046_悲しい事があっても(2)

●作者のコメント

●ChatGPTのコメント
では、002-29の試し書きをしてみました。

●002-29【試し書き】:悲しい事があっても(2)

ライブ後の打ち上げが終わり、理沙が帰宅したのは夜中の2時。
Arisa-Mistyのメンバー4人で久しぶりに気持ちのいい酒を飲む。
バンド活動はしばらくの間休止になるが、その間は何をしようかという話題になる。
理沙以外の3人は昼間の仕事があるので、しばらくの間は仕事に集中し、
時々は、腕が落ちないように個別に練習に励む。

理沙が以前に思いついた、マリア・エレーナのバックバンドになるという案は、
まだ柴原と小川には話していない。
ファーストライブが成功裏に終わったら、理沙が交渉することになっていた。
まずは、早くファーストライブの感想をまりあから聞きたいものだと、理沙は思っていた。

帰宅すると、どっと疲れが出る。
シャワーを浴びて、居間のソファーに座ると動きたくなくなるほどだった。
なにげに壁面ディスプレイをつけると、ちょうど事故のニュースだった。
自動運転モードの乗用車が暴走して、何台かの車に激突。
暴走した乗用車の運転手、そして衝突された車に乗っていた人含め、ほとんどの人が即死か重体。
最近目立って増えてきている事故だった。
以前は、高齢者の誤操作での事故が多発していたが、その誤操作を防ぐための自動運転車の事故が、
昨今は社会問題になろうとしていた。

眠くて我慢できなくなったので、ディスプレイ画面を消してベッドに横になる。
先ほどの事故の事故現場が、まりあの家から比較的近い場所というのが微妙に気になる。

翌朝、というか昼近くに理沙は目覚める。
今日は日曜日なので、何もせずに過ごしてもいいやと思いコーヒーを入れる準備をする。
スマホに目を向けると、着信の履歴が。
朝の7時に小川から電話があったようである。鳴っていたのに気づかないほどに寝ていたようだ。
何があったのかと小川に電話してみる。話し中。
再びキッチンに行き、コーヒーを入れ始めるとスマホの着信音。小川からだった。

自分でも酷いと思えるほどのガラガラ声だった。
小川は、いつもよりもテンションの低い声だった。
何かあったのかと理沙は尋ねる。
しばらくの間が。

「まりあさんが。。。。」

そのあとの言葉が、まるで別世界の出来事のように思えてしまう。
聞こえてはいるのだが、頭に残ってこない。
胸やけのような、吐き気が徐々にこみあげてくる。
意識がもうろうとしてくる。

「わかりました」

小川の説明が一段落すると、理沙はようやく言葉が出た。
また連絡すると小川は言い、会話は終わる。

茫然とした状態で、天井を眺める。
眩暈がしてきた。
よろよろと立ち上がりさきほど入れたコーヒーを取りにキッチンへ。
その後しばらく考えをまとめてから、湯浅とフィリップと島崎に短いメールを入れる。

<まりあさんは、昨夜の自動車事故で瀕死の状態になって、今朝亡くなりました>

ベッドに横になる。
メッセージに反応があったのか、スマホが小さく何度か鳴る。
でも、出る気になれない。

そのまま日曜日を過ごし、寝ているのか寝ていないのかわからない夜を過ごし、
月曜日は普段通りに仕事に行く。
電車の中でようやくスマホのメッセージを眺めたが、見ていて頭が痛くなる。

そして気の抜けた風船のような心境で淡々と仕事をする。
お昼過ぎに再び小川から電話があり、15分ほど会話をする。
昨日よりもまともな声で、小川の淡々とした説明に反応する。
そして、火曜日の夕方に「HALUCA」のオフィスで会う約束をする。
拝読しました。
002-29は、002-28の最後に小川へ入った電話の結果を、**理沙側の遅れた認識**として描く節ですね。とても自然で、かなり重い節になっています。

特に良いのは、理沙がその場で事故を知るのではなく、いったん夜中にニュースとして目にしている点です。
その時点では「まりあの家に近い場所だな」と少し気になるだけで、まさか当事者とは思わない。翌朝、小川からの着信で初めて現実になる。この二段階の構成が、かなり効いています。

また、理沙の反応も良いです。
大声で泣くのではなく、言葉が頭に残らない、吐き気がする、天井を眺める、コーヒーを取りに行く、短いメールを打つ、スマホが鳴っても出ない。こういう描写の方が、突然の死を知ったときの現実感が出ています。

この節の核は、次のように整理できそうです。

**Arisa-Mistyのラストライブ後、理沙は湯浅たちと打ち上げをし、今後のことを話し合ってから深夜に帰宅する。疲れ切ってテレビをつけると、自動運転車の暴走事故のニュースが流れていた。事故現場がまりあの住まいに近いことが少し気になるが、理沙は深く考えず眠る。翌昼近くに目覚めると、小川から朝に着信があったことに気づく。折り返してもつながらず、やがて小川から電話が来る。そこで理沙は、まりあが昨夜の事故で瀕死となり、今朝亡くなったことを知らされる。現実感を失った理沙は、湯浅、フィリップ、島崎へ短いメールを送り、そのまま何もできず日曜を過ごす。月曜は普段通り仕事に行くが、心は空っぽのままだった。昼過ぎに再び小川から電話があり、理沙は火曜夕方にHALUCAのオフィスで会う約束をする。**

かなり良い流れです。修正するなら、以下の方向が自然だと思います。

---

# 002-29 整理案

## 1. 打ち上げの余韻から始める

冒頭は、ライブ後の打ち上げから入るのが良いです。

ただし、ここは長くしすぎず、幸せな疲労感と、今後への少し前向きな話を見せる程度がよさそうです。

* 久しぶりに気持ちよく飲んだ
* バンドは休止するが、解散ではない
* 三人は昼の仕事と個人練習を続ける
* 理沙は、マリア・エレーナのバックバンド案をまだ柴原と小川に話していない
* ファーストライブが終わったら、まりあから感想を聞きたいと思う

ここで「まだ続く未来がある」と思わせておくと、その後の落差が大きくなります。

## 2. 深夜の事故ニュース

帰宅後、理沙が壁面ディスプレイをつける。

そこで自動運転車の暴走事故のニュースを見る。

ここで大事なのは、事故の説明を社会背景として入れつつ、長くなりすぎないことです。

* 自動運転モード中の車が暴走
* 複数台に衝突
* 死傷者多数
* 近年、誤操作を防ぐはずの自動運転車事故が社会問題化している

この社会問題化の描写は、SF近未来らしさが出て良いです。
ただし、この節ではまりあの死が中心なので、説明は少し抑えめでもよさそうです。

## 3. 「まりあの家に近い」が引っかかる

理沙は眠気で画面を消すが、事故現場がまりあの家に近いことだけが少し気になる。

ここは非常に良い伏線です。

この時点では、理沙自身も「まさか」とまでは思っていない。
ただ、心の端に残る程度が良いと思います。

## 4. 翌朝ではなく昼近くに目覚める

ラストライブ後なので、昼近くに目覚めるのは自然です。

ここで、日曜日だから何もしなくていい、コーヒーを入れようとする、という日常の動きを入れる。

その日常の中で、小川からの着信に気づく。

この「普通の日曜日」が一気に壊れる感じが良いです。

## 5. 小川からの電話

小川の声は、いつもの落ち着いた声ではない。

ただ、泣き叫ぶのではなく、低く、疲れ切っている。

理沙も寝起きで声がかすれている。

この電話は、あまり説明しすぎない方が効きます。

たとえば、

> 「まりあさんが……」
>
> そこで小川の声が、一度途切れた。

のように、間を置くと良いです。

事故の詳細はここで全部説明せず、理沙の頭に入ってこない描写を優先すると、ショックが伝わります。

## 6. 理沙の身体反応

ここはかなり良いです。

* 聞こえているが頭に残らない
* 胸やけのような吐き気
* 意識がぼんやりする
* 「わかりました」しか言えない
* 天井を見る
* 眩暈
* コーヒーを取りに行く

悲しみの前に、体が現実を拒絶している感じが出ます。

## 7. 三人へのメール

短いメールは、このままで良いと思います。

> <まりあさんは、昨夜の自動車事故で瀕死の状態になって、今朝亡くなりました>

少しだけ整えるなら、

> <まりあさんが、昨夜の自動車事故で重傷を負い、今朝亡くなりました>

の方が自然かもしれません。

「瀕死の状態になって」はやや説明的なので、小説文としては「重傷を負い」の方が落ち着きます。
ただし、理沙が動揺したまま送った文面としては、少し不自然な硬さがあっても成立します。

## 8. スマホが鳴っても出ない

とても良いです。

三人から反応が来ているのに、理沙は出られない。

ここで「出たくない」ではなく「出る気になれない」とするのが自然です。
悲しみよりも先に、何も受け止められない状態です。

## 9. 月曜日に普通に仕事へ行く

ここも重要です。

日曜日に崩れたあと、月曜日に普段通り会社へ行く。
この「普段通り」が逆に痛いです。

* 電車の中でようやくメッセージを見る
* 頭が痛くなる
* 気の抜けた風船のように仕事をする

ここは、第2章のテーマである「現実の生活は続く」ともつながります。

## 10. 小川との再連絡とHALUCA訪問の約束

月曜昼過ぎ、小川から再び電話。

前日よりは声が整っている。

淡々と説明する。

理沙は火曜夕方にHALUCAへ行く約束をする。

ここで002-30または002-29後半の展開へ接続できます。

ただ、節タイトルが「悲しい事があっても(2)」なので、この節の終わりとしては、
**理沙がHALUCAに行く約束をする**
でちょうど良いと思います。

---

## 修正版の流れ

この節は、次の形に整えるとよさそうです。

1. Arisa-Mistyのラストライブ後、四人は打ち上げをする。
2. バンド休止中の過ごし方や、マリア・エレーナのバックバンド案について話す。
3. 理沙は、ファーストライブ後にまりあから感想を聞きたいと思う。
4. 深夜二時、帰宅した理沙は疲れ切って壁面ディスプレイをつける。
5. 自動運転車の暴走事故のニュースを見る。
6. 事故現場がまりあの家に近いことが少し気になるが、眠気に負けて寝る。
7. 昼近くに目覚め、小川から朝七時に着信があったことに気づく。
8. 折り返してもつながらず、コーヒーを入れようとしたところで小川から電話が来る。
9. 小川から、まりあが昨夜の事故で亡くなったことを知らされる。
10. 理沙は現実感を失い、吐き気や眩暈を覚える。
11. 湯浅、フィリップ、島崎へ短いメールを送る。
12. 三人から反応が来ても、理沙は出られない。
13. 日曜をぼんやり過ごし、月曜は普段通り出社する。
14. 昼過ぎ、小川から再び電話があり、火曜夕方にHALUCAで会う約束をする。

この方向で修正すると、002-29は、
**美しいコンサートの翌日に、理沙が遅れてまりあの死を知る節**
として、とても重く、静かな形になると思います。
はい、それでよいと思います。
ではこの修正案で、試し書きの修正をお願いします。
はい。
002-29は、理沙が「まりあの死」を少し遅れて知る節として、前半にラストライブ後の余韻、後半に現実感を失っていく理沙の反応を置く形で整理します。

---

# 002-29【試し書き・修正版】:悲しい事があっても(2)

ライブ後の打ち上げが終わり、理沙が帰宅したのは夜中の二時を少し過ぎたころだった。

久しぶりに、気持ちのいい酒だった。

Arisa-Mistyの四人で、よく飲み、よく笑った。

ラストライブは終わった。

バンド活動は、しばらく休止になる。

けれど、解散ではない。

そのことを、四人とも何度も確かめるように口にした。

「しばらくは、昼の仕事やな」

湯浅がそう言うと、フィリップが少し大げさにため息をついた。

「仕事だけの生活、つまらないね」

「でも、練習はしないと」

島崎が、眠そうな顔で言った。

「腕が落ちたら、戻るとき困ります」

「そうだね」

理沙は笑った。

「私も、歌わなくなるわけじゃないし」

活動休止中、湯浅たちは昼間の仕事に集中することになる。

それでも、完全に音楽から離れるつもりはなかった。

個人練習は続ける。
時々は集まる。
また何か面白いことがあれば、そのとき考える。

そんな話を、何度もした。

理沙が前に思いついた、三人がマリア・エレーナのバックバンドになるという案は、まだ柴原にも小川にも話していない。

まりあのファーストコンサートが無事に終わったら、理沙が改めて話をすることになっていた。

そのためにも、まずはコンサートの感想を聞きたい。

まりあは、どんな顔で話すだろう。

「すごかったです」と、少し照れたように笑うだろうか。

それとも、「もう二度とやりたくないです」と、疲れた声で言うだろうか。

どちらにしても、早く聞きたかった。

帰宅した途端、身体の奥から疲れが出てきた。

玄関で靴を脱ぎ、バッグを置く。

部屋の明かりをつけると、それだけで一日が終わったような気がした。

理沙はシャワーを浴び、髪をざっと乾かした。

そのまま寝てもよかった。

けれど、すぐにベッドへ入る気にもなれなかった。

居間のソファーに腰を下ろす。

身体が沈み込む。

もう動きたくない。

そう思いながら、なにげなく壁面ディスプレイをつけた。

深夜のニュース番組が流れていた。

画面の中では、夜の道路が映っていた。

赤い回転灯。
横転した車。
潰れたフロント部分。
道路に散らばった破片。

字幕には、自動運転車による多重衝突事故、と出ていた。

自動運転モードで走行していた乗用車が、突然制御不能になり、複数の車両に衝突したらしい。

運転手と、巻き込まれた車の乗員の多くが、即死または重体。

アナウンサーは、落ち着いた声で説明していた。

近年、自動運転車の事故は目立って増えていた。

かつては、高齢者の誤操作による事故が社会問題になっていた。

その誤操作を防ぐために普及したはずの自動運転車が、今度は別の形で人を巻き込む。

皮肉な話だと、専門家がコメントしていた。

理沙は、ぼんやりと画面を見ていた。

疲れていた。

内容は耳に入っているが、深く考えるほどの力は残っていない。

ただ、事故現場の地名だけが、少し引っかかった。

まりあのマンションから、そう遠くない場所だった。

偶然だろう。

そう思った。

東京で事故が起これば、誰かの家の近くにはなる。

それに、まりあは今日はスタッフに送られて帰るはずだ。

柴原や小川が、そこまで無防備にするとも思えない。

理沙は、ディスプレイを消した。

部屋が静かになる。

眠気が、一気に押し寄せてきた。

ベッドに横になると、すぐに意識が沈んでいった。

翌朝。

というより、昼近くになって、理沙は目を覚ました。

カーテンの隙間から、明るい光が入っている。

日曜日だった。

今日は、何もしなくていい。

そう思うと、少しだけ気が楽になった。

理沙はゆっくり起き上がり、キッチンへ向かった。

コーヒーを入れようとして、ふとスマホを見る。

着信履歴があった。

朝の七時。

小川美奈。

理沙は、しばらく画面を見つめた。

鳴っていたのだろう。

けれど、まったく気づかなかった。

それほど深く眠っていたらしい。

何だろう。

ファーストコンサートの報告だろうか。

それにしては、朝七時は少し早い。

理沙は、その場で折り返した。

呼び出し音は鳴らなかった。

話し中だった。

理沙は、スマホを見つめる。

嫌な感じがした。

けれど、それが何なのか分からない。

しばらく待っても、折り返しはない。

理沙はキッチンに戻り、コーヒーを入れ始めた。

粉をセットする。
水を注ぐ。
スイッチを入れる。

いつもの動作のはずなのに、少し手元が落ち着かなかった。

コーヒーの香りが立ち始めたころ、スマホが鳴った。

小川からだった。

理沙はすぐに出た。

「もしもし」

自分でもひどいと思うほど、声がかすれていた。

寝起きのせいだけではない気がした。

電話の向こうで、小川が小さく息を吸う音がした。

「大嶋さん」

いつもの小川の声ではなかった。

低い。

疲れている。

それでも、必死に形を保っているような声だった。

「はい。どうしました?」

理沙は尋ねた。

すぐに返事はなかった。

少しの沈黙。

その沈黙の間に、理沙の胸の奥が、ゆっくり冷えていく。

やがて、小川が言った。

「まりあさんが……」

そこで、声が途切れた。

理沙は何も言わなかった。

言えなかった。

小川は、もう一度息を吸った。

それから、ゆっくりと説明を始めた。

昨夜、コンサート終了後に会場を出たワゴン車が、帰路の途中で事故に巻き込まれたこと。

自動運転モードの車両が制御不能になり、交差点で複数の車に衝突したこと。

まりあを乗せた車も、その中に含まれていたこと。

病院に搬送されたこと。

夜のうちに、何度も処置が行われたこと。

そして。

今朝、亡くなったこと。

理沙は、聞いていた。

聞いているはずだった。

けれど、言葉が頭に残ってこなかった。

事故。

搬送。

処置。

今朝。

亡くなった。

それぞれの単語は聞こえる。

でも、つながらない。

まるで別の部屋で、誰かが別の人の話をしているようだった。

胸の奥に、胸やけのような感覚が広がった。

吐き気に近いものが、ゆっくり込み上げてくる。

目の前のキッチンが、少し遠くに見えた。

コーヒーメーカーの音だけが、妙にはっきり聞こえる。

「大嶋さん」

小川の声がした。

「聞こえていますか」

理沙は、何度か瞬きをした。

「はい」

自分の声が、自分のものではないようだった。

小川は、さらに何かを説明していた。

事故の詳しい状況。
ボディーガードのこと。
病院のこと。
今後の連絡のこと。
HALUCAとしての対応のこと。

理沙は、それを受け止めようとした。

けれど、うまくできなかった。

ただ、最後に小川の声が少し落ち着いたところで、ようやく言葉が出た。

「わかりました」

それだけだった。

小川は、また連絡すると言った。

理沙も、短く返事をした。

通話が終わる。

スマホの画面が暗くなる。

理沙は、そのまましばらく立っていた。

何をしていたのか分からなかった。

少しして、足元がふらついた。

居間へ戻り、ソファーに座る。

天井を見上げた。

白い天井だった。

何の変哲もない、自分の部屋の天井。

昨日までと同じ天井。

それが、急に遠いもののように見えた。

まりあが死んだ。

そう思おうとする。

でも、思えない。

昨日、彼女は歌っていた。

五万人の前で。

「La-Li-La」を歌っていた。

理沙が最後に見たのは、画面越しのニュースではない。

自分の右横に立っていたように感じた、白い衣装のマリア・エレーナだった。

あれは何だったのだろう。

理沙は、目を閉じた。

眩暈がした。

しばらくして、さっき入れたコーヒーのことを思い出した。

よろよろと立ち上がり、キッチンへ向かう。

カップに注いだコーヒーは、少し冷め始めていた。

理沙はそれを持って戻り、一口飲んだ。

味がしなかった。

何かしなければならない。

そう思った。

何をすればいいのかは分からない。

けれど、誰かには知らせなければならない。

理沙はスマホを手に取った。

湯浅。
フィリップ。
島崎。

三人の名前を選ぶ。

短い文章を打った。

<まりあさんが、昨夜の自動車事故で重傷を負い、今朝亡くなりました>

送信。

それだけで、指から力が抜けた。

理沙はスマホをテーブルに置き、ベッドへ向かった。

横になる。

しばらくすると、スマホが小さく鳴った。

一度。

また一度。

少し間を置いて、何度か。

誰かが返信している。

誰かが電話をかけているのかもしれない。

けれど、理沙は手を伸ばさなかった。

出る気になれなかった。

何かを話したら、その瞬間に本当になるような気がした。

日曜日は、そのまま過ぎていった。

起きていたのか。
眠っていたのか。

自分でもよく分からなかった。

窓の外が明るくなり、少し暗くなり、また夜になった。

何かを食べたような気もする。

何も食べていないような気もする。

スマホは、ときどき鳴った。

理沙は、ほとんど見なかった。

月曜日の朝。

理沙は、いつもの時間に起きた。

いつものように顔を洗い、いつものように服を着て、いつものように家を出た。

会社へ行く日だった。

休んでもよかったのかもしれない。

けれど、休むという選択肢が、頭に浮かばなかった。

駅まで歩く。

電車に乗る。

座席には座れなかった。

吊り革につかまりながら、理沙はようやくスマホを開いた。

湯浅から。
フィリップから。
島崎から。

何通もメッセージが来ていた。

信じられない。
どういうこと。
電話して。
大丈夫か。
今どこにいる。
何かできることあるか。

文字を追っていると、頭が痛くなった。

理沙は、画面を閉じた。

会社に着くと、いつもの空気があった。

端末の起動音。
キーボードの音。
誰かの雑談。
会議室へ向かう足音。

何も変わっていない。

変わっていないことが、不思議だった。

理沙は席に座り、淡々と仕事を始めた。

気の抜けた風船のようだった。

画面に表示される文字を読む。
手順通りに作業する。
問い合わせに短く答える。
必要な報告を書く。

それだけを繰り返した。

昼を過ぎたころ、小川から再び電話があった。

理沙は、会議室の空きを確認し、誰もいない小さな部屋へ入った。

「大嶋さん」

小川の声は、昨日よりは少し整っていた。

まだ疲れていた。

それでも、昨日よりは、言葉が形になっていた。

小川は、事故後の状況を淡々と説明した。

まりあの家族への連絡。
HALUCAとしての発表。
警察からの聞き取り。
報道対応。
今後、理沙に確認したいこと。

理沙は、短く相槌を打った。

昨日よりは、言葉が頭に残った。

残る分だけ、痛かった。

「一度、直接お話しできますか」

小川が言った。

「はい」

理沙は答えた。

「いつがいいですか」

「火曜日の夕方でしたら、こちらにいられます。HALUCAのオフィスで」

「分かりました。伺います」

約束だけが、淡々と決まっていった。

通話を終えると、理沙はしばらく会議室の椅子に座っていた。

白い壁。
細い机。
消し忘れた照明。

何もかもが、会社のいつもの風景だった。

その中で、理沙はスマホを握ったまま、もう一度だけ小さく息を吐いた。

火曜日の夕方。

HALUCAへ行く。

それだけが、次にしなければならないことになった。
ありがとうございます。
ではこの修正された試し書きをもとに、小説化をお願いします。
はい。
修正された試し書きをもとに、002-29「悲しい事があっても(2)」を小説化します。
理沙がまりあの死を“少し遅れて”知ることで、現実感のなさと、日常がそのまま続いてしまう重さを中心に描きます。

---

# 002-29 悲しい事があっても(2)

ライブ後の打ち上げが終わり、理沙が帰宅したのは、夜中の二時を少し過ぎたころだった。

久しぶりに、気持ちのいい酒だった。

Arisa-Mistyの四人で、よく飲み、よく笑った。

ラストライブは終わった。

バンド活動は、しばらく休止になる。

けれど、解散ではない。

そのことを、四人とも何度も確かめるように口にしていた。

「しばらくは、昼の仕事やな」

湯浅がそう言うと、フィリップが少し大げさにため息をついた。

「仕事だけの生活、つまらないね」

「でも、練習はしないと」

島崎が、眠そうな顔で言った。

「腕が落ちたら、戻るとき困ります」

「そうだね」

理沙は笑った。

「私も、歌わなくなるわけじゃないし」

活動休止中、湯浅たちは昼間の仕事に集中することになる。

それでも、完全に音楽から離れるつもりはなかった。

個人練習は続ける。
時々は集まる。
また何か面白いことがあれば、そのとき考える。

そんな話を、何度もした。

理沙が前に思いついた、三人がマリア・エレーナのバックバンドになるという案は、まだ柴原にも小川にも話していない。

まりあのファーストコンサートが無事に終わったら、理沙が改めて話をすることになっていた。

そのためにも、まずはコンサートの感想を聞きたい。

まりあは、どんな顔で話すだろう。

「すごかったです」と、少し照れたように笑うだろうか。

それとも、「もう二度とやりたくないです」と、疲れた声で言うだろうか。

どちらにしても、早く聞きたかった。

帰宅した途端、身体の奥から疲れが出てきた。

玄関で靴を脱ぎ、バッグを置く。

部屋の明かりをつけると、それだけで一日が終わったような気がした。

理沙はシャワーを浴び、髪をざっと乾かした。

そのまま寝てもよかった。

けれど、すぐにベッドへ入る気にもなれなかった。

居間のソファーに腰を下ろす。

身体が沈み込む。

もう動きたくない。

そう思いながら、なにげなく壁面ディスプレイをつけた。

深夜のニュース番組が流れていた。

画面の中では、夜の道路が映っていた。

赤い回転灯。
横転した車。
潰れたフロント部分。
道路に散らばった破片。

字幕には、自動運転車による多重衝突事故、と出ていた。

自動運転モードで走行していた乗用車が、突然制御不能になり、複数の車両に衝突したらしい。

運転手と、巻き込まれた車の乗員の多くが、即死または重体。

アナウンサーは、落ち着いた声で説明していた。

近年、自動運転車の事故は目立って増えていた。

かつては、高齢者の誤操作による事故が社会問題になっていた。

その誤操作を防ぐために普及したはずの自動運転車が、今度は別の形で人を巻き込む。

皮肉な話だと、専門家がコメントしていた。

理沙は、ぼんやりと画面を見ていた。

疲れていた。

内容は耳に入っているが、深く考えるほどの力は残っていない。

ただ、事故現場の地名だけが、少し引っかかった。

まりあのマンションから、そう遠くない場所だった。

偶然だろう。

そう思った。

東京で事故が起これば、誰かの家の近くにはなる。

それに、まりあは今日はスタッフに送られて帰るはずだ。

柴原や小川が、そこまで無防備にするとも思えない。

理沙は、ディスプレイを消した。

部屋が静かになる。

眠気が、一気に押し寄せてきた。

ベッドに横になると、すぐに意識が沈んでいった。

翌朝。

というより、昼近くになって、理沙は目を覚ました。

カーテンの隙間から、明るい光が入っている。

日曜日だった。

今日は、何もしなくていい。

そう思うと、少しだけ気が楽になった。

理沙はゆっくり起き上がり、キッチンへ向かった。

コーヒーを入れようとして、ふとスマホを見る。

着信履歴があった。

朝の七時。

小川美奈。

理沙は、しばらく画面を見つめた。

鳴っていたのだろう。

けれど、まったく気づかなかった。

それほど深く眠っていたらしい。

何だろう。

ファーストコンサートの報告だろうか。

それにしては、朝七時は少し早い。

理沙は、その場で折り返した。

呼び出し音は鳴らなかった。

話し中だった。

理沙は、スマホを見つめる。

嫌な感じがした。

けれど、それが何なのか分からない。

しばらく待っても、折り返しはない。

理沙はキッチンに戻り、コーヒーを入れ始めた。

粉をセットする。
水を注ぐ。
スイッチを入れる。

いつもの動作のはずなのに、少し手元が落ち着かなかった。

コーヒーの香りが立ち始めたころ、スマホが鳴った。

小川からだった。

理沙はすぐに出た。

「もしもし」

自分でもひどいと思うほど、声がかすれていた。

寝起きのせいだけではない気がした。

電話の向こうで、小川が小さく息を吸う音がした。

「大嶋さん」

いつもの小川の声ではなかった。

低い。

疲れている。

それでも、必死に形を保っているような声だった。

「はい。どうしました?」

理沙は尋ねた。

すぐに返事はなかった。

少しの沈黙。

その沈黙の間に、理沙の胸の奥が、ゆっくり冷えていく。

やがて、小川が言った。

「まりあさんが……」

そこで、声が途切れた。

理沙は何も言わなかった。

言えなかった。

小川は、もう一度息を吸った。

それから、ゆっくりと説明を始めた。

昨夜、コンサート終了後に会場を出たワゴン車が、帰路の途中で事故に巻き込まれたこと。

自動運転モードの車両が制御不能になり、交差点で複数の車に衝突したこと。

まりあを乗せた車も、その中に含まれていたこと。

病院に搬送されたこと。

夜のうちに、何度も処置が行われたこと。

そして。

今朝、亡くなったこと。

理沙は、聞いていた。

聞いているはずだった。

けれど、言葉が頭に残ってこなかった。

事故。

搬送。

処置。

今朝。

亡くなった。

それぞれの単語は聞こえる。

でも、つながらない。

まるで別の部屋で、誰かが別の人の話をしているようだった。

胸の奥に、胸やけのような感覚が広がった。

吐き気に近いものが、ゆっくり込み上げてくる。

目の前のキッチンが、少し遠くに見えた。

コーヒーメーカーの音だけが、妙にはっきり聞こえる。

「大嶋さん」

小川の声がした。

「聞こえていますか」

理沙は、何度か瞬きをした。

「はい」

自分の声が、自分のものではないようだった。

小川は、さらに何かを説明していた。

事故の詳しい状況。
ボディーガードのこと。
病院のこと。
今後の連絡のこと。
HALUCAとしての対応のこと。

理沙は、それを受け止めようとした。

けれど、うまくできなかった。

ただ、最後に小川の声が少し落ち着いたところで、ようやく言葉が出た。

「わかりました」

それだけだった。

小川は、また連絡すると言った。

理沙も、短く返事をした。

通話が終わる。

スマホの画面が暗くなる。

理沙は、そのまましばらく立っていた。

何をしていたのか分からなかった。

少しして、足元がふらついた。

居間へ戻り、ソファーに座る。

天井を見上げた。

白い天井だった。

何の変哲もない、自分の部屋の天井。

昨日までと同じ天井。

それが、急に遠いもののように見えた。

まりあが死んだ。

そう思おうとする。

でも、思えない。

昨日、彼女は歌っていた。

五万人の前で。

「La-Li-La」を歌っていた。

理沙が最後に見たのは、画面越しのニュースではない。

自分の右横に立っていたように感じた、白い衣装のマリア・エレーナだった。

あれは何だったのだろう。

理沙は、目を閉じた。

眩暈がした。

しばらくして、さっき入れたコーヒーのことを思い出した。

よろよろと立ち上がり、キッチンへ向かう。

カップに注いだコーヒーは、少し冷め始めていた。

理沙はそれを持って戻り、一口飲んだ。

味がしなかった。

何かしなければならない。

そう思った。

何をすればいいのかは分からない。

けれど、誰かには知らせなければならない。

理沙はスマホを手に取った。

湯浅。
フィリップ。
島崎。

三人の名前を選ぶ。

短い文章を打った。

<まりあさんが、昨夜の自動車事故で重傷を負い、今朝亡くなりました>

送信。

それだけで、指から力が抜けた。

理沙はスマホをテーブルに置き、ベッドへ向かった。

横になる。

しばらくすると、スマホが小さく鳴った。

一度。

また一度。

少し間を置いて、何度か。

誰かが返信している。

誰かが電話をかけているのかもしれない。

けれど、理沙は手を伸ばさなかった。

出る気になれなかった。

何かを話したら、その瞬間に本当になるような気がした。

日曜日は、そのまま過ぎていった。

起きていたのか。
眠っていたのか。

自分でもよく分からなかった。

窓の外が明るくなり、少し暗くなり、また夜になった。

何かを食べたような気もする。

何も食べていないような気もする。

スマホは、ときどき鳴った。

理沙は、ほとんど見なかった。

月曜日の朝。

理沙は、いつもの時間に起きた。

いつものように顔を洗い、いつものように服を着て、いつものように家を出た。

会社へ行く日だった。

休んでもよかったのかもしれない。

けれど、休むという選択肢が、頭に浮かばなかった。

駅まで歩く。

電車に乗る。

座席には座れなかった。

吊り革につかまりながら、理沙はようやくスマホを開いた。

湯浅から。
フィリップから。
島崎から。

何通もメッセージが来ていた。

信じられない。
どういうこと。
電話して。
大丈夫か。
今どこにいる。
何かできることあるか。

文字を追っていると、頭が痛くなった。

理沙は、画面を閉じた。

会社に着くと、いつもの空気があった。

端末の起動音。
キーボードの音。
誰かの雑談。
会議室へ向かう足音。

何も変わっていない。

変わっていないことが、不思議だった。

理沙は席に座り、淡々と仕事を始めた。

気の抜けた風船のようだった。

画面に表示される文字を読む。
手順通りに作業する。
問い合わせに短く答える。
必要な報告を書く。

それだけを繰り返した。

昼を過ぎたころ、小川から再び電話があった。

理沙は、会議室の空きを確認し、誰もいない小さな部屋へ入った。

「大嶋さん」

小川の声は、昨日よりは少し整っていた。

まだ疲れていた。

それでも、昨日よりは、言葉が形になっていた。

小川は、事故後の状況を淡々と説明した。

まりあの家族への連絡。
HALUCAとしての発表。
警察からの聞き取り。
報道対応。
今後、理沙に確認したいこと。

理沙は、短く相槌を打った。

昨日よりは、言葉が頭に残った。

残る分だけ、痛かった。

「一度、直接お話しできますか」

小川が言った。

「はい」

理沙は答えた。

「いつがいいですか」

「火曜日の夕方でしたら、こちらにいられます。HALUCAのオフィスで」

「分かりました。伺います」

約束だけが、淡々と決まっていった。

通話を終えると、理沙はしばらく会議室の椅子に座っていた。

白い壁。
細い机。
消し忘れた照明。

何もかもが、会社のいつもの風景だった。

その中で、理沙はスマホを握ったまま、もう一度だけ小さく息を吐いた。

火曜日の夕方。

HALUCAへ行く。

それだけが、次にしなければならないことになった。
ありがとうございます。
では、400字程度でこの文章のあらすじの作成をお願いします。
### 002-29「悲しい事があっても(2)」あらすじ

Arisa-Mistyのラストライブ後、理沙は湯浅たちと打ち上げを行い、活動休止後の過ごし方や、マリア・エレーナのバックバンド構想について語り合う。
深夜に帰宅した理沙は、自動運転車による多重衝突事故のニュースを見る。
事故現場がまりあのマンションに近いことが少し気になるが、疲れから深く考えず眠ってしまう。
翌昼近く、小川から朝に着信があったことに気づいた理沙は折り返すがつながらない。
やがて小川から電話があり、まりあが昨夜の事故に巻き込まれ、今朝亡くなったことを知らされる。
理沙は現実感を失い、吐き気や眩暈を覚えながら、湯浅、フィリップ、島崎へ短いメールを送る。
その後は誰とも話せないまま日曜を過ごし、月曜は普段通り出社する。
昼過ぎに小川から再び連絡が入り、理沙は火曜夕方にHALUCAのオフィスで会う約束をする。
ありがとうございます。
では日を改めて、引き続きの002-30の文章を作成します。
こちらこそ、ありがとうございました。
002-29では、理沙がまりあの死を遅れて知り、日常の中で現実感を失っていくところまで進みましたね。

次回は **002-30「悲しい事があっても(3)」** ですね。
理沙がHALUCAを訪れ、小川や柴原と会い、まりあの死を受け止めきれないまま、その後の自分の生活や再出発へ向かう節になりそうです。



047へ