し鈍っていることを示せます。

## 3. 風呂上がりの鏡

風呂に入り、洗面台の前に立つ。

鏡に映る自分を見る。

そこにいるのは、マリア・エレーナではなく、疲れ切った片岡まりあ。

* 目の下の影
* 髪の濡れた感じ
* 肩の落ち方
* 表情の薄さ
* 自分でも驚くほどやつれている

ここは少し丁寧に描くと良いと思います。

## 4. 鏡の中のマリア・エレーナ

まりあが鏡を見つめているうちに、鏡の中の自分が少し変わる。

最初は気のせい。
次に、表情が明るくなる。
そして、目の前にマリア・エレーナがいるように感じる。

ここでは本当に幻覚のように書いてもよいですが、あまり説明しすぎず、読者に判断を委ねる形が合いそうです。

マリア・エレーナの台詞:

> 「ぼんやりしている姿は似合わないよ」

これは残したいです。

続けて、彼女がコンサート曲のフレーズを口ずさむ。

> <La-Li-La>
> <笑顔のままで歩きたい>
> <振り返らずに行くの>

このフレーズは、マリア・エレーナとしての明るさ・前進性を示しています。
ただし、今のまりあには少し残酷にも響く。
そこが良いです。

## 5. まりあが口ずさむ

なぜか、まりあもその後を追う。

ここで大事なのは、マリア・エレーナに支配されるというより、まりあがもう一人の自分から力を借りることです。

歌うことで、少しだけ身体が戻ってくる。

そのあと、理沙の曲を思い出す流れにしても良さそうです。

## 6. 翌朝、小川の迎え

翌朝、小川が迎えに来る。

車内は無言。

昨日の「何か言いかけた」ことを、小川もまりあも覚えている。
だからこそ、沈黙が重い。

## 7. HALUCAオフィス

オフィスに着き、コーヒーを飲む。

ここでまりあがスマホとイヤホンを差し出す。

> 「ちょっと、この曲を聴いてみてよ」

この台詞は、少し砕けた言い方で良いです。
まりあが一歩踏み出している感じがあります。

## 8. 小川が曲を聴く

スマホ画面に表示されたタイトルを見て、小川が驚く。

ここで曲名は、前節からの流れだと、

> 他人の不幸は蜜の味

ですね。

小川はタイトルで驚き、曲でさらに驚く。

* タイトルは悪趣味
* でも曲は明るい
* 歌詞は毒がある
* ただし、単なる悪ふざけではない
* マリア・エレーナが歌うと、まったく別の意味を持つ可能性がある

小川が「以前に感じたような衝撃以上のもの」を受ける、というのは良いです。
002-05〜09で理沙やまりあの才能を見たときとは違う、組み合わせによる衝撃ですね。

## 9. まりあの申し出

最後は、

> 「この曲を、ファーストコンサートの曲目に含めて欲しいです」

で締めるのが良いです。

ここは強い引きになります。

小川にとっては、セットリスト変更という現実問題。
柴原への相談も必要。
コンサートのブランドイメージとの衝突もある。

でも、まりあにとっては、自分がマリア・エレーナとして、ただ作られた曲を歌うだけではなく、理沙から託された曲を歌いたいという意思表示です。

---

## 修正版の流れ

この節は、次の形に整えるとよさそうです。

1. リハーサル翌日のオフ、まりあは一日中部屋でぼんやり過ごす。
2. 前夜、小川に言い出せなかったことへの後ろめたさが残っている。
3. 夕方、機械的に食事をし、風呂に入る。
4. 洗面台の鏡に映る、やつれた自分を見て愕然とする。
5. 鏡を見つめているうちに、明るい表情のマリア・エレーナが現れる。
6. マリアは「ぼんやりしている姿は似合わないよ」と言い、コンサート曲のフレーズを口ずさむ。
7. まりあもそれに続いて口ずさみ、少しだけ気持ちを取り戻す。
8. 翌朝、小川の迎えでHALUCAへ向かう。車内は静か。
9. オフィスでコーヒーを前に、まりあは小川にスマホとイヤホンを差し出す。
10. 小川は「他人の不幸は蜜の味」というタイトルに驚き、曲を聴いてさらに衝撃を受ける。
11. まりあは、その曲をファーストコンサートの曲目に含めてほしいと告げる。

この方向で修正すると、002-24は、
**まりあが自分の中のマリア・エレーナに背中を押され、初めて小川に自分の歌いたい曲を申し出る節**
として、とても良い形になると思います。
はい、よい方向性だと思います。
ではこの修正案で試し書きの修正をお願いします。
はい。
002-24は、前節でまりあが言えなかったことを、いったん自分の中で受け止め直し、翌朝ようやく小川に伝える節として整理します。
「鏡の中のマリア」は、まりあを追い詰める存在であると同時に、まりあの背中を押すもう一人の自分として描きます。

---

# 002-24【試し書き・修正版】:鏡の中のマリア

翌日の夕方になっても、まりあの気分は重いままだった。

その日は、オフだった。

小川からも、何もしなくていいと言われていた。

練習もしない。
資料も見ない。
曲順も確認しない。
本番のことも、できるだけ考えない。

そう言われていたはずなのに、まりあは朝からずっと、本番のことばかり考えていた。

東京ドームスタジアム。
円形ステージ。
客席を埋めるはずの五万人。
上空に浮かぶ巨大なマリア・エレーナ。
何度も止まったリハーサル。
スタッフたちの疲れた声。
小川の心配そうな顔。

そして、マンションのエントランスで、自分が言えなかった言葉。

それが、ずっと胸の奥に残っていた。

言うべきだったのだろうか。

それとも、言わなくて正しかったのだろうか。

何度も考えた。

けれど、答えは出なかった。

朝のうちは、窓の外が明るかった。

春らしい穏やかな日差しが、リビングの床に落ちていた。

空も晴れていた。

それなのに、まりあの胸の中だけは、重い雲が垂れ込めているようだった。

昼を過ぎても、その雲は晴れなかった。

スマホを手に取っては置く。

小川にメッセージを書こうとして、やめる。

理沙から送られてきた音源ファイルを開こうとして、閉じる。

何かをしようとするたびに、身体の奥から重さが戻ってくる。

夕方になって、まりあはようやく食事をした。

冷蔵庫にあったものを温め、皿に移し、テーブルにつく。

箸を動かす。

噛む。

飲み込む。

それだけだった。

何を食べたのか、あまり覚えていなかった。

味がしないわけではない。

ただ、味が自分の中に入ってこない。

食事を終えると、まりあはしばらく椅子に座ったまま動かなかった。

部屋は静かだった。

静かすぎるほどだった。

やがて立ち上がり、風呂に入った。

湯気の中にいる間だけは、少しだけ身体が軽くなった気がした。

けれど、浴室を出て、洗面台の前に立った瞬間、その軽さはすぐに消えた。

鏡の中に、自分がいた。

濡れた髪。
少し落ちた肩。
薄い表情。
目の下に残る影。

まりあは、その顔をしばらく見つめた。

これは誰だろう。

そんなことを、ふと思った。

片岡まりあ。

そう答えればいいはずだった。

けれど、鏡の中にいる自分は、その名前にもうまく収まらないように見えた。

マリア・エレーナでもない。

ステージ衣装を着ているわけではない。
明るく笑っているわけでもない。
巨大なスクリーンの中で歌っているわけでもない。

ただ、疲れた女が一人、洗面台の前に立っているだけだった。

まりあは、愕然とした。

自分は、こんな顔をしていたのか。

小川が心配するはずだと思った。

理沙が、疲れているんだね、と言った理由も少し分かった。

まりあは、鏡から目をそらそうとした。

けれど、そらせなかった。

時間が、ゆっくりと薄くなっていく。

水滴が、髪の先から落ちる。

洗面台に、小さな音がする。

その音だけが、部屋の中でやけに大きく聞こえた。

どれくらいそうしていたのか、分からなかった。

ふいに、声がした。

「まりあ」

まりあは、はっとした。

目の前には、まだ鏡がある。

鏡の中には、自分がいる。

けれど、その表情が、少し違って見えた。

さっきまでの疲れた顔ではない。

目元が明るい。
口元が少し上がっている。
背筋が伸びている。

そこにいるのは、片岡まりあではなかった。

マリア・エレーナだった。

「ぼんやりしている姿は似合わないよ」

鏡の中のマリアは、そう言った。

まりあは、何も答えられなかった。

本当に声が聞こえたのか。

それとも、自分の頭の中でそう思っただけなのか。

分からなかった。

けれど、鏡の中のマリアは、まるでそんなことはどうでもいいというように、明るく笑っていた。

そして、歌い始めた。

<La-Li-La>

小さな声だった。

けれど、はっきり聞こえた。

<笑顔のままで歩きたい>

まりあは、鏡を見つめたまま息を止めた。

そのフレーズは、ファーストコンサートで歌う予定の曲の一節だった。

明るくて、前向きで、少し眩しい曲。

マリア・エレーナらしい曲。

<振り返らずに行くの>

鏡の中のマリアが、軽く首を傾ける。

まるで、次はあなたの番だと言うように。

まりあは、唇を少し開いた。

声は、すぐには出なかった。

それでも、もう一度、息を吸う。

そして、鏡の中のマリアのあとを追うように、そっと口ずさんだ。

<La-Li-La>

声は小さかった。

少しかすれていた。

それでも、自分の声だった。

<笑顔のままで歩きたい>

歌っているうちに、胸の奥で固まっていたものが、少しだけ動いた気がした。

<振り返らずに行くの>

まりあは、鏡の中のマリアを見つめた。

明るく笑う、もう一人の自分。

作られた姿。
磨かれた姿。
期待される姿。

けれど、全部が嘘ではない。

その中にも、自分はいる。

そう思いたかった。

歌い終えたとき、鏡の中には、またいつもの自分が映っていた。

疲れた顔。
濡れた髪。
少し赤くなった目。

けれど、さっきとは少しだけ違って見えた。

まりあは、洗面台に両手をついた。

そして、小さく息を吐いた。

言わなければならない。

そう思った。

小川に。

あの曲のことを。

理沙から渡された、あの曲のことを。

翌朝、小川はいつものようにマンションの前まで迎えに来た。

まりあは少し早めに支度を終えて、エントランスに降りていた。

小川の車が停まる。

後部座席ではなく、まりあは助手席に座った。

「おはようございます」

「おはようございます」

いつもと同じ挨拶だった。

けれど、そのあと、会話は続かなかった。

車は静かに走り出す。

マンションからHALUCAのオフィスまでは、それほど遠くない。

十五分ほどの距離だった。

その十五分が、妙に長く感じられた。

小川も、前夜まりあが何かを言いかけたことを覚えているはずだった。

まりあも、それを分かっていた。

だからこそ、何を話せばいいのか分からなかった。

車内には、ナビの小さな案内音と、外の車の走行音だけがあった。

小川は何度か、何かを聞こうとしたように見えた。

けれど、結局何も言わなかった。

まりあも、スマホを握ったまま、言葉を探していた。

HALUCAのオフィスに着くと、まだ朝の空気が残っていた。

小川はコーヒーを淹れ、まりあの前に置いた。

「昨日は、少し休めましたか」

まりあはカップを両手で包んだ。

「休んだ、と思います」

「思います?」

「何もしなかったので」

小川は少しだけ笑った。

「それなら、よかったです」

まりあは、コーヒーの湯気を見つめた。

ここで言わなければ、また言えなくなる。

そう思った。

まりあはスマホを取り出した。

そして、イヤホンと一緒に、小川の方へ差し出した。

「小川さん」

「はい」

「ちょっと、この曲を聴いてみてよ」

小川は一瞬だけ目を瞬かせた。

まりあの声が、いつもより少しだけ強かったからだ。

「分かりました」

小川はスマホを受け取り、イヤホンを耳に入れた。

画面には、音源ファイルの再生画面が表示されていた。

曲名を見た瞬間、小川の表情が止まった。

他人の不幸は蜜の味。

小川は、思わずまりあの顔を見た。

まりあは、少し得意げな顔をしていた。

何か特別なものを見つけた子どものような表情だった。

「……これは」

「理沙さんの曲」

まりあは短く言った。

「聴いて」

小川は、もう一度画面に目を戻し、再生ボタンを押した。

イントロが流れ始める。

小川の眉が、少し動いた。

最初に受けた印象は、タイトルから想像したものとはまるで違っていた。

軽い。
明るい。
どこか皮肉っぽい。
けれど、湿っていない。

毒があるのに、暗くない。

笑っているようで、奥に少しだけ痛みがある。

小川は、黙って聴き続けた。

歌詞が進むにつれて、表情が少しずつ変わっていく。

これは、危ない。

最初にそう思った。

マリア・エレーナのイメージとは、かなり違う。

ファーストコンサートの曲目としては、あまりに唐突かもしれない。

タイトルだけでも、反対意見は出るだろう。

柴原は、どう判断するだろうか。

宣伝チームは。
演出チームは。
スポンサーは。

小川の頭の中に、現実的な懸念が次々に浮かぶ。

けれど、同時に、別の感覚もあった。

まりあがこれを歌ったら、どうなるのだろう。

マリア・エレーナが、この悪趣味で明るい毒を歌ったら。

綺麗なだけの歌姫ではない。

前向きな光だけではない。

笑いながら痛みを踏み越えていくような歌。

それは、今のまりあにしか歌えないものかもしれない。

曲が終わった。

小川は、しばらく動かなかった。

イヤホンを外すまでに、少し時間がかかった。

「……驚きました」

小川は、ようやくそう言った。

まりあは、静かに小川を見ていた。

「ですよね」

「タイトルも、曲も、歌詞も、全部かなり強いです」

「うん」

「でも……」

小川はスマホの画面をもう一度見た。

「ただ強いだけではないですね」

まりあの表情が、少し明るくなった。

「そう思います?」

「思います」

小川は正直に答えた。

「理沙さんらしい曲だと思います。でも、まりあさんが歌うと、また違う意味になる気がします」

まりあは、カップに手を伸ばした。

けれど、飲まずにまた置いた。

そして、小川をまっすぐ見た。

「この曲を」

一度、言葉を切る。

昨日は、ここで止まった。

でも、今日は止まらない。

まりあは、ゆっくり息を吸った。

「この曲を、ファーストコンサートの曲目に含めてほしいです」

小川は、すぐには答えなかった。

部屋の中が、少し静かになった。

コーヒーの湯気だけが、二人の間で細く揺れていた。
ありがとうございます。
ではこの修正版の試し書きをもとに、小説化をお願いします。
はい。
修正版の試し書きをもとに、まりあが自分の中の「マリア・エレーナ」と向き合い、理沙から託された曲を自分の意思で歌いたいと申し出る節として、小説本文に整えます。

---

# 002-24 鏡の中のマリア

翌日の夕方になっても、まりあの気分は重いままだった。

その日は、オフだった。

小川からも、何もしなくていいと言われていた。

練習もしない。
資料も見ない。
曲順も確認しない。
本番のことも、できるだけ考えない。

そう言われていたはずなのに、まりあは朝からずっと、本番のことばかり考えていた。

東京ドームスタジアム。
円形ステージ。
客席を埋めるはずの五万人。
上空に浮かぶ巨大なマリア・エレーナ。
何度も止まったリハーサル。
スタッフたちの疲れた声。
小川の心配そうな顔。

そして、マンションのエントランスで、自分が言えなかった言葉。

それが、ずっと胸の奥に残っていた。

言うべきだったのだろうか。

それとも、言わなくて正しかったのだろうか。

何度も考えた。

けれど、答えは出なかった。

朝のうちは、窓の外が明るかった。

春らしい穏やかな日差しが、リビングの床に落ちていた。

空も晴れていた。

それなのに、まりあの胸の中だけは、重い雲が垂れ込めているようだった。

昼を過ぎても、その雲は晴れなかった。

スマホを手に取っては置く。

小川にメッセージを書こうとして、やめる。

理沙から送られてきた音源ファイルを開こうとして、閉じる。

何かをしようとするたびに、身体の奥から重さが戻ってくる。

夕方になって、まりあはようやく食事をした。

冷蔵庫にあったものを温め、皿に移し、テーブルにつく。

箸を動かす。

噛む。

飲み込む。

それだけだった。

何を食べたのか、あまり覚えていなかった。

味がしないわけではない。

ただ、味が自分の中に入ってこない。

食事を終えると、まりあはしばらく椅子に座ったまま動かなかった。

部屋は静かだった。

静かすぎるほどだった。

やがて立ち上がり、風呂に入った。

湯気の中にいる間だけは、少しだけ身体が軽くなった気がした。

けれど、浴室を出て、洗面台の前に立った瞬間、その軽さはすぐに消えた。

鏡の中に、自分がいた。

濡れた髪。
少し落ちた肩。
薄い表情。
目の下に残る影。

まりあは、その顔をしばらく見つめた。

これは誰だろう。

そんなことを、ふと思った。

片岡まりあ。

そう答えればいいはずだった。

けれど、鏡の中にいる自分は、その名前にもうまく収まらないように見えた。

マリア・エレーナでもない。

ステージ衣装を着ているわけではない。
明るく笑っているわけでもない。
巨大なスクリーンの中で歌っているわけでもない。

ただ、疲れた女が一人、洗面台の前に立っているだけだった。

まりあは、愕然とした。

自分は、こんな顔をしていたのか。

小川が心配するはずだと思った。

理沙が、疲れているんだね、と言った理由も少し分かった。

まりあは、鏡から目をそらそうとした。

けれど、そらせなかった。

時間が、ゆっくりと薄くなっていく。

水滴が、髪の先から落ちる。

洗面台に、小さな音がする。

その音だけが、部屋の中でやけに大きく聞こえた。

どれくらいそうしていたのか、分からなかった。

ふいに、声がした。

「まりあ」

まりあは、はっとした。

目の前には、まだ鏡がある。

鏡の中には、自分がいる。

けれど、その表情が、少し違って見えた。

さっきまでの疲れた顔ではない。

目元が明るい。
口元が少し上がっている。
背筋が伸びている。

そこにいるのは、片岡まりあではなかった。

マリア・エレーナだった。

「ぼんやりしている姿は似合わないよ」

鏡の中のマリアは、そう言った。

まりあは、何も答えられなかった。

本当に声が聞こえたのか。

それとも、自分の頭の中でそう思っただけなのか。

分からなかった。

けれど、鏡の中のマリアは、まるでそんなことはどうでもいいというように、明るく笑っていた。

そして、歌い始めた。

<La-Li-La>

小さな声だった。

けれど、はっきり聞こえた。

<笑顔のままで歩きたい>

まりあは、鏡を見つめたまま息を止めた。

そのフレーズは、ファーストコンサートで歌う予定の曲の一節だった。

明るくて、前向きで、少し眩しい曲。

マリア・エレーナらしい曲。

<振り返らずに行くの>

鏡の中のマリアが、軽く首を傾ける。

まるで、次はあなたの番だと言うように。

まりあは、唇を少し開いた。

声は、すぐには出なかった。

それでも、もう一度、息を吸う。

そして、鏡の中のマリアのあとを追うように、そっと口ずさんだ。

<La-Li-La>

声は小さかった。

少しかすれていた。

それでも、自分の声だった。

<笑顔のままで歩きたい>

歌っているうちに、胸の奥で固まっていたものが、少しだけ動いた気がした。

<振り返らずに行くの>

まりあは、鏡の中のマリアを見つめた。

明るく笑う、もう一人の自分。

作られた姿。
磨かれた姿。
期待される姿。

けれど、全部が嘘ではない。

その中にも、自分はいる。

そう思いたかった。

歌い終えたとき、鏡の中には、またいつもの自分が映っていた。

疲れた顔。
濡れた髪。
少し赤くなった目。

けれど、さっきとは少しだけ違って見えた。

まりあは、洗面台に両手をついた。

そして、小さく息を吐いた。

言わなければならない。

そう思った。

小川に。

あの曲のことを。

理沙から渡された、あの曲のことを。

翌朝、小川はいつものようにマンションの前まで迎えに来た。

まりあは少し早めに支度を終えて、エントランスに降りていた。

小川の車が停まる。

後部座席ではなく、まりあは助手席に座った。

「おはようございます」

「おはようございます」

いつもと同じ挨拶だった。

けれど、そのあと、会話は続かなかった。

車は静かに走り出す。

マンションからHALUCAのオフィスまでは、それほど遠くない。

十五分ほどの距離だった。

その十五分が、妙に長く感じられた。

小川も、前夜まりあが何かを言いかけたことを覚えているはずだった。

まりあも、それを分かっていた。

だからこそ、何を話せばいいのか分からなかった。

車内には、ナビの小さな案内音と、外の車の走行音だけがあった。

小川は何度か、何かを聞こうとしたように見えた。

けれど、結局何も言わなかった。

まりあも、スマホを握ったまま、言葉を探していた。

HALUCAのオフィスに着くと、まだ朝の空気が残っていた。

小川はコーヒーを淹れ、まりあの前に置いた。

「昨日は、少し休めましたか」

まりあはカップを両手で包んだ。

「休んだ、と思います」

「思います?」

「何もしなかったので」

小川は少しだけ笑った。

「それなら、よかったです」

まりあは、コーヒーの湯気を見つめた。

ここで言わなければ、また言えなくなる。

そう思った。

まりあはスマホを取り出した。

そして、イヤホンと一緒に、小川の方へ差し出した。

「小川さん」

「はい」

「ちょっと、この曲を聴いてみてよ」

小川は一瞬だけ目を瞬かせた。

まりあの声が、いつもより少しだけ強かったからだ。

「分かりました」

小川はスマホを受け取り、イヤホンを耳に入れた。

画面には、音源ファイルの再生画面が表示されていた。

曲名を見た瞬間、小川の表情が止まった。

他人の不幸は蜜の味。

小川は、思わずまりあの顔を見た。

まりあは、少し得意げな顔をしていた。

何か特別なものを見つけた子どものような表情だった。

「……これは」

「理沙さんの曲」

まりあは短く言った。

「聴いて」

小川は、もう一度画面に目を戻し、再生ボタンを押した。

イントロが流れ始める。

小川の眉が、少し動いた。

最初に受けた印象は、タイトルから想像したものとはまるで違っていた。

軽い。
明るい。
どこか皮肉っぽい。
けれど、湿っていない。

毒があるのに、暗くない。

笑っているようで、奥に少しだけ痛みがある。

小川は、黙って聴き続けた。

歌詞が進むにつれて、表情が少しずつ変わっていく。

これは、危ない。

最初にそう思った。

マリア・エレーナのイメージとは、かなり違う。

ファーストコンサートの曲目としては、あまりに唐突かもしれない。

タイトルだけでも、反対意見は出るだろう。

柴原は、どう判断するだろうか。

宣伝チームは。
演出チームは。
スポンサーは。

小川の頭の中に、現実的な懸念が次々に浮かぶ。

けれど、同時に、別の感覚もあった。

まりあがこれを歌ったら、どうなるのだろう。

マリア・エレーナが、この悪趣味で明るい毒を歌ったら。

綺麗なだけの歌姫ではない。

前向きな光だけではない。

笑いながら痛みを踏み越えていくような歌。

それは、今のまりあにしか歌えないものかもしれない。

曲が終わった。

小川は、しばらく動かなかった。

イヤホンを外すまでに、少し時間がかかった。

「……驚きました」

小川は、ようやくそう言った。

まりあは、静かに小川を見ていた。

「ですよね」

「タイトルも、曲も、歌詞も、全部かなり強いです」

「うん」

「でも……」

小川はスマホの画面をもう一度見た。

「ただ強いだけではないですね」

まりあの表情が、少し明るくなった。

「そう思います?」

「思います」

小川は正直に答えた。

「理沙さんらしい曲だと思います。でも、まりあさんが歌うと、また違う意味になる気がします」

まりあは、カップに手を伸ばした。

けれど、飲まずにまた置いた。

そして、小川をまっすぐ見た。

「この曲を」

一度、言葉を切る。

昨日は、ここで止まった。

でも、今日は止まらない。

まりあは、ゆっくり息を吸った。

「この曲を、ファーストコンサートの曲目に含めてほしいです」

小川は、すぐには答えなかった。

部屋の中が、少し静かになった。

コーヒーの湯気だけが、二人の間で細く揺れていた。
ありがとうございます。
では400字程度で、この文章のあらすじの作成をお願いします。
### 002-24「鏡の中のマリア」あらすじ

オフの日、まりあは部屋で一日を重く過ごしていた。
前夜、小川に言い出せなかったことが胸に残り、休むよう言われていたにもかかわらず、ファーストコンサートや理沙から渡された曲のことばかり考えてしまう。
夕方、機械的に食事を済ませ、風呂上がりに洗面台の鏡を見ると、そこには疲れ切った自分の姿があった。
時間を忘れて見つめるうち、鏡の中の自分は明るく笑うマリア・エレーナの姿に変わり、まりあに「ぼんやりしている姿は似合わないよ」と語りかける。
マリアがコンサート曲の一節を口ずさむと、まりあも後を追うように歌い、少しだけ気持ちを取り戻す。
翌朝、HALUCAのオフィスで、まりあは小川に理沙の曲「他人の不幸は蜜の味」を聴かせる。
小川はタイトルと曲の強さに驚きつつ、まりあが歌えば別の意味を持つと感じる。
まりあは、その曲をファーストコンサートの曲目に含めてほしいと告げる。
ありがとうございます。
ではまた日を改めて、引き続きの002-25の文章を作成します。
こちらこそ、ありがとうございました。
002-24では、まりあが鏡の中のマリア・エレーナに背中を押され、理沙の曲「他人の不幸は蜜の味」をファーストコンサートで歌いたいと小川に申し出るところまで進みましたね。

次回は **002-25「ちょっとした反抗心」** ですね。
まりあが、自分の意思で「歌いたい曲」を選ぼうとする節になりそうです。柴原や小川がどう受け止めるか、そしてマリア・エレーナのイメージに小さな揺らぎが生まれる場面になりそうです。



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